第3話 協力者
次の日
暁は京にお願いして自分の分だけの休みを改竄(ルナのことを話すと喜んでやってくれた)して麓の自宅の広間にポツンとちゃぶ台とルナを座らせていた
「お休みとってもらって申し訳ないわね」
「安心しろ。お前の分はズル休みってことになっているから」
「なんで!?」
「あ?奇襲しておいて何言ってんだ?お前のズル休みを隠す優しさは現在持ち合わせていない」
「いや、でも、あんたの攻撃でさっきまで気絶してたのよ?」
少し頭に来ている暁は少し口調を変えて
「そっかぁ。それも確かになぁ~」
「ね?お願い。私の分のズル休み隠して!転校して次の日にズル休みとか洒落にならないから!」
「でも、お願いするなら言い訳よりも先に謝るべきだろぉ?」
「申し訳ございませんでした!許してください!」
「よろしい、、、とは言え、京にお前のこと言ったから多分嬉々揚々とやってると思うぞ」
「よかったぁ~!」
そんな茶番を終えて話を進める
「で、お前何者なんだ?明らかにただの転校生じゃないだろ」
「そうね。改めまして、傭兵ギルド所属Sランク、魔法使いルナです。よろしくね。暁くん」
傭兵ギルド、Sランク、魔法使い
聞いたことのない言葉に暁は少し苦笑する
―どうやら本気で狂わされるらしい
「新出単語多すぎ。説明しろ」
「命令口調は止めてほしいな」
「分かったから進めてくれ」
「とは言え、まずは世界から話さないといけないんだよね」
「世界とは、土とマグマで出来ている。終わり」
「終わらない!こっちはめんどくさいですむ領域とっくに通りすぎてるんだから説明しないわけにはいかないのよ!」
「えー。分かった流しで聞いてやるから。喋ってくれ」
「聞く気ゼロ!?分かったわよ!それでいいから今取り出したどら焼きを置いて聞いていて!
まず、私はあなたたちが言うところの異世界から来たの」
どら焼きを吹いた
畳に広がるどら焼きの欠片
―畳に溢すと片付けが厄介なんだよな
暁は目を細めて軽い怒気(明らかに逆ギレであるが)を放つ
「中二病とかじゃなくて?」
「ロイ」
ルナの前に置かれたコップを溢した
暁は驚き立ち上がるがルナがそれを制す
水の流れは下に向かったが、唱えたとたん生き物のように動き出しどら焼きの欠片まで宙を泳いだと思えばそれを包んで庭に水ごと捨てた
科学を無視した現象に昨日の激流を思い出していた
「今の現象で信じてもらえるかしら?」
「ああ、とりあえずな」
「ちなみに今のは魔法といって私の世界では科学ではなく、この魔法が発展しているわ」
―どら焼き食いながらする話じゃないな
暁は安具楽をして聞く体制を作る
「それで私たちの世界は『ハルマゲドン』こちらの世界を『ピース』と呼んでいるわ」
「最終戦争と平和?名前ふざけてるだろ」
「言わないで、学校でもこう習うぐらいなんだから」
「でも、分かりやすい。そっちの『ハルマゲドン』は現在戦争中なんだな」
「というか、世界滅ぼそうとされてる。うっかりすると『ピース』ごと」
「ちょっと待て!」
別世界の最終戦争に何の関係もない『ピース』まで影響を及ぼしていることに暁は驚愕する
「そもそも何で滅ぼそうとしてるんだよ!」
「そう言われても私たちが滅ぼそうとしているわけじゃないんだから理由なんて聞かれても知らないわよ。そんなこと『クラウン』に聞いて」
「『クラウン』ってなんだ?」
「ああ『クラウン』っていうのは、世界を滅ぼそうとしている結社よ。その実力は確かで昔あった三国が落ちたほどよ」
「国落としを3回?そりゃ何ともすごいことだな。ルナみたいな魔法使いもごろごろ居たんだろ?」
未知の力である魔法に暁は敬意を払っていた。
―あの高火力に方向を変えることの出来る操作性は脅威になる
そう思っていたのだが
「まさか、私くらいの実力者がごろごろ居られたら堪ったもんじゃないわよ。一応負けたけど油断していただけで本当の実力はもっとあるのよ!」
「そうか。じゃあ今度もう一度やろうか。こっちもルナの本気とやらを見てみたい」
「ま、そのうちね。話を戻すわ」
そう言って一拍置いて話を進めた
「確かに魔導国家と呼ばれるほどの魔法使いが多くいた国もあったわ。だけど落とされた。その他にも実力主義の帝国、武道主義の王国という魔導国家と争うぐらい強い2国もあったのだけれど結局落とされて、現在生き残りを集めて協和国家を政経しているわ」
「おいおい、『クラウン』ていう結社強すぎだろ」
