第19話 vs mysterious monster -前編
お久しぶりです。
前回投稿の後書きに『11月26日に投稿』と予告していたのに、大幅に遅れてしまって大変申し訳ありません。
遅れの原因としましては、テスト後に後回しにしていた課題とちょっとした体調不良とFGOへのドハマリになります。
今後もだいたい一週間ごとに更新したいと思っております。
何卒応援をよろしくお願いします。
辺りを緊張が支配する。
林の中にいるそいつは木々の影に入っているため、まだその正体を拝んでいない。だが、確実に歩みをこちらに向けていることはわかる。
時折、めきめきと言う音が聞こえてくる。たぶん、木をなぎ倒しているんだと思う。めちゃくちゃだ。
そんな奴とこれから対峙しなくちゃいけないんだ。
最初の咆吼から何分経っただろうか?
ようやくそいつは林から出てきて、俺たちはその姿をとらえることができた。
同時に俺たちはそいつと目が合った。
「あれ……ミノタウロスってやつじゃないか?」
「ううん、違うと思う。だって、あれって…………」
「それにこの臭い………何か変です!」
「なぁ……あたしが一番ヤバいんだけど………」
俺たちは警戒しつつ、互いに声を掛け合った。
その間もそいつから目を離さない。
その魔獣は二足歩行の人型で、手には巨大な剣、頭部は草食動物、そしてねじれた角を持っていた。背の高さはだいたい三メートルぐらいだ。
首から上は獣、首から下は人。いわゆる半人半獣だ。いや、こいつは頭が獣だから半獣半人と言った方が正しいかもしれない。
だが、それらの特徴はそいつの最も目立つ特徴によってかすんでしまう。
そいつは腐敗しているのだ。誰の目から見ても明らかに。
その魔獣の体表は毛に覆われているが所々に生々しい傷跡があり、中には完全に皮膚が抉れて骨が見えてるものもある。肌は茶色に変色しており、口からはよだれとも体液ともわからないものが垂れっぱなしになっている。さらには左の眼球は抉られたのか、すでにそこにはなかった。右目はギリギリまだまぶたの中に収まっているが、血走っていてかなり不気味だ。先程イアさんが指摘した臭いはこいつの腐敗臭だ。
そして、魔獣は素手じゃない。
魔獣は剣を持っている。これが噂の魔剣なのだろう。
そいつの魔剣は、炎でできている剣だった。切っ先と呼ばれる部分から刃に至るまで、それだけではなく鍔や柄までもが炎で燃え上がっている。この魔獣はそんな炎なんてまるで感じないような素振りで剣を握っているのだ。
「おい………あいつ、死んでるよな?」
見た目といい、炎に対する反応といい、こいつは一つの生命としてとてもじゃないけど『生きている』なんて言える状態じゃない。
「アンデッドかよ。めずらしいな。」
「ですが元の魔獣は………………………?ミノタウロスではないとすると………」
そう。さっき俺はこいつがミノタウロスだと言って、凛堂に否定された。確かに俺は間違っていた。
ミノタウロスは体が人、頭が牛の魔獣だ。俺は、凛堂との勉強中にこの世界にこいつが居ることも聞いていた。実際に見たことはなかったけど、ゲームとかによく出てくるし想像するのは簡単だった。
だからこそ、今はこいつはミノタウロスじゃないって分かる。なぜならミノタウロスには絶対無いものがこの魔獣には有るのだから。
それは………………
「翼………………」
俺の口から自然とその言葉が出てしまった。
こいつの背中には翼があるのだ。鳥のような羽根があるものではない。どちらかと言うと、コウモリや絶滅した翼竜のような翼だ。
だが、その翼は今すぐに舞い上がって大空を自在に動き回るという代物じゃないだろう。見た目同様、損傷がひどいのだ。左の翼は穴が開いている程度だが、右の翼は左のと比べて三~四割が欠損している。
右と左でかなり翼の大きさが違うためアンバランスな状態だ。
その時、魔獣が動いた。
魔剣を持っていない手、左手に魔力を貯め始めたのだ。
大気中の魔力がかなりの速度でヤツの元へ収束している。
わずか一秒にも満たないスピードでヤツの手のひらの魔力は野球ボール並みの大きさになってしまった。魔力の色は黒、おそらく闇魔法だ。
魔獣はその魔力を一瞬だけぎゅっと凝縮した後、それを―――――――
こちらへぶん投げた。
「「「!!」」」
「散って!!!」
凛堂が咄嗟に叫んだことで俺たちは全員直撃を回避することができた。だが…………
ドゴォォオォッォオォオォォォォッン!!!!
