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第1話 何かが違う

話を分けようか迷ったのですが、切るべきところがわからず1話にまとめてしまいました。

次回からは1話あたり3000~4000字を目安にしていきます。


光が止んだと思い目を開けてみるとそこは超豪華な内装の部屋………………………………………なんかじゃなかった。薄暗い部屋の中だった。ちょっと不気味だった。


「あれ?ここどこ?」


そんなセリフが思わず口から出てしまった。


こういう異世界召喚はラノベで見たことがある。たいていは王国の城に召喚されて、美人のお姫様がいて、「どうか、世界を滅亡の危機からお救いください!!」なんて言われるものなのだが。


マジでどこだ?暗くて不気味なのだが(2回目)。べ、別に怖くなんてないんだからね!ただちょっと不気味だなって思っただけなんだからね!(3回目)


と、その時


「ケー君?」


「うわぁぁぁっぁぁぁぁぁあぁっっっぁぁ!!」


後ろの方からいきなり声がした。振り返って見ると、暗がりで気がつかなかったが、人型の影が見える。どうやら人がいたらしい。………………………………………………………お化けじゃないだろう(不安+願望)。

そいつは黒いローブっぽいものを羽織っているし、フードも被っているから顔が見えない。

………………………………………………………………………………………………………………本当にお化けじゃないよな(錯乱+懇願)!?


「だ、だ、誰だ!?」


びっくりし過ぎて声が裏返ってしまった。声色からして女なのか?


「ケー君だ……………やっぱり……………………やっぱり、ケー君だ。来てくれた。助けに来てくれたんだ!ケー君!!」


何かぶつぶつ言ってると思ったら、突然その女?に抱きつかれる。


「すぅーはぁーすぅーはぁー、やっぱりケー君だ!この匂い!この体温!この感触!何にも変わってない!あの頃のケー君のままだ!やっぱり想像と生は全然違うなぁ。はぁ~幸せぇ~」


「ちょ!?おい!いきなり何するんだ!?だいたいおまえ誰だよ!?」


慌ててそいつを振り払おうとするが、すごい力でびくともしない。


とゆうか、当たってるんだが!!柔らかい感触が当たってるんだが!!


「誰って、もしかして忘れちゃったの?」


「忘れたも何も、顔が見えないからわからないんだけど!」


「あ、そっか。ごめんね、ついうれしくて。」


さっきまで俺にひっついて離れなかったそいつがパッと離れ、まだ混乱している俺の前でフードを脱ぐ。


文句の一つでも言ってやろうと意気込んでいた俺だが、その顔を見てその言葉はどこかに吹き飛んでしまった。なぜなら


「私だよ!私!凛堂真里亜だよ!久しぶりだね、ケー君。すごく会いたかったよ!!」


そこにいたのは、俺の幼馴染みで、大好きな凛堂真里亜だったからだ。


だが、俺の記憶の中の凛堂には無かったものがあった。それは右頭部から右目、右頬に至るまでを覆っていた包帯だった。


-------------------------


「え?」


思わず間抜けな声がでてしまう。


今、凛堂って言ったか?こいつ。確かにぱっと見は凛堂には似ているが、よくよく見ると若干の違和感がある。そんな感じだった。


まず、髪の長さだ。凛堂の髪は黒髪ストレートで、肩ぐらいの長さだった。目の前の自称凛堂はそれより長く、腰ぐらいまでの長さだった。それと胸だ。本音を言うと、凛堂の胸は絶壁だった。しかし、先ほど抱きつかれたときに感じた柔らかい感触。あれも俺の記憶の中の凛堂にはないものだった。それに顔にある包帯、これも凛堂にはなかったはずだ。そして、何より……


「どうしたの、ケー君?そんなにボーッとして。あ!もしかして私に会えて嬉しかった?」


この口調だ。

凛堂のしゃべり方はもっと礼儀正しく凜としていた。しかし、目の前の凛堂のしゃべりからはそのかけらも感じられなかった。しかも、「ケー君」というのは俺が小学六年まで呼ばれていたあだ名だ。凛堂も当時は俺のことをそう呼んでいたが、中学に上がると子供っぽいという理由で下の名で呼ぶようになった。そのあだ名を呼ぶのは実に五年ぶりのことである。


どうしたんだ?凛堂。まるで幼くなったような……


「ケー君てば!」


「うぉ!!」


突然凛堂がのぞき込むように顔を近づけてきた。


「もう!何にも答えないからどうしたのかと思っちゃった。」


「あ、あぁ…。ごめん。ちょっと訳分かんなくて。本当に凛堂なのか?信じがたいんだが…………………………」


「そうだよね、いきなりこんなこと言われたら…………………………………………。あ、そうだ!じゃあ、あなたの名前は陣野啓一。誕生日は1月13日で星座はやぎ座、血液型A型、出生体重3214グラム、身長172センチ、座高88センチ、体重61キロ、家族構成は父と母の三人、それと一匹犬を飼ってる。これでどう?ここまで知ってるの幼馴染みの私だけでしょ。信じてくれた?」


え、えぇ…………………幼馴染みだからってそこまで知ってるの?逆に不安だわ。体重とか言った記憶ないんだが、ましてや座高なんて俺自身ですら憶えてないんだけど…………………。


「まだ駄目?じゃあ、んーと…………………あ、中学二年生のときもらったバレンタインの義理チョコを一年間本命だって思ってたことあったよね?」


「ああああああぁぁぁぁぁぁあああっぁ!!!!」


恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!やめろ!思い出したくない思い出したくない!


