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第13話 それぞれの思い

諸事情により更新遅くなりました。

ごめんなさい。



聞いてしまった。

その瞬間、俺の感情は後悔と緊張に支配された。


「あんなことって?ケーイチを連れ去ろうとしたこと?」


「違う。なんで………」


「凛堂さんを殺そうとしたのかってこと?」


言葉が詰まる。

それは今の俺が一番聞きたいことであり、一番聞きたくないことだった。


どうか間違いであってほしい。

どうかみんながグルになって俺を騙しているだけであってほしい。

俺はそんなささやかな願いを抱いていた。


「あの人が魔王だからだよ。」


だけど、犬山は残酷にも俺が一番聞きたくない言葉を正確に、寸分の狂いもなくその口から発した。

その言葉は俺の心臓を掴み、握り潰さんばかりに締め付けてくる。どっと汗が噴き出してくるのが分かる。


『凛堂が魔王』

どんなに頭の中で否定しようとも、その言葉だけがこびりついて離れてくれなかった。


「なんで………」


さっきと同じ言葉だ。だけど今の俺はそんなことに気づくほど冷静じゃない。


「二人から聞いてないの?天原くんと優衣ちゃんから。」


「あいつらも凛堂が魔王だって……………………どうしてそんなことになるんだよ?」


「どうしてだろうね?あたしにもわかんないよ。」


「……………本当なのか?凛堂が魔王だなんて、なにかの間違いじゃないのか?」


「あたしも最初はそう思った。でも、真実だよ。凛堂さんは魔王だよ。」


「だから、どうして……!?」


「あの人は人を殺してる。」


「っ!?」


「あたしたちの最初の目的も聞いてない?あたしたちは一ヶ月ちょい前の魔力現象を調べるために来たんだよ。あたしは詳しく聞いてないけど、ほっとくと危ないかもしれないことらしくてさ、はるばるやって来たって訳。15人でね。」


「………15人?」


「そ。天原君や優衣ちゃん、あたしを含めてね。」


15人?あの二人以外にもここに来てる人がいたってことか?

そのとき、俺の頭に藤林が言っていたことが浮かび上がった。


『別働隊は……』


そうだ。あいつのあの言葉はこう言う意味だったのか。そしてあのときの重傷の男がその別働隊の一員だったのか。だが、俺が理解できたのはそれだけではなかった。


『全滅した』


全滅した。藤林もあの男もそう言っていた。それって………


「私たち三人以外凛堂さんに殺されたんだよ。」


「…………ま、魔獣に殺されたんじゃないか?ここら辺の魔獣は結構強いし……」


「あたし、全員の遺体を確認したんだ。あれは魔獣の殺し方じゃないよ。つーかさ、ケーイチはおかしいと思わなかった?」


「な、何がだよ?」


「あたしたちが調査に来たのが今日が初めてだと思う?一ヶ月以上も前のことなのに?」


そうだ。そういえばそうだ。確かに盲点だった。


「今回が初めてじゃないよ。魔力現象の直後にはもう調査の計画は提案されてたんだ。初めての調査はだいたい一週間後ぐらいだったかな。最初は近隣の騎士とか護衛団を集めて探索させたんだ。だけど、誰も帰ってこなかった。最初はケーイチみたいに魔獣に殺されたんじゃないのかって言われてた。だからこっちも人数を増やした。それでも駄目だった。今度は騎士だけじゃなくて魔導師もメンバーに加わった。でも駄目だった。そこで私たち勇者の出番ってことになったの。今までの話聞いててわかったんじゃない?先に調査に来ていた人たちがどうなったのか。」


