第11話 凛堂の強さ
4000字オーバーです。
凛堂はわずかに笑っていた。
凛堂は剣を振りおろすと、斬撃が発生した。さっきの天原がやっていた技だ。凛堂のは闇魔法バージョンといった所か。
「おらぁ!」
天原が凛堂の技を剣で受け止めはじき返す。そして凛堂と距離を詰め鍔迫り合いに持ち込む。
ガキン!!バキン!!ガッ!
凛堂と天原が激しく剣をぶつけ合う。お互いがお互いの攻撃をはじいてるため、辺りに火花が散っている。自分の目の前で起こる命のやりとり。ほんの一瞬の油断や読み違いが即刻死へと繋がる。そんな中でも凛堂は笑っていた。
凛堂と天原が一瞬離れたかと思えば、背後から藤林の魔法の援護が加わる。
「氷魔法・三叉槍、火魔法・三叉槍、雷魔法・三叉槍!」
藤林が三連続で魔法を唱えてくる。藤林の詠唱に伴って、3本の三叉の槍が顕現する。それらは一斉に凛堂に向かって発射された。
バキン! バチン! ザシュ!
だが、凛堂はそのことごとくを破壊する。
驚くべきは凛堂の剣技だ。天原との斬り合いもそうだが、藤林の魔法をはじいたときも剣は折れていない。天原の剣はおそらくかなり特殊な物なんだろう。藤林の魔法だって相当な威力のはずだ。その全てをあの剣1本でいなしている。
そして破壊しながら魔法を発動する。
「黒雷」
凛堂が発動したのは黒い電撃だ。だが……
「おいおい、どこ狙ってるんだ!!?」
天原の言うとおりだ。凛堂の魔法は誰もいないところに向けられて発動されていた。まさか……失敗したのか?
「フフ、どうかな?」
凛堂が怪しげに笑うと変化が起きた。
カッ!カッ!
なんと凛堂の放った電撃が二度曲がって天原の方へと向かっていったのだ。
「な!?」
これには天原も攻撃を中断して電撃を躱す。
カッ!カッ!
しかし、再び電撃は方向転換をし、天原へと向かう。まるで電撃そのものが意志を持っているかのようだ。
「うぜぇな!」
バチン!!
埒があかない、そう思ったのか、今度は剣で電撃をはじく。聖魔法を帯びた剣ではじいたためか、感電はしていないようだ。
凛堂の電撃は散り散りになってはじけた、かに見えた。はじかれた電撃は空気中を漂いすぐに消えると思っていた。
だが、目の前の黒雷は消えない。細かく分散した電撃は一瞬パリッと空気中で放電した後、また標的へと向かい続けた。
「なっ!!?」
バチバチバチバチィ!!!
二度目の驚愕を無視して電撃は天原を捕らえた。分裂し多方向から迫る電撃を躱すのは容易なことではない。
「ぐあぁぁあぁぁぁぁ!!」
悲鳴が響き渡る。多少の時間差があったが、分裂した電撃は全て天原に命中した。さすがの天原もその場に膝をつく。
「天原君!!風魔法・嵐!」
藤林が特大の魔法を放つ。それは風なんて生やさしいもんじゃない。まるで嵐だ。さすがの藤林も焦っているのか。
「フフ、黒風」
「!!また!」
それでも、凛堂は笑う。そんな二人をあざ笑っている。
凛堂から放たれた魔法は藤林の嵐と比べて、扇風機のようなものだ。だがその圧倒的な質量差に関わらず嵐を消し去る。
魔法が消されてひるむ藤林だが、凛堂はその隙を見逃さない。藤林に剣を振り下ろす。
「風魔法・疾風!!」
風魔法を自分に使って素早さを上げたのか!
藤林は後ろへ飛び、剣の範囲外に逃れる。
「土魔法・剣山」
「かはっ!!」
さっきの土魔法だ。藤林が着地するよりも先に土柱が現れ藤林に直撃する。藤林の動きを予測してあらかじめ準備していたんだ、剣は囮をおとりにして。藤林は衝撃で吹き飛び、地面を転がる。
「げほっ!げほっ!」
「水魔法・拘束」
今度は水だ。凛堂により顕現された水が藤林の腕に絡みつく。
「えい」
そのまま凛堂が体を回転させると、ロープのように水でつながれた藤林もそれに合わせて引っ張られる。凛堂は藤林を投げ飛ばして天原にぶつけた。
「きゃ!」「ぐ!」
「これでおしまいだよ。」
そして凛堂は倒れている2人に手をかざす。
「黒炎」
黒い炎が放たれる。
ただ色が黒いというだけではない。炎の揺らめきが禍々しく感じられ、自分に向けられている訳でもないのに冷や汗と震えが止まらない。
確かに凛堂が使う魔法はどれも特殊な感じがしていた。だが、あの魔法は特にそうだ。ヤバい。ただただ俺の印象はその一言だけだった。なぜだかあの炎からは恐怖以外の感情が出てこない。逃げなければ死ぬ。直感でわかる。絶対そうだ。あれは……あの炎は、あらゆるものを殺す、死そのものだ。
「賢者様!!」
その時、藤林たちの近くの茂みから何者かが現れ、二人を突き飛ばした。一瞬だけ見えたが、騎士のような鎧を着ているが、全身血まみれの男だった。片腕もなくなっており、間違いなく重傷だった。二人を襲うはずだった凛堂の魔法はその場にいる男に当たる。
「ぐわああああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「っ!おまえ…!」
「水魔法!!」
顔見知りなのか、二人の表情が変わる。藤林が炎を消そうと水魔法を使う。
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!アツい!ア゛ヅいぃぃぃぃいぃ!!」
「!?どうして!!?炎が!?何で消えないの!?」
