推薦図書 宇喜多の捨て嫁
今、私が所属しているサークルで推薦図書なるものを発表するイベントがおこなわれていまして、その流れに沿い私も発表してみようと思います。
私が推薦する本は「宇喜多の捨て嫁」という備前を支配した戦国時代の武将の本です。木下昌輝さんという方が書いた小説です。何年か前に新人なのに直木賞候補作品になった作品という事で少し話題になったらしいです(当時そんなことは全く知りませんでしたが)。
中身は6個の短編小説からなり、主人公も時間軸も別だったりします。別と言っても皆、宇喜多直家に近い者であったり本人であったり……要するにこの6つの物語がある1つの美しく大きな物語になっている……そういうタイプの小説です。
そもそも宇喜多直家を知らない。そういう人は多いかもしれません。実は一昨年の大河ドラマ「軍師官兵衛」で珍しく登場しました。陣内孝則さんが演じていた役ですね。見るからに「狡猾な悪党」という役でした。私も直家の印象は元々そんな感じです。もうやっている事がそもそも酷いのでね……。自分の奥さんの親をSATUGAI。自分の主君をTUIHOU。娘の嫁ぎ先を娘ごとHOROBOSU。日本史で恐らくはじめて狙撃による暗殺を完遂させた人でもあると思います。彼の経歴を見たら…まぁ汚い……ゲスの極みのボーカルのゲス具合が「なんて爽やかなのかしら」と思えるくらいゲッスゲスな人物です。だってボーカルさんは「イノシシと間違えた」とか言って人を銃で撃ち殺したりなどしませんよね? 宇喜多直家はやります。
そんなゲスな人物を主人公にすえた本作。私の様なゲスラー(戦国時代のゲスな武将をこよなく愛する人々※造語です☆)にはたまらない一品となっています。
おおっと、図書の中身を推薦するのを忘れていた。
ネタばれしないように中身を解説しますと、直家は古傷が元で膿と血が大量に流れ出る「尻はす」と言われる奇病にかかっています。また、本人の意思とは関係なく相手を切り殺す「無想の抜刀術」という技(?)の使い手でもあります。このフィクションを絡めながら、元々純朴な直家が何故変化していったのか、どうしてこんなに恐ろしい人物になってしまったのか……と言った事が語られていきます。
読了後の感想としては、没入感が凄まじいです。人々の心情と策略が折り重り、各個の物語の伏線が美しく回収されていき、心にズシンと響く。そんな小説でした。敢えて言うなら数か所気になることもあるのですが(なんでコインやねん!!※読んだ人だけが分かる言葉)、そこに目をつむれば本当に面白い作品です。実は木下さんの作品はこれ以外読んだ事がないのですが、これを機に読んでみても面白いかな~と思っています。読む上で前提となる知識はあまり必要ないかもしれませんが、昔の地名と、敵の勢力図……例えばこの時期の山陰地方には戦国の大大名の尼子がいたよな~……程度ことはおさえておくといいかもしれません。