とある高地4
さっきから大型機らしき発動機の音がして軍曹が物資の投下がなんとかとか叫んでいるようだが、今はそれどころではなかった。
アウィスはスリングで吊った短機関銃に左手をやり、感触でその存在を確かめた。
こう暗くては、さすがの〈狩人〉でもお手上げだ。
真の闇の中では、夜目も利かない。
接近戦ともなれば、拳銃か短機関銃、ナイフや山刀、銃剣の出番となる。
アウィスが重機関銃から「離れるか……」と思いかけたそのとき、真昼のような明るさが戦場を満たした。
束の間、棒立ちになる彼我の将兵たちの影が立体模型に並べられた人形のようにアウィスの眼には映った
その中のひとつをアウィスは本能的に捉え、狙うともなく撃った。
アウィスが空を見上げると、大型輸送機の後方に本来は赤外線追尾型の誘導弾を避けるための囮が射出され、輝きながら地上へ落ちてゆくところだった。
そのとき、機体を傾けてゆっくりと旋回する輸送機のコックピットに人影が見えて、アウィスはパイロットと目が合ったような気がした。
上空のフレアはどこか花火のようにも見えて、戦場にはそぐわぬ美しさだった。
が、共和国軍にとってはたまったものではない。やっと照明弾が終わったところで一安心して陣地攻撃というところだったのに、またしても突然の真っ昼間だ。
フレアが落ちるまでの辛抱といえば、そうなのだが……共和国軍の将兵にとってその時間は永遠にも思えた。
さらに悪いことに、指揮官のアレクサンドルが敵の狙撃により負傷してしまっていた。
その混乱のさなか、上空から「ブーン」という高速射撃音が共和国軍のもとへ降ってきた。