第1話 『化け物』と呼ばれる男
ぶっちゃけた話
最近の『なろう』はチート、俺tueeeばかりであまり好きじゃなかった。
だからこそ、ならば主人公だけじゃなく仲間も敵もチート、俺tueeeにしてしまおうという発想から生まれた作品。
もし同じ思いを抱えている文才ある人がいれば是非皆チート、俺tueeeを書いてほしい
彼は対峙していた
前方に敵。視認6体。動きはない
前衛の1人が大型の盾を持ち、こちらは木刀しかないのを確認すると敵の真ん中に突っ込む
距離は100mあったはずだ。しかしその差は彼の一歩の間にすぎない
そして、彼の手には木刀はもう無かった。いや、正確には突っ込む前に捨てていた。これほど強固な敵を相手に木刀など邪魔だと
「ハァ!!」
次の瞬間6体全ての体が抉れていた
彼の姿を見れば彼の拳がそれを行ったのは分かる
だが、その攻撃の瞬間は彼以外見ることが出来ない。彼の声が遅れているのではないかと錯覚するほどに速く鋭い攻撃だった
敵がメキメキと音を立てて倒れる
それを満足そうに彼は言う
「よし、間引き終了!」
倒れた敵を模した大木を見ながら満足げに彼はそれを担いで麓の家に帰るのだった
その少し後になってのことである
「これが『ピース』か。文字通り平和な世界ね」
何も無い虚空から1人の少女が現れた。その姿はフードで隠され見ることが出来ない。しかし、微かに見える瞳だけで先程までここにいた彼は気付くだろう
これは戦いをしに来た者の目だと
「まるで、これから世界が終わるとしても平和なままで終焉を迎えるような、、、ね」
●○●○
宝塔学園
それは中高一貫教育校で最近では東大に受かるより難しいと言われている学園である。その高校1年生の教室に彼の姿はあった
「やあ、暁くん。修行は捗ってるかい?」
「お前に教えるとろくなことがない」
「つれないねぇ。私は順調だよ。最近感情のあるAIの作成に成功したのだよ」
「聞いてない」
「親友に対してその言い方は酷いとは思わないか?」
「親友ではない」
「では類友だ」
ここまでがいつも暁と話し相手である女子生徒、京が話す内容である
本来ならばここで話は終了であるが、暁が少し口を開く
「なあ、そのAIって戦うことは出来るか?」
「、、、どうやらこれからは君のことを狂戦士、修行狂いと認識を変えないといけないらしい」
「狂ってるのはてめぇだろ?狂科学者。俺のことを実験動物の様な目で見やがって」
「ならば、これからはモルモットを見る目で見なければな」
「変わってねぇ」
そんな憎まれ口、憎み口は挟みながら話を戻す
「最近の修行、大木相手でつまらないんだ。もっと、こう、俺と張り合うくらいの、、、」
「Jに喧嘩売ってこい。少なくとも私のAIを壊されたくわない」
「そんなこと言うなよ。J《自衛隊》に喧嘩売って日本の警備が薄くなったらどうする」
「、、、もうすでに勝った前提で話が進んでいるのかい?」
「SS、SK、KK、GB、SB、RGを不法所持しているお前に言われたくない」
「くくっ、それもそうだ」
きっと、もしイニシャルが何を指しているのか分かる者が、この教室に入ればその人物は戦慄していただろう。『この2人なら世界なんて簡単に手に入るのだろう』と、2人の話を笑い飛ばせない、2人ならそれを成し遂げてしまう、そう思わせる程の実力が2人にあることは学校中に知れ渡っている
暁は体育で自主的にグラウンド50週(本来ならば2周)をみんなより速く終わらせ息も切らさない。スポーツ関係で彼を倒すことも疲れさせることも不可能と言われ、体育会系の部活さえ他の部員の心が折れかねない故に入部お断りされてしまうほどの実力者。成績も優秀で学年2位の成績を残している
成績において暁を超す京は、テストにおいて100点以外を取ったことがなく、解答用紙に自作の問題を書き、解けないと容赦なく先生であろうと心をへし折ってくる。そしてその先生の授業は解けるまで出ない。出席日数が足りなくても毎度100点を取ってしまうため、学校も学年を上げざる終えない。ちなみに大学で習う科目は全て勉強済み(それが上限だとは言っていない)らしい
そんな化け物相手に突っかかる者は化け物しかおらず。2人は基本一緒にいるのが当たり前になっている
「とにかく、諦めたまえ。世界が君に追い付くことは出来ない。、、、私と同じようにな」
「、、、頼みがあるUFO作ってくれ」
「地球の力にあきていたのよ?」
最後に天才の話と思えないほどバカな話をして終わる。いつも通りだった
●○●○
麓の家に帰りついた頃だった
「山が騒がしい?」
それは山に居るものにしか分からない感覚などではなく、ただ風一つ無い夕暮れ時なのにまるで暴風が吹き荒れているように木々が唸っている