ヤツの魔法―――――魔法と言っていい物かわからないが―――――がはじけ、大爆発を起こす。
直撃はしなかったが、その爆風だけで体が吹っ飛んでしまう。
ほんの数秒浮遊した後、何度も地面を転がる。それでも止まらずに近くの家屋に突っ込んでしまう。
「げほっげほっ………何だよ、今の………………一、体……何が………」
瓦礫を押しのけて体を起こす。
突然のことに気が動転してしまう。
変な魔獣に出会いそいつが何か投げたと思ったら、次の瞬間には轟音と激しい揺れ、そして衝撃だ。考えがまとまらない。全身が痛い。耳も痛い。
そうだ、皆は!?
辺りを見渡すと俺たちはイアさんと犬山は別々の方へ避けていたため距離ができてしまったが、無事のようだ。
あれ!?凛堂は!?あいつがどこにもいない!!
「大丈夫?ケー君。」
「うおぅ!!」
振り向くと後ろにいた。
無事のようですね。ハイ。
とゆうかこいつ……気配の消し方が尋常じゃないんだが…………。
ともかく全員無事のようだ。
魔法がはじけた爆心地には大きなクレーターができてしまっている。
なんて威力だよ。
これほどの破壊力の魔法をあいつは一瞬で発動したのかよ…………。
「皆さん!こっちへ!!」
イアさんが声を上げる。どうやら撤退するようだ。
「氷魔法・剣山!!」
地面を突き破り氷の槍が顕現する。
イアさんの魔法が魔獣へと迫る。
「さぁ!今のうちに!」
イアさんの言葉通り俺たちは全速力で駆け寄った。
イアさんの魔法はかなりの広範囲に及んでいて魔獣の視界を完全にふさいでいるだろう。
あわよくばこの攻撃で倒せるんじゃ………ってつい甘く考えてしまった。
「……………ゥウ゛ァ!!!」
だが、魔獣は低い声を上げて魔剣を一振りするだけだった。その瞬間、剣から炎が放たれイアさんの氷は瞬く間に溶かされてしまった。
「そんな……!」
「魔法も魔剣もヤバいじゃん!」
「さきほどの闇魔法………………この魔獣………まさか…バフォメット!?」
「バフォメット!?そんな、魔人がアンデッドになるなんて聞いたこと……」
「でも、原理的に考えれば不可能じゃないよ。見た目の特長も間違ってない。何より魔法の威力が証拠になるよ。あんな魔法、そこら辺の魔獣じゃ使えない。」
お、俺だけ三人の話について行けてない………。
何?アンデッド?バフォメット?全然分かんないんだけど?
「あんな大剣持っているなんて………そもそも一体どこで?」
「え?大剣ですか、アレ?」
ついにこらえきれなくなって俺も口を挟んでしまう。
すると、犬山とイアさんがこっちを『はぁ?何言ってんだ、こいつ?』って目で見てきた。
いや、イアさんは『頭大丈夫でしょうか?さっき変なとこ打ったんじゃ………』って目だな。イアさんはそんな野蛮なこと考えないな。うん、絶対そうだ。
凛堂はその間も俺が怪我してないかをかなり心配していた。
「俺にはアレが普通のロングソードに見えるんですけど……」
そんな二人の目におののきながらも、試しに発言してみる。
「戦うにしてもまず、負傷者をどっかに移さないとだし……」
あ、ガン無視だ。
ねぇ、犬山、負傷者って俺のこと?
