大地の欠片~HOSINOKAKERA~第二話 ホルダー
かなり短いですが、前話の続きです。コメントや評価をくださる方はどんどんお願いします。
ホントに何でもいいです!
大地の欠片~HOSINOKAKERA~
第二話 ホルダー
盗賊団討伐後、ハルとユナはカルト、傭兵、隊長とバギーに乗り近くの街、ビーンに向かっていた。
盗賊団はその後、逃げ去ったバベックを除く全員がナイトに引き渡され、今頃牢屋に居るだろう。
ユナはというと、層念器の使用後からずっと眠っている。
今は朝六時。ユナ以外のメンバーは昨夜から全く眠っていないのだが、全員疲労感を少しも出していなかった。
「••••••それにしてもだ」
「ん•••」
長い事風の過ぎ去る音しかなかった車上で、カルトが未だに解らないといった様子で言った。
「あのお前がホルダーをなぁ•••どーしても俺には不思議でしょうがないんだよなぁ」
「そうだね。僕も半年前はまさかホルダーを持つなんて思いもしなかったよ」
「しかも一般人をだ。なあ、マジでどうしてなんだ?」
「んー•••簡単に言ったら成り行きかな。仕方なかったとかそれ以外なかった•••とかそんな感じ」
「••••••成り行きなぁ•••」
「成り行きだよ」
ハルはそう言うと、リュックから画材カバンを取り出し、揺れる車上で筆を走らせた。
「••••••なあナイトのお二人さん。俺は放浪の傭兵だからよく解んねーんだが、ホルダーってのは何なんだ?」
二人の会話を聞き、傭兵が兼ねてからの疑問をぶつけた。
「そうだね•••簡単に言ったら念法の類いになるのかな•••」
ホルダーとは、「念晶」を扱える者が己を端的に強化する為に従える者の事である。
まず、全ての力の根源、「層念」の説明からだ。
層念とは、人間の感情から生み出される一種のエネルギー物質である。
層念はどんな人間にも在るが、それを扱うにはそれなりの訓練を要し、その上誰でも扱える訳ではない。
さらに言えば、どうにか扱えてもそれを何かに応用する為にも訓練が必要で、''本当の意味,,で層念を有している人間は世界でも一握りだ。
ハルやカルトの故郷、ソーディアースでは層念を扱う訓練を行う上で、特殊なカリキュラムを使う為、層念を扱える者の数がかなり多い。
よって、ソーディアースの軍力は世界最強とさえ言われている。
今、世界では層念を扱える軍は数百と在るが、その上位にはソーディアースを含むアース圏の四国、東のゼリア圏五国が君臨している。
ゼリア圏五国の内の二国、シンゼリアとエネルゼリアという国は、二十年程前に大犯罪組織、''紅鏡,,と戦争し、二国の協力の末、勝利を収めた。
シンゼリアとエネルゼリアには、それぞれ織田嵐、並樹龍夜という兵士がおり、その二人の活躍が勝利の鍵だったという。
ちょうどその頃、ソーディアースは当時の皇帝が死去し、揺らいだ態勢を立て直すのに必死だった。
敵国がソーディアースを狙う中、国を守る為にソーディアース軍のナイトはある層念による術、念法を開発した。
それが、「念晶」だ。
念晶は、人間の持つ層念を物体に造り換え、その能力と形状を記憶して海馬に保存する念法で、ナイトの力を数倍にも高めるものだった。
層念を元に造り出された物体は、層念器と呼ばれ、危うい国勢を守る力は十分すぎる程あった。
しかし、当初は問題がまさに山積みだったらしい。
念晶を発動させるには層念の規模が相当大きい必要があり、発動出来ても海馬への保存は至難の技だった。
つまり、開発時点では実用性は無に等しかったのだ。
それでも国を守る為、ナイトは研究を重ね、ついに念晶を完成させた。
念晶によって生み出された層念器は想像を遥かに超えていて、いつしかさらなる進化を求めた。
そして、その進化こそがこの「ホルダー」なのだ。
「基本ナイトの層念器は一つ•••だがそれでは一人のナイトが対応出来る場面は限られてくる。それを克服したのが他者に層念を預け、複数の層念器を所有するという方法だった•••」
「それからはソーディアースはシンゼリアのサム制を採用•••二人から三人のチームを組むのが主流になったね」
ハルとカルトがそんな具合で説明を終え、同時にハルは筆を置いた。
「とはいえ層念器を使えるナイトはそう多くないからね。例外もたくさんあるよ」
描き上げた絵を確認し、ハルが伸びをする。カルトがチラリと見ると、絵は荒野と草原の境を描いていて、遠くに古城が潜んでいた。
「••••••ハルはこれからどうするんだ?」
その時、唐突にカルトが言った。
「んー•••最近ろくに描けてないし•••少し国を離れるかな」
「そうか•••じゃあまたしばらく会えないな」
「そうなるね」
二人が何気無く言葉を交わす。が、互いに別れは言わず、それ以降は一言も発さなかった。
第二話 完
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