「えーと、後は………………………………………………………」


その後小一時間あまり俺は黒歴史を暴露され続けた。


-----------------------


「………………………なぁ、いろいろと教えてくれないか?」


さんざん心の傷をえぐられた俺は一時再起不能寸前まで追い込められたが、なんとか持ち直した。


結局こいつの言うことは全て正しかったので、俺はこいつを凛堂だと確信した。そして、今度はこっちが質問する番になった。


「うん。いいよ!何でも聞いて!」


この時、俺はまだ混乱していたからかもしれないが、突拍子もないことを聞いてしまった。


なぜ最初にこのことを聞いたのか今でもわからない。だが、この質問でわかったことがあった。


「おまえ、その顔の包帯どうしたんだ?」


「………………………………」


「凛堂?」


「あ、うん、このことね?うん、大丈夫だよ。うん、全然平気。ちょっと怪我しちゃっただけだから。」


「ちょっとって…、そんなレベルじゃないだろ。」


凛堂の包帯で覆われてる部分はかなり大きく、心配になってしまう。そんな話をしていると、凛堂の包帯に血がにじんできた。


「お、おい!血!血が出てるぞ!」


「え!あ、ほんとだ。」


「まったく、包帯変えるの手伝うからじっとしてろ。」


俺は凛堂の包帯を取り始めた。


「う!」


そして、俺は見てしまった。凛堂の包帯の下のおびただしいやけどの跡を。

俺は医学のことはさっぱりだが、それでもこれはすぐに医者に診せなければならないことは必然だった。


「おい!このやけどヤバいだろ!!医者には診せたのか!?目は見えているのか!?」


思わず凛堂に問いかける。焦って少し強めの口調になってしまったかもしれない。

でも、凛堂の反応は俺の予想と違った。


「ケー君………怒ってる?こんな怪我あるの嫌、だよね?」


「え?」


「でも、大丈夫だよ!ほら、見て!毎日薬ちゃんと塗ってるし、ここの部分なんて昨日より全然よくなって

るの!右目の視力も問題ないし、今はただかさぶた破けちゃっただけだから、すぐ血は止まるとおもうから!だから、もうすぐ治るの!前みたいなきれいな肌に戻るの!こんな気持ち悪いとこすぐ無くなっちゃうから、ね?ね?大丈夫だよ?だから………だからお願い。嫌わないで。私のこと捨てないで!!すぐ治るから!あ!今から薬塗ってくればいいんだ。そうすればけがも治るし、ケー君にも嫌がられない。うん、そうだよ、そうすればいいんだ。ちょっと待っててね、ケー君!すぐ治してくるから!」


「あ!おい!!」


そうまくし立てると、すぐに凛堂は部屋を出てしまった。なんなんだ、いまのは?あんな凛堂見たことない。しかも俺が凛堂を捨てるとか言ってたな。どういうことだ?


ガシャン!!


訳がわからないまま棒立ちしているとガラスが割れた音が聞こえてきた。この音凛堂が行った方から聞こえたぞ。何かあったのか?とにかく凛堂の様子を見に行かないと!そう思い俺も部屋から廊下に出た。

ここも明かりが無かったが、少し先の部屋から明かりが漏れていた。どうやらあの部屋に凛堂がいるらしい。すぐに俺もその部屋に入る。


「治さないと治さないと治さないと治さないと治さないと治さないと治さないと治さないと……あった!この薬を塗ればきっとすぐに……」


そこにはぶつぶつとつぶやきながら薬を塗りたくる凛堂がいた。


「あれ?治らない…。どうし、て?これ、じゃないの?じ、じゃあこっちの薬なら!……違う、これも治らない………。なんで………?なんで治らないの!?このままじゃ…………ケー君に…………。嫌…嫌嫌嫌………嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌、そんなの絶対に嫌!!!嫌、嫌だ………ケー君に嫌われたら、私…私………生きていけない……………嫌だ、お願いだから治って、治ってよぉ…………いやぁ…………ケー君……………一人にしないで………………何でもするから、何でも言うこと聞くから、ずっとそばにいて………ケー、君…ケー君……ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君ケー君…………」


そう言って凛堂は手当たり次第に薬を塗って、効かないとわかれば薬のガラス容器を投げ捨てることを繰り返していた。


「お、おい………凛堂?」


かろうじて声を出す。すると、一瞬ピクっと凛堂の肩が震え、ゆっくりとこちらに顔を向けた。


「あ…ケー君……見て…ほら……こんなにたくさん薬塗ったからもう大丈夫だよ。安心して。今はまだ効き目が出てないけど、すぐにきれいになるからね。だから、ケー君は私のこと嫌いにならないよね?捨てないよね?一人にしないよね?一緒にいてくれるよね?ね?」


そう言いながら、凛堂はふらふらとこちらに歩み寄って俺に抱きついてきた。それは俺に同意を求めるというよりも、自分に言い聞かせているように思えた。俺はそんな凛堂の頭を優しく撫でながら


「大丈夫だ、凛堂。俺がそんなことで嫌いになるわけないだろ。安心しろ。」


と言い聞かせた。今思い返すと、すごく恥ずかしかったが、その時はそんな後のことを余裕は無かった。


いきなりこの世界に召喚されて、自分の好きな人の変貌っぷりを見せられて、まだ何にも理解できていない状況だったけど、今は凛堂にこう言うことは正しいと思っていたんだ。



読んでくださりありがとうございます。

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