始まりの連鎖 3
涼太はスライムを切り払うと、持っていた咎と業の書に目を落とす。
名 グローススライム、齢 59、職業 放浪魔獣、性別 両性、Lv 46、才能 成長
職業スキル 「最後の意地 Lv8」
取得スキル 「分裂繁殖 Lv120」、「捕食 Lv459」、「再生 Lv206」、「単純攻撃 Lv40」
生命力 9/30、攻撃力 19、防御力 13、魔法力 0、運 2
「!?...死んでない?」
涼太は驚愕する。今目の前で破裂したスライムの生命力がまだ残っているのだ。
しかしスライムの残骸は涼太の周囲に散らばっている。
「くっ、再生するのか」
スライムの残骸はモゾモゾと動き、やがて元の特長的な楕円へ戻る。すると突然スライムが奇声をあげる。
「キシィィィッ!!」
スライムはぐちゃぐちゃに形を変え、涼太にゆっくりと近づく。攻撃を受けると思った涼太は剣を振り上げ、そのままスライムに斬り掛かろうと振り下ろす。
「ぐっふぉ」
が、スライムが涼太目掛けて突進してくる。涼太はその突進をモロに受け吹き飛ぶ。たかだか大型犬程度の大きさのスライムだが、受けた威力は軽自動車にはねられたかと錯覚するレベルだった。
吹き飛ばされた涼太は朦朧とする意識の中、剣を支えにヨロヨロと立ち上がる。
「本当にスライムか?レベル40は伊達じゃ無いってか」
涼太はレベルやステータス表記の正確さに納得し、そのまま手に持っていた咎と業の書を確認する。
名 シカ・メシド、齢 19、職業 旅人、性別 男、Lv 1
才能 ゴミあさり
取得スキル 「剣闘術 Lv1」
生命力 2/11、攻撃力 6+15(+1)、防御力 2、魔法力 0、運 7
装備 王宮近衛隊長の愛剣
もう瀕死状態だった。涼太は覚悟を決める。震える足を強く叩き、力の抜ける腕に再び力を入れて剣を強く握り直す。相手がやられるか自分がやられるか。どんな結果でも受け止める覚悟を。
「いつの世もやるかやられるかだ」
涼太は今度こそ確実に仕留める為に、スライムの攻撃よりも早く剣を全力で横薙ぎに振るう。
「りゃぁぁぁ!!」
スライムが再び破裂する。念のために散らばった残骸を切りつける。生死の確認の為に涼太は書を開く。
名 グローススライム、齢 59、職業 放浪魔獣、性別 両性、Lv 46、才能 成長
職業スキル 「最後の意地 Lv8」
取得スキル 「分裂繁殖 Lv120」、「捕食 Lv459」、「再生 Lv206」、「単純攻撃 Lv40」
生命力 0/30、攻撃力 19、防御力 13、魔法力 0、運 2
「...勝った...か」
涼太は自分の勝利を把握し、その場に座り込む。そして未だ消えない咎と業の書を見る。
・この咎と業の書は戦闘時、常に出現させ続ける事も出来る。紛失、破損をしても修復される。
「へぇ、一体どういう原理なんだろうな」
涼太は書に書かれている内容を見て、仕組みに興味が湧く。しかしこの世界に常識は通用しないので諦めという形で解決させた。そしてその下の自分のステータスをワクワクしながら確認する。
名 シカ・メシド、齢 19、職業 旅人、性別 男、Lv 10
才能 ゴミあさり
取得スキル 「剣闘術 Lv5」
生命力 2/35、攻撃力 15+15(+5)、防御力 10、魔法力 0、運 8
装備 王宮近衛隊長の愛剣
「やっぱりな。格上に勝つとこんなにレベルが上がるのか。それよりレベル差がまだかなりあるのにステータスが近いのは種族が関係あるのか?」
涼太は自分の成長を見て思索する。自分のこのスキルのレベルの上がり方を見ると、なるほどスライムのスキルのレベルの高さにも頷ける。などと考えている時、スライムの残骸に光る物体が出現する。
「...ん?これは、金貨?と、これは...なんだ?」
涼太はスライムの残骸に近づくと、数十枚の金貨と光る不思議な物体を手に取る。するとその発光物は霧散した。
「...消えた」
これは何なのか、涼太は未だ消えない咎と業の書を見る。すると炙り出しの手紙のようにじわじわと文字が浮かんでくる。
名 シカ・メシド、齢 19、職業 旅人、性別 男、Lv 10
才能 ゴミあさり
取得スキル 「剣闘術 Lv5」
所持金 10ゴールド
保有霊魂数 1
生命力 2/35、攻撃力 15+15(+5)、防御力 10、魔法力 0、運 8
装備 王宮近衛隊長の愛剣
・転生者に限り、モンスターとの戦闘に勝利すると相手のレベルと自分の運値に応じた金銭と霊魂を得る。
・金銭は 相手のレベルと自分の運値を足して5につき1ゴールド。霊魂は50につき1つ。(つまり金貨はスライムのレベル46+涼太の運8=54、54÷5=10。霊魂は54÷50=1。端数は切り捨て)
・霊魂とはキサマ達転生者が得る事の出来る命の力。この霊魂が必要数あれば次回の転生時にそれに見合った、優れた体に転生出来る。転生だけで無く霊魂交換専用のアイテムとも交換出来る。
「おぉ。なんかゲームみたいだな。ゲーマー魂がくすぐられる」
死んだスライムから得られた霊魂は次の転生時に良い人生を送りやすくなる。涼太はそう解釈した。このままたくさんのモンスターを狩れば来世は安泰だと。そう考えていた。
「どれどれ?来世はどんな自分かな?」
涼太は更に下に続く、転生一覧を見る。
転生可能体一覧
・戦士 (必要霊魂数1)
・盗賊 (必要霊魂数1)
以上 2つ
「おぉ。戦士は良いな。それに2度目の人生で盗賊なんて、闇堕ちは早すぎだろ」
涼太は戦士に即決。軽挙とも達観とも取れるこの行動から分かるように、涼太は知識はあれど単純なのだ。
・次回転生先は 戦士 に決定された。
まだ霊魂は集まるかもしれないのに、もう戦士に決めた涼太はどこかワクワクしながら金貨をポケットに詰める。
「さて、帰るか」
涼太は疲れた体に鞭を打ち、欠伸をしながら帰路につく。すると
「待て」
「ん?」
涼太は威圧感のある、だがどこか落ち着く綺麗な声に呼ばれる。涼太は声のする方へ振り向く。
「アンタに少し話がある」
そこには妖艶な雰囲気の褐色美女が腕を組み豊かな胸を強調していた。