「えぇ、すみませんが回復系の魔法はできますか?私のものではここまでの重傷だと手に負えないと思います。」
あれ、イアさん?イアさんまでも?俺重傷なの?擦り傷なら結構多いけど。
犬山とイアさんは俺の言葉を無視して作戦を練っている。
とにかく俺にはあいつの剣が大剣ではなく普通サイズに見えているのだ、この人達は信じてくれてないが。
俺は武器の名前とか分類には素人同然のレベルで詳しいことは全く分からないが、たしか両手で使うように設計されているのが大剣だったと思う。
今あいつが持っている魔剣は俺たち普通の人間からすれば、大剣と呼ばれる武器だろう。だけど、それは仮の姿だと俺は思う。本体はたぶん俺が今持ってる剣と変わらないぐらいの大きさだと思う。
犬山たちが大剣と間違えたのはその剣から炎が放出され巨大な剣を形作っているからだと思う。もともとの大きさから炎で拡大してあのゾンビに合うような大きさにしたんだろう。
俺だってチラ見だけだったら大剣だって思ってただろう。
でもよくよく見たらその大剣の炎の中に芯があるように思えたのだ。たぶんその芯があの剣の本体だ。なんだかよく分かんないけど俺の直感がそう確信している。
だが、二人はどうやら気付いてないらしい。
凛堂はさっきから俺がさっき吹っ飛ばされたときに大怪我してないかを心配してるのか、そわそわしている。
「!!また来ます!」
イアさんが叫んだ。
見るとあの魔獣がさっきの闇魔法を発動していた。
気付いたときにはもうチャージした魔力を放つモーションへと移っていた。
「土魔法・守護壁!!」
今度は凛堂が叫ぶ。
俺たちのいる目の前の地面が盛り上がって何枚もの壁が作られる。
これで防御する気か!
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
岩が削られ砕かれている音が響く。この壁が全部破られたら………死ぬ。
「フゥーーーーーー、なんとかセーフ………」
破壊の音が止み、土埃が舞い上がる。
見ると凛堂が作った壁は一番内側の1枚を残して全て破壊されていた。
「凛……マリ!大丈夫か?」
「うん、なんとか……。」
「………助かりました。ありがとうございます。あまりあの魔法を使われるのは厳しいようですね。こうなったら、接近戦で攪乱しつつ遠距離用の魔法でダメージを与えていくのが良いかもしれません。」
舞い上がっている土埃は幸いにも煙幕の役割を果たしてくれているようだ。この隙にイアさんが戦術を伝える。
確かにこのまま攻撃を防いでるだけじゃジリ貧だ。
ここは危険だけど、そうするのが一番有効だろう。
「そうですね………。じゃあ、接近戦はイアさんと俺が、遠距離は凛………マリとシバが……」
「いや、あたしが行くよ。」
「は?でも、おまえ……」
俺の提案する役割分担に対し、犬山が声を上げる。
思いがけない意見に驚いてしまう。
俺が犬山を遠距離側にしたのは、この戦いは犬山にとって厳しいものだと思ったからだ。
なぜなら、犬山はスキルを使えないからだ。
これは呪詛によるものだけでない。俺たちがこの町に立ち寄るに当たって一番用心しなければならないことは俺たちの身元がバレることだ。それを予防するためにローブで顔を隠していたわけだが、それ以外にも事前に決めていたことがある。それはスキルの使用禁止である。
これは主に犬山への制限となってしまっている。俺はスキルが使えないし、凛堂のスキルは一見すると卓越した魔法の才能と思われるらしいので、特に影響はないからだ。
しかし犬山のテレポートは魔法ではない。つまり、魔法ではない何かを使う者として騒ぎになるかもしれないのだ。元々呪詛によって禁止されていたのであまり深く言わなかったが、万が一の時は魔法のみ使えるようにするということに打ち合わせていた。今のこいつは魔法しか使えないのだ。
せっかく与えられたチートを使えずに戦うなんて、かなりの縛りプレイだと思ったんだが。
「へーきだって!あたしをなめんな。少なくともあんたよりかは強いから!」
「わかりました。では私とシバさんで接近戦を行います。お二人は援護をお願いします!」
「よし!行ってきますか。」
そう言って二人は土埃から飛び出して魔獣へと走ってしまった。
犬山とイアさんが行ったため、残ったのは俺と凛堂の二人になる。
ん?二人で援護?二人って凛堂と俺のことだろ?
どうしよう。俺魔法使えないんだけど………。
あれ?この状況…………。
もしかして俺って役立たず?
読んでくださりありがとうございます。
次回投稿は12月10日を予定してます。
これからもこの作品をよろしくお願いします。