俺はもう何も言い返せなかった。本当なら言い返すべきだったのだろう。凛堂が人殺しなんかするはずないって。


だが、俺は見たのだ、目の前で人が殺されるのを。そして、その後の凛堂の反応を。あれは初めて人を殺した奴の表情じゃない。あれは……………。


「また明日来る。」


そう言って無理矢理会話を中断させる。


「………うん、待ってるよ。」


犬山は短く答える。こいつが今の俺の心情を察してくれたのかはわからない。

でも今の俺にはそれがありがたかった。


俺は犬山の返事を聞くと、部屋の外に出た。

部屋の外に出ると、今までの疲れが急に感じられたせいか立ちくらみがした。思わず壁に寄りかかって治まるのを待っていた。

あのまま会話を続けるのに耐えられなくなってしまった。いや、本当に中断させたかったのは自分の思考だ。会話を打ち切ることを言い訳にして、俺は……………


「何の話してたの?」


突然声がした。見ると地下室の階段の所に凛堂がいた。


「…………………」


今の今まで彼女の話をしていたので、なんだか気まずい。


「別に………何でもない。」


「ふ~ん。何か情報は聞けた?」


「いや、今日は疲れたからもう寝るよ。お休み。」


ちょっと強引かもしれないが、今は誰とも会話したくなかった。一人で考えたかった。そのまま凛堂とすれ違い階段を上がっていく。


「うん、お休み、ケー君。」


俺が階段を上がっていくのを、凛堂はじっと見ているだけだった。



――――――――――――――――――――――――



ケーイチが部屋を出て行ったあと、あたしはやることもないので牢屋の中で眠ろうと思い座っていた。

その時、地下室の扉が開かれた。誰だろうなんて思わなかった。この気配はケーイチじゃない。だとしたら考えられるのは一人しかいない。


「こんにちは。犬山さん。」


「…………………」


返事はしない。ただ黙ってうつむいているだけだ。


「ケー君と何の話してたの?」


あたしの話する気ないアピールを無視して尋ねてくる。こっちの気も知らないで図々しい。ちょっとむかつく。


「たいしたことは話してないよ。あんたが人殺しの魔王だってことぐらいかな。」


だから少しいじってやろうって思った。


ケーイチの様子からこの人は自分が魔王だってことを教えてなかったみたいだ。

そりゃそうだ。自分からそんなこと言う人はいない。普通なら頭がおかしいって思われるぐらいの話だが、この世界じゃ違う。現にケーイチは揺れている。このまま凛堂さんと一緒にいるか否か、二つの感情で迷っている。これはこの人に取ってかなりマズい状況のはずだ。


「それだけ?」


だけど、凛堂さんの反応はあたしの想像と違った。

凛堂さんはそれが何か?と言う表情であたしを見ている。


動揺してないの?なんで?ケーイチに知られたくないんじゃ………。


「ほんとにそれだけしか話してないのかな。う~ん、嘘をついたら駄目っていうルールも追加しようかな。ま、めんどくさいし今度でいっか。」


「ちょ、ちょっと待ってよ!なんで…?」


「なんで焦ってないのかって聞きたいの?」


あたしが言おうとしてたことを先に言われてしまった。


「それはね…………私はケー君を信じてるからだよ。」


その時のこの人の表情は生涯忘れられないだろう。凛堂さんが美人だからではない。

その表情はある一つのことを絶対的なまでに信頼している、そんな感じだった。

あたしはそこまで盲目的にケーイチを信じられるわけないって、少しは不安になるんじゃないかって思ってた。

だけど、その中に別の感情が含まれているのがわかった。


たぶん、それはあたしだからわかる。


優越感だ。この人はあたしに勝った気でいるんだ。


「だってケー君は私のこと好きだから。私を裏切るわけないよ。私を一人にするはずないよ。」


その目は狂気で濁っていた。


「今日は私もこのくらいでいいかな。言いたいこと言えたし。じゃあ、またね。」


そう言って凛堂さんは部屋を出て行く。

凛堂さんが出て行った後、自分の気持ちが抑えきれなくなり壁に八つ当たりしてしまう。


「チッ……」


一人残された部屋の中であたしの舌打ちが響いた。



―――――――――――――――――――――



こうして、それぞれの夜は更けていく。


一人はこれからの未来に迷いを抱え

一人はこれからの未来に苛立ちを募らせた。

そして、最後の一人はこれからの未来を幸福なものだと信じていた。


それぞれが全く別の感情を抱きながらも夜の闇は濃くなり時間は無情に流れていく。

そしてたった一つの未来へと進んでいく。




とりあえず第一章完結です。

これから第二章に進むわけですが、その前に一章までの登場キャラ紹介などを入れようか迷っています。


それと今後の更新は私自身のプライベートが忙しくなってきましたので週1回~月1回の頻度で不定期更新になるかもしれません(なるべく週1回は更新したいのですが…………………)。週1回の場合は日曜日22時を予定してます。


長々と失礼しました。今後ともよろしくお願いします。

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