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大地の欠片~HOSINOKAKERA~  作者: 三藤木 海
5/6

第五話 忠告

五話目です!

この話で結構展開の伏線張ってますかね。。。

是非、最後まで読んでください。


追記

この話でプロローグ終了ですかね

大地の欠片~HOSINOKAKERA~


第五話 忠告


再び、列車に揺られながらラベラーアルプスに向かう。

今は夜九時過ぎ。ユナはカメラのレンズを手入れしながら、一冊の雑誌を眺めていた。

「••••••」

雑誌には、ユナの投稿した写真が右端に小さく載っていて、中央はデカデカと金賞者の写真が占領していた。

「••••••チッ」

数秒間中央の写真を睨んだ後、力任せに雑誌を閉じて背凭れに埋もれた。

「何で''キラ,,の写真なんかが金賞なのよ•••ホントムカつく•••」

昼間、ハルが尋ねて来たコンクールの話だが、あの時ユナはかなり強気な姿勢を答えた。しかし、本当の事を言うと、そこまで自信に溢れている訳じゃなかった。

先程の雑誌もそうだが、ユナの写真は常に微妙な所だった。

雑誌のコンテストではギリギリ入賞の六等。大きなコンテストでもない為、正直あまりよろしくない。ピノリアナのコンクールで考えると、今回も予選選考落ちかもしれない。

さらに、ユナの専門である「自然風景部門」には、キラ・ヴィーナという女性がいる。

キラは財閥の令嬢で、親からのバックアップによって秘境という秘境に潜入し続けている。簡単に言ったら金が物を言っているのだ。

「絶対負かしてやるんだから•••!」

向こうがどう思っているかは知らないが、ユナの脅威的存在であるキラを今度こそ叩きのめす。いい加減、''アイツに足止めを食ってる,,場合じゃない。今年こそ進まなくてはならない。

「クソ姉貴•••!」


翌朝。

ハルが目を覚ますと、ユナの向こうの車窓は自然豊かな景色を流していて、目的地のラベラーアルプスも間近に聳えていた。

時計を見ると、六時手前。車内はまだ寝静まっていて、ユナもぐっすりだった。

(とりあえずトイレ•••)

ハルは静かに立ち上がり、前方にあるトイレへ向かう。寝息の道を歩き、車両を出るドアに手を掛けた。

刹那。

「ハル・グラン・ツバキ•••」

「!」

背筋が凍る様な視線と、まるで鋭い槍の様な声がハルを刺した。

「ッ!」

不意をくらい、一瞬身体を止めてしまったが、すぐにドアを開けて前方に飛んだ。

(僕が全く気配に!?一体コイツ•••!)

身体を回し、ザッと着地して相手を睨む。

「••••••君•••」

相手は全身を黒いマントで隠し、顔の口元だけを露出させている。当然、この姿には見覚えがあった。

「盗賊団に居た•••バベックか」

そう。あの時ハルが逃し、再会を予感したあのバベックだ。

「まさかこんなに早く会うとはね•••何の用?」

「フフフ•••話が早くて助かります。さすがは''力天使,,にも選ばれたナイトだ」

「!•••君•••」

先程、バベックの声を槍の様な、と表現した。しかし、今は至って静かで、むしろ優しいとまで感じる。まるで、全くの別人であったかの様に•••。

そして、バベックはただの犯罪者ではない。おそらく•••。

「元ナイト•••しかも''裏属りぞく,,に所属していた。じゃなきゃ僕が''力天使,,だった事なんて知ってる筈がない」

「さあどうでしょう?もしかしたら情報が外部に漏れている可能性だってありますよ?」

「そう?愚痴じゃないけどナイトの情報管理の強固さには結構困ってたよ?書類一枚でいくつ部署を通らなきゃならないか•••」

そう言いつつ、ユナと自分の距離を目の端で確認する。

(一秒•••バベックをかわしてユナに辿り着くまで一秒かかる)