「行ってみるか」
●○●○
フードからレーダーを出し屋根を跳ね飛んでいる影があった
「何で急に来てるのよ!速く向かわないと被害が出る!」
●○●○
「何これ?」
目の前にいたのは、緑色の皮膚をした人間だった
顔は不揃いだが目付きが悪いことだけは似ている
それぞれ思い思いの武器を持って暁を見つめてくる
暁においてそんな事は些細なことだった。それよりも明らかにこちらに殺意を持っていること、そしてそれが40人以上居ること、ただそれだけが問題だった
「まさに悪意の塊だな」
「ギガャ」
「おまけに言葉が通じない。これやっぱり人間じゃないな」
敵が数体、剣を振り上げ暁を襲う
しかし、空気が爆発ように敵が吹き飛ぶ
「そっちが武器を持って襲うならこちらも武器を使わせてもらおう」
敵の右腕ごと引き千切って奪った剣を掲げ暁は言う
「頼むから大木よりマシであってくれ」
山のため、命のため、そして何より己の修行という私利私欲にまみれた願望を叶えるため、暁は怪物に剣を振るった
●○●○
視認50以上。全員武器を所持。実力不明。こちらにはナマクラ剣しかない。下手に使用すれば折れかねない
しかし
「シィッ!」
そんなことは些細なこと、真は敵の正面に立ち、先程腕を引きちぎった敵ごと斬り飛ばす。巻き込めたのは5体。上半身と下半身が両断され即死。その死骸を掴み敵に向かって投げる。その時不思議なことが起きた
「消えた!?」
投げたその体はまるで空気に溶けていくかのように消えたのだ。これで暁の死骸を武器にして戦うという考えは実行できなくなった
そう言えば確かにいつの間にか引きちぎった腕が見当たらない。剣を振るったときにはもうすでになかった気がする
死ねば消える。その事実に暁は
「『生きていれば消えない』ってことだよな?」
科学を全否定するような出来事になんか頭が行っていなかった。今はただ敵を倒す。ただそれだけしか考える必要はない
さらに一歩進む。敵を掴むとそのまま振るった。ぶつけられた敵は吹き飛ばされ、ぶつけた敵は構えられていた武器にシュレッダーのようにズタボロにされていた。背中に刺さった剣が空気に消える敵がいなくなると地面に落ちた。それを拾い敵に改めて向ける。これで剣は2本。別に二刀流というわけではない。すぐに使えなくなるのなら用意しておいて損はない
武器がないなら敵から奪え。この程度の考え。殺し合いをするのならば当たり前だった
暁はさして疲れもないようで
「さて、武器も充分に調達できたし、この程度、10分ありゃあ消せるだろ」
それは敵に対する殺害通知であった
●○●○
それから10分後まるで忽然と武器だけが現れたような惨状を生み出した暁は、警察に見つかると厄介な武器の回収に勤しんでいた
「なんだ。あれ」
その中にキラリと煌めく物を見つけた。戦闘時零れた刃の欠片かと思ったが、やけに大きく。紫色の光を放っていた
「、、、宝石か?」
それはそう思えるほど物だった。明らかに武器の欠片ではない装飾品。敵を倒すと落ちるとか。そう思って見渡すもこれ以外落ちている形跡はない。取り合えず気味が悪いので(あと、石なんか持っていてもしょうがない)放り投げた
その時視線を感じた
バンッ!と音を立てて棍棒が砕ける
暁が視線の方向に投げたのだ
しかし、もう視線を感じない
「気のせいか?」
先程の敵の残党だろうか?そう考えるとどうでも良くなった。あの緑の敵は集団での動きとしては素晴らしかったが、個人や少人数に分けてしまえば、もはや相手にならなかった。精々動く大木といったところだろう。感じた視線は1つ。ならばいつ現れようとどうにでもあしらえる
ーむしろ成長してもう少しまともに戦えるだけの力を付けてくれれば幸いだ。最もそれを行える頭が足りないだろうが
そう思って、武器の回収をして麓に戻った
●○●○
「あっぶなかった!」
暁が視線を感じた場所そこにはフードを被った人物がいた。警戒を解かずゆっくりと動き地面に飛び散った棍棒の破片を拾う。抉れた樹の破片かと思ったが乾いた木の感触だった。少し握ってみると砂のように細かくなり風に乗って消えていった
「なんて威力。あんなの当てられたら堪ったもんじゃないわね」
それに
と、先程まで戦闘があった場所を眺める。緑の敵、それはその人物にとって珍しくない生物であった
ゴブリン。個々の戦闘能力は大したことはないが繁殖速度が速く圧倒的な数で攻撃してくる『魔物』
「約50匹も現れられたら普通の人間なら殺されるのがオチなんだけど、まるで疲れたようすもなくやられたんじゃ底が見えない。ソロBランク以上は確定かな」
そして、おもちゃを見つけたときのような満面の笑みを浮かべて彼女は言う
「いい候補見つけた!」