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見えない謎はすぐ傍に  作者: 嶺巴
2/2

遅れた依頼者

駅を出ると途端に冷たい風が頬にあたった。わたしは制服のポケットに入れていたスマートフォンを取り出すと時刻を確認した。午後四後時を指している。平日の帰宅時間にしては早い時刻だ。わたしは駅から真っすぐにのびる道を小走りに進みながらスマートフォンの画面に表示された着信の文字をタッチして耳に当てた。耳元で着信音が鳴り始めすぐに電話をかけた相手の声がした。

「はい、こちら時水探偵事務所です」

「もしもし、夕紫君ですか?灯乃です。連絡遅くなってすみません。もう依頼者様いらっしゃいました?」

「いや、まだだよ。もう駅についてるみたいだね?少し急ぎ目でお願いするよ」

「はい。もちろんです。」

 そういって通話を切る。電話の相手、時水夕紫はわたしの八歳年上の従兄だ。とは言ってもわたしが十一歳のころ両親を亡くしてからずっと一緒に暮らしているため兄妹のようなものだ。夕紫と初めて会ったのは両親を亡くした後だった。わたしたちの祖母の古い友人の駄菓子屋の店主の浅波亮三がわたしを引き取ってくれた人であり、夕紫の育ての親だ。夕紫も小さいころに浅波に引き取られた。理由は母親からの虐待だ。夕紫の父親は会社の後輩と不倫して家から出ていったきり夕紫は会っていないという。それがきっかけで母親から虐待がエスカレートし、夕紫が五歳の時に真冬にアパートのベランダに放置され意識不明の重体になるという事件が起こった。たまたま近所の人が通報したため一命はとりとめたが母親は警察送りになりもう会うことはないだろうと前に夕紫が話していた。

 大通りを脇道に逸れると暗くて細い路地が不気味に続いている。大通りの賑やかさが嘘のように消えるこの路地は幽霊通りと呼ばれ、昼間ですらほとんど誰も近づかない。わたしはその通りの一角にある駄菓子屋の外部階段を上がる。ドアの隣に「清水探偵事務所」と小さく書かれている。ドアを開けると夕紫がソファに座って紅茶を飲んでいた。この事務所の探偵である。

夕紫がこの事務所を初めたのはつい最近のことだ。大学を卒業してから約2年間音信不通だった夕紫は1か月前にひょっこり帰ってきて探偵事務所をやりたいと言った。浅海は最初のうち驚いて反対していたが夕紫の真剣な眼差しを見て承諾した。わたしは少し心配だったので夕紫の助手として手伝うことにした。今日はわたしが助手になって初めての依頼者が来る日なのだ。

夕紫はわたしに気がつくと「おかえり」とほほ笑んだ。

「ただいまです。遅くなってすみません」

「いや、まだ依頼者は来ていないから大丈夫だよ」

「おかしいですね。依頼者様との約束した時間はもうとっくに過ぎているはずなんですが」 

「もしかしたら迷っているのかもしれないから見てきてくれないかな」

「わかりました。行ってきます」

 わたしは脱ぎ掛けたコートをまた着て玄関に向かった。

「行ってきまーす」

わたしはそういうと勢いよく玄関を開けた。が、その時何かにぶつかる。わたしは驚いてドアの裏を見た。

そこにはわたしと同じ制服を着た少女が尻もちをついていた。

「ごめんなさい!大丈夫ですか?」

わたしは慌てて持っていたハンカチを渡した。

「あ、大丈夫で...す...ってあれ?秋月先輩?」

少女はわたしの名前を言った。わたしも少女の顔をまじまじと見た。

「あっ!朱鳥ちゃん!」

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