第30話戦況 side栄華
「栄華さん!新たな怪人の出現です!」
「何だとぉ!?」
「今までに見たことのない甲冑タイプです!どうなさいますか?」
私は、戦況を見定めるため、現状維持の指示を出した。英雄達も弱くないと踏んだ私は、そのまま戦闘続投の指示と、バババギャーンに周辺のジャッカルへ変貌する人たちも含めて、救出カーゴへの先導を行う指示を出して、指揮席から席を外す。オペレーターが、不穏に感じぬように、席をはずすつもりだったが、一人が、こちらに気づき声をかけた。
「栄華さん、大丈夫ですか?顔色が!?」
「否、大丈夫だ!少しだけ席をはずす。しっかりと戦況報告してくれ。自室へ戻る」
心配そうな目を余所に私は、自室へと戻ろうとして指揮命令室を出る。先程から何やら気分が優れない。どう言う訳か、目の前に赤い靄がたまに浮き出たり、消えたり、そして胸元に息苦しさを感じる。昼間の映画館で、ジャッカル達へ変貌する人たちを助けるために、あの白い粉を吸ったせいか、それとも他に何か病気を持ってしまったかは分からないが、さっきの目覚めの悪さといい、さっきから気分が優れない。
私は、その場で急に気分を害し項垂れた。すると突然咳き込み出し、口から白い粉と共に黄色の胃酸が出てきた。呑んだ訳でもない。どう言うことか気になり、医務室へと足を運ぶ。
「どうされましたか?顔色がよろしゅうないですな?」
医務室長の東郷医師が、診察担当だった。この東郷医師は、私が、元ヒーロー、緑のタイツを着て、世周りしていた頃。その相手役、ピンクタイツ、東郷美由紀の父親だ。私の事はよく知っている。まぁそれもそうだろう。美由紀とは恋仲の頃もあったからだ。今、美由紀はアメリカ本部にいるが、この度の事件により現在ある準備をさせて、こちらに向かうように指示出しをしてある。久しぶりに、会うことになるはずだ。
東郷医師の見解によると、私の予想と被り、やはり、昼間に吸った、白い粉末のせいかも知れないと言われ、軽く風邪の処方箋と、特効薬のAIにも含まれる、AI散状を分配してもらい、それを水で流し込んだ。
AIとは、人工知能を活用した、人間をある方向に導くための、薬の一つだ。これは今国会でも裏で議論が交わされて、私の先代ヒーローが消息不明になった件、大王魔王が暗躍した件にも関係がある。怪人へと変貌させられる事が判明した今回の映画館の事件後、裏で会合が持たれて今まさに議論の真っ最中のはずだ。
このAIは、人工知能を持ち、それを人間に注入することで、人間独自の怒りの感情を抑制するという役目を持った薬。これについては、私はかなり賛同できない。人間の感情である怒りの部分をなくしてしまえば、怒ることを忘れた人間は、情緒不安定さを露呈し、独自の思考回路を、シャットダウンしてしまうことにも、なりかねない。確かに怒りの感情を抑制してしまえば、世の中に起きうる犯罪や、人々が、怪人へと豹変する数も、減るには減るだろう。だが、それだけで、全ての人間を管理しようとすること自体が、間違っている。あと、もう一つ言えることが、人工知能により感情抑制された人間は、人間らしさを失い、それと同時に行く場所や個人の情報が全てコンピューターにより管理される。
どこに行っているか、どこに住んでいるかなど政府の高官たちが一目瞭然でみることになる。それは言わば監視国家の誕生にもなりかねない。私たち、ヒーロー組織であるWORLDの人間は、それでも構わないが、普通の人々がそう言うことになってしまう懸念は、否めない。 だから私は、この監視国家の誕生には、猛反対の意見を先ほど指令席から発信した。結果は朝までには出るということだが、どうなることか・・・。
自室へ戻ると再度、水を汲み、シャンプードレッサーの元へ行く。すると、鏡に何やら映し出された物体が、私個人の姿とは言い難いシルエットに、見えた。
「なっ!!」
しかし、それは一瞬で消え去った。元の自分のアッシュグレーの髪型が見えた。ホッと肩をなでおろしたが、次の瞬間、私はまた咳き込んだ。
黄色い胃液を、ドレッサーに吐き出した。やはり、私の体も・・・・もう、蝕まれているのかと感じた。
その時だった。自室の指令席のスピーカーから、オペレーターの声が鳴り響いた。
「栄華さん!大変です!また新たな怪人の出現!こっこいつの反応凄いです!衝撃波、WORLDビルにもうすぐ響き渡ります!」
「なっ何だとぉ!?すぐに準備する!スーツホルダーを用意しておけ!」
「しかし!栄華さん!体調は大丈夫ですか!?」
「心配無用だ!すぐに向かう!」
そう言った瞬間だった。横揺れの地震。震度6ぐらいの大きな衝撃が、戦闘地区から離れたこのWORLDビルに轟いた。