それからユナを起こし、層念器を呼び出すには時間がかかりすぎる。それではバベックに攻撃してくださいと言っている様なものだ。

ここは、身体一つで闘るしかない。

「で•••用って?」

臨戦態勢に入り、隙を伺う。

「別に大した事じゃありません。一つ忠告を•••それだけです」

「••••••」

刹那。

「今年のホシノ祭で•••''廻誕,,がありますよ」

「!」

バベックの言葉と同時にハルが詰め、層念を込めた拳を放つ。が•••。

「!?」

次の瞬間、バベックの姿が消え、ハルの拳が空を切った。

「く•••」

放った拳を戻し、周りに目を這わす。

どうやら、乗客はバベックの術に掛かり、眠らされているようだ。どうりで静かすぎた訳だ。

しかし•••。

「廻誕•••」


「••••••ん」

顔に朝陽が照り付け、ユナは眩しそうに目を開く。寝惚けて霞む視界で車両の掛け時計を捉えると、自分がずいぶんと寝坊してしまっている事が判った。

「んん•••ヤバ•••寝すぎた•••」

身体をグッと伸ばし、あくびをして座椅子に沈み込む。が、目の隅でパソコンを弄るハルを収めた瞬間、飛び上がり、慌ててハルに問い詰めた。

「ななな何で先輩が私のパソコン使ってんですか!?勝手に!無断で!」

しかし、ハルは冷めた様子でパソコンを睨み続け、適当に応えた。

「おはよ。ちょっと借りてるよ」

「だから勝手に使わないでください!プライバシーの侵害です!!」

「大丈夫。『私の秘密』とか『私の夢集』とかそーゆーファイルとかには全く触れてないから」

「題名見ただけで死刑ですっ!」

フー、フーと荒い息を吐き、必死の眼差しでハルを睨むのだが、徐々にハルの様子がおかしい事に気付いた。

「••••••何をそんなに本気で調べてんですか?」

すると、ハルは無言で画面をユナにも見える角度にずらした。

「ホシノ祭•••?ああヤナギ町のお祭りですね。これがどうかしました?」

「ちょっとね。でもネットにそこまで情報無くってさ•••君、''廻誕,,って知ってる?」

「ホシノ祭と廻誕ですか•••まあ確かにアクアースで育たないと知る機会が無くて当然です•••ね!」

瞬間、ユナはハルからパソコンを取り上げ、キツイ視線を向けながら背凭れに沈んだ。

「調べたんならホシノ祭が儀式から派生したお祭りだって事は知ってますね?」

「うん。元は必勝を願う戦前の祈祷儀式だった•••だっけ?」

「です。それが月日が経つに連れて一年に一度のお祭りに•••当日はアクアース全土でお休みになります。祭りの主旨はかなり変わってますが•••ヤナギ町だけは昔と同じ祭事を行うので観光地として有名です」

「••••••まあそこはいいや。それより廻誕ってのは?」

ユナの説明に少し考え、ハルはバベックの忠告とは無関係と思い、廻誕について訊いた。

「••••••ホシノ祭の最後に行う儀式です」

すると、ユナは軽蔑するかの様に声を曇らせ、小さく答えた。

「ホシノ祭は神様に必勝を願う儀式•••ホシノ祭で崇める神様は戦争の度に消滅し、次の戦までに蘇るとされてます。昔の人は神様がいれば戦に勝てる•••そう信じたんでしょうね。だから戦争の前に生け贄を捧げ、神様を呼び込もうとしたんです」

「!•••それって•••!?」

「もちろん昔の話です。いくら昔と同じと言っても生け贄の儀はありません。ただ、代わりに動物がまるごと火に投げられるので•••私は好きじゃないです」

「••••••じゃあ•••」

瞬間、ハルの思考がフル回転する。

今年のホシノ祭で廻誕がある•••。廻誕とは生け贄を捧げて神を蘇らせる儀式。現在では生け贄の代わりに動物が捧げられる。ホシノ祭は元々戦の為の祭り。神に祈りを捧げる行い。

••••••。

「••••••戦争が•••起こる」

「は?」

ボソッと呟いたハルに、嘲笑の声が飛ぶ。

「何ですか急に?さっきも言ったじゃないですか。今は祭りだって。今日の先輩何か変ですよ?」

「••••••」

「?•••先輩?」

(バベック•••一体何者なんだ•••)

ハルの考えられる限り、バベックの忠告はアクアースで戦争が起こるというものだ。何故、そんな事を事前に把握出来るのか。何故、軍ですら知らない情報を持っているのか。何故•••。

僕にそれを伝えたのか•••。

「••••••」

いつになく真剣な表情で考え込むハルに、ユナは言い知れぬ不安を感じた。

そういえば、私を救ってくれた時にも同じ様な顔をしていた。

自分の事に全く本気にならないハル。何があっても他人を優先し、自分の事は後回し。頼まれればどんな危険な場所にだって足を踏み入れる。絵だろうと、戦いだろうと。

先輩の事は尊敬しているし、憧れてもいる。

だが、''そこは,,嫌いだ。

常識力ゼロで鈍感。脳ミソの九割が無意味な事に使われていて、その割りには残りの一割がバカみたいに優秀だから、無駄に凄く見える。実際はただのお馬鹿ちゃんなのに。

つまり私が言いたいのは•••。

「無理は禁物ですよー。先輩の容量なんてこのパソコンにだってお・と・るんですから!」

バシッとハルの背中を引っ叩き、笑ってもう一発叩く。

「痛い!急になんなの!?」

「だってぇ•••先輩が無意味無駄無力にも難しそうで簡単な事考えてるみたいでしたから?」

「君は一体僕を何だと?てゆーか僕の力ってどんだけ無いの?」

「このパソコン以下です」

そう言ってユナがパソコンをしまい、同時に列車が停車した。

「よーは」

荷物をさっさと纏め、ハルを抜いて通路に出る。

「リラックスって意味ですよ。セーンパイ」

先輩は先輩らしくしてる時が、一番''マシ,,って事です。

「••••••そうだね」

その言葉にハルは笑顔で頷き、自分も荷物を持った。

「まずは昼ホタル。難しい事は置いとこう」

「はい」

二人は車両から出て、並んでホームに下りた。

「さて•••目指すは世界初の写真•••とついでにその絵!張り切って行きますよー!」

「ついでは君の写真だろ?目的を掏り替えない」

そして、互いの目を見交わし、一回頷いて前を見る。

「行きますか」

「うん」

目の前の雄大なラベラーアルプスに一歩踏み出した。その先に、何が待ち受けているかは分からない。大自然、まだ見ぬ脅威、それら全てを乗り越え、僕らは必ず•••。

前に進める!


「ところでなんだけど、何でパソコンのパスワードが僕の誕生日なの?」

「フギャァア!?」


第五話 完

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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