「ええ、『クラウン』が生まれる前その三国は常に戦いが絶えない状態だったの。それに耐えかねた実力者たちが裏切り『クラウン』に所属したものだからそれはもう大変よ」
―、、、、、
聞きかねた内容に耳を疑う
「、、、なんか、その三国が悪いんじゃないか?」
「でも、10年前のことを関係のない私たちにまで飛び火されて世界滅ぼすと言われても困るのよ」
「確かに」
「で、『ハルマゲドン』と『ピース』は反転世界。つまりコインの裏表のような関係なの」
「もしかして『ピース』まで滅ぼされかねない理由って、、、」
「そう反転世界だからよ。とは言え今までは『クラウン』から『ピース』への攻撃は何も無かったんだけど
『クラウン』が『ハルマゲドン』を攻撃するせいで『ハルマゲドン』と『ピース』の間に障害を生んでしまったの。それが2日前の魔物の氾濫よ」
「あの緑色の敵のことか?」
「そう、あれはゴブリンっていて魔物の中では最弱の部類に入るんだけど。魔物って言うのが『クラウン』が所持する『地獄の杯』から召喚された怪物で『地獄の杯』だけじゃなくて魔物自体が繁殖することもあって三国が落とされたのも裏切り者が、っていうよりその魔物の数の暴力って言うのが大きいわ」
「えっと氾濫って言ってたが、もしかして、、、」
「ご想像の通り『ハルマゲドン』で生まれた魔物が多すぎて『ピース』に転移され始めたの」
「討伐しろ!」
魔物増えすぎで『ピース』にまで来ちゃったにしては来たゴブリンの量が多すぎていた
つまり、その分『ハルマゲドン』が討伐をサボっていることになる
「そう言うことで生まれたのが傭兵ギルドよ」
「ああ、そういえば言ってたな『傭兵ギルド所属Sランク』って」
「そう、そして魔物を討伐するために生まれた傭兵ギルドに依頼を受けてここに来たのが私って言うわけ」
「なるほどようやく話が掴めてきた
まとめると
『クラウン』が世界滅ぼし始めて
三国が協和国家を作って対抗中
『ハルマゲドン』から魔物が溢れて『ピース』に来て
傭兵ギルドからルナが『ピース』を守るため来た
こんな感じか?」
「簡略化されるのが少し悔しいけどそんな感じね」
そして暁は目の色を変える
ここまでは基本情報
本題は違うのは暁には分かっていた
「で、ルナはなんで俺を襲った?俺はゴブリンという魔物と戦った話してないのに知っていた
つまり、俺の戦いを見ていたわけだ。だから魔物と間違えてなんて言い訳通じねぇぞ?」
いきなりの油断を許さない気迫にルナはたじろぎ
フッと笑いながら言う
「さすが、見込んだことはあるわね。確かに私は昨日、暁くんだと分かっていながら攻撃したわ
結果は知っての通り。返り討ちにあったわ
普通に言ったらこんなお願い出来る訳がないんだけど
もし、良かったら私を手伝ってくれないかな?」
ルナから差し出された手は新たなる世界の挑戦権のように見えた
「その世界が俺に追い越されないことを願うよ」
そう、世界を越した者が手を繋いだ
○●○●
かくして暁はルナの手伝いをすることになったのだが
「それで、結局何をすればいいんだ?」
「まあ、取り合えず武器の調達かな。さすがに手ぶらで戦わせる訳にはいかないしね」
「それはそうだが、武器を持っていると警察に捕まるのだが」
最も警察が捕まえられるかどうかは別の話だ
「そういうことなら問題はないわ。マジックストレージをあげるから」
そう言ってルナは腕をめくり手首に付けられた装飾品を見せると虚空から杖を現した
「こんな感じでこの腕輪の中に物をいれることが出来るわ。重量は腕輪分しかないから持ち運びが楽だしね」
「さすがファンタジー。質量保存の法則ガン無視か」
「でも、これで治安の問題解決でしょ?」
「しかし、次は武器だな。どこなら買えるのか、、、」
―最悪、借り作って京に作ってもらおう
そう思っていた暁だったが突然光出した部屋が現実に戻した
実際には部屋が光っているのではなくルナが持っていたカードが光輝いているのだ
「何言ってるの?暁くんのマジックストレージも新しく買わないといけないんだから『ハルマゲドン』に行くわよ?」
「何をさらっと異世界に行くことになってんだよ!」
「ごめん。これ決定事項。暁くんのこと上層に話したら興味持たれて連れてくるよう命令されてるのよ」
「だったらちょっと待て。ゴブリンのなまくら持ってくるから!」
「もう起動したから止められないわよ。諦めて」
そしてルナは唱えた
「リバース」
その部屋にもう、2人は、居なかった