黒い炎は消えない。水を掛けられても尚その勢いは止むことはない。男に着弾した炎はみるみる彼の体を
覆っていく。男はのたうち回りながらもがく。だけど、消えない。炎は彼が苦しめば苦しむほど、それをあざ笑うかのように燃える。
「も……申し訳、あ゛りまぜ…………我ら、は……全滅……………いだじ、まし…だ。」
男は燃えながら、その身を焼く炎の激痛に耐えながらも二人に話しかける。
「どう、が…………………魔王を、うぢどっで………………………………世界を………おずぐいぐだ……………」
そこで言葉が途絶えた。死んだ。男は死んだ。死して尚、炎は男の遺骸さえも燃やし尽くそうとする。
「…………こいつの怪我はおまえか?」
「うん。そうだよ。他にも三人ぐらいいたけど、まだ生きてたんだね。」
「っ!」
「落ち着いてください!彼の言うとおり別働隊は全滅したと考えるべきでしょう。」
一瞬激情に身を任せようとした天原だが、藤林の言葉で踏みとどまる。
「…………あぁ、悪ぃ。」
「フフフ、さっきは外しちゃったけど、今度は逃がさないよ~」
凛堂が二人に迫る。天原も藤林も傷を負っているがまだやる気だ。だけど、このまま戦ったら、おそらく凛堂が勝つ。
だが、その時辺りがまばゆく光る。
「な、なんだ!?」
「ちっ!」
思わず目を閉じる。凛堂がまぶしさに目を細めながらもその光の発信源らしき位置へ氷槍を放つ。バキン!!とガラスの割れた音がしたかと思うと光が段々弱まってくる。光が収まると天原たちがいた所には氷槍に打ち抜かれたガラス玉があるだけだった。
「なんだ、あれ?………それに天原と藤林は………?」
「逃げられたみたい。フラッシュボムかな。目くらましかぁ、めんどくさいなぁ。まだ近くにいるかも。」
凛堂はガラス玉に近づいてそう解説する。辺りを見渡しながら足でガラス玉、もといフラッシュボムを踏みつけ完全に粉々にする。
「残念、もういないよ。」
不意に凛堂の言葉に応えるように、知らない声が混ざる。声の発信源は俺の後ろからだ。
バッと後ろを振り向くと女が立っていた。フードを被っていて顔は見えない。
何だ?いつのまに!?
「ついでにこいつももらってくよ。」
女はさばさばした口調で俺に手を伸ばす。よくわからないけどヤバい。たぶん捕まるとヤバい。
「さぁ、大人しくしなよ。そうすれば痛い目みな――――――――!!!」
女のセリフは最後まで彼女の口から紡がれることはなかった。女がセリフを言い終えるよりも凛堂がその女の首根っこをつかんで地面にたたきつける方が早かったからである。
「がはっ!!」
「何してるの?」
は、速ぇ。さっきまであのガラス玉の方に凛堂はいたはずだ。この女が後ろにいたことにも気づかなかった
けど、凛堂がこっちに戻ってくるのにも気づかなかった。凛堂は女の首をつかみ地面に押しつけたまま質問する。いや、拷問すると言うべきか……。
「何してるの?」
「ゴホッ!ゲホッ!……さす、がだね。まさか、あんなに、早く反応………」
「な・に・し・て・る・のって聞いてるの…」
「か…は……ちょっ………マジ…で、首………絞まっ…………」
凛堂の声は普段より低くなっており、それが彼女が怒っていることをはっきりと表している。
女は苦しそうにもがくが、凛堂はそれにかまわず絞める手に力を込め続ける。
「手を…………離…せ」
女は腰につけた短剣を抜き凛堂の顔面に向ける。だが、凛堂は無表情のまま首を絞めていない方の手で女の腕を押さえ、そのまま手に力を込める。
「もしかしてケー君に触ろうとした?駄目だよ、そんなこと。絶対許さない。だって、ケー君は私のものだもん。ケー君に触れていいのは私だけだもん。それなのに触ろうとしたの?気持ちはわかるよ。だってケー君かっこいいもんね。ついつい触りたくなっちゃうのもわかるよ。私だっていっつも我慢してるもん。でもね、あなたは駄目。薄汚い雌のにおいがするから。この世でケー君に触れられる権利を持つのは私だけだから。私以外は駄目なの。だから、あなたにはお仕置きをします。さよなら。来世でもケー君に会えないようにしてあげる。」
凛堂は低い声のまま女に呪いのような言葉を言い続ける。凛堂の手にも一層力がこもる。
ついに、女は耐えきれなくなり短剣を落としてしまう。顔の血の気が引いていき、わずかに血走った目を見開いている。
「か…………………は……………………………ほん、とに………死ぬ…………………………………誰……か…………………………助け……………………」
「うん、死んじゃえ」
凛堂は笑っていた。人を殺す最後の瞬間まで笑っているのか。
俺はそんな彼女を見ているだけだ。まただ。また俺の体は動かない。凛堂が人を殺すのをただ見ているだけしかできない。恐怖に震えることも目をそらすこともできない。このままあの人が死ぬのを見ることしか俺にはできないのか………と、そう思っていた。
「助………け…………………て…………………………………………………………………………………………………………けぇ、いち」
この言葉が聞こえるまでは。
読んでくださりありがとうございます。
第12話と第13話は少し短くなるかもしれません。
次話の投稿は9月24日以降を予定しています。




