旅立ち
俺は目を開けると自分の部屋の天井だった。
「そっか…母さんに勝って意識を失ったんだっけ?」
それにしても…母さん強すぎだろ…あんな技を持ってるとかなんでもありだな…まだまだ俺は弱いということが分かってよかったぜ。
―――――――――コンコン
ドアがノックされた。
「入っていいよー」
「失礼します」
マイは部屋に入り、ベッドの近くに置いてあった椅子に座った。俺も布団から起き上がった。
「まずはおめでとうございます。無事に奥様は認めてくださるようですよ」
「そっか…それは良い報告だな…うわっ!?」
俺はとりあず安堵して、今後のことを考えていると急に抱き着かれ、支えきれずにベッドに倒れこんでしまった。
マイの頭は俺の胸の所にあった。
「…本当に無事でよかったです。二日も寝てて心配したんですよ…」
俺って二日も寝てたんだな…ほんとうに迷惑かけたな…
「ごめん…」
「ほん…と…ですよ…」
どうやら、泣いているようだった。悪いことをしたな…
「…私にとって、ハクヤ様がいないと…生きる意味がないんです!!」
「…ほんとうにごめん」
「うぅ…ひっく…」
俺は優しくマイを抱きしめ頭を撫でた。
「うぁぁぁぁあああああああああああああ!!!」
マイは俺の胸で大泣きし始めた。
「落ち着いたか?」
「ほんとうにすみません!!」
マイは落ち着き始めると自分の状況が理解でき、急いで俺から離れて必死に謝っていた。
そこまで、必死にならなくてもいいのにな…
「私決めましたよ」
「何を?」
「必ずハクヤ様を守り抜いて、今回のようなことは絶対にさせないということです!」
俺はその言葉を聞いて嬉しくなった。俺にここまで尽くしてくれる人がいるっていいじゃないか。
「なら、俺の背中を全力で守ってくれよ。俺もマイの背中は守ってやるからな!」
「はい!!」
「んじゃ、母さんと父さんに会いに行こうか」
「はい!」
俺はマイと手を繋ぎリビングに向かった。
リビングに行くと母さんは読書をしていて、父さんはのんびりと武器の手入れをしていた。
「おはよう母さん、父さん」
「おっ!朝からラブラブじゃないか!!」
「あららーほんとね」
どうやら、俺とマイが手を繋いでいる所に気が付いたらしい。
朝から両親からのちょっかいはイラッとくるな。まして、ラブラブ夫婦からだから余計にな!!
「ハクヤは体調は良くなったか?」
「そりゃ、2日も寝てればかなり回復するよ。ただ、あんな戦いは2度としたくないと思ったよ…」
「はっはっはっ!!そうだろうな!俺もレミリアと戦うのはごめんだな!!!」
父さんが愉快そうに笑いながら俺の言葉を肯定していた。つうか、あんたの嫁ならもうちょっとオブラートに包んで言えよ…
「考えてみろ。あんな鎧を着られて、かなりの速度で迫り、斬られる所を想像してみろ…あとは分かるだろ?」
「あぁ…」
父さんの言いたいことは分かるぞ。正直めっちゃ怖い!!あの時の母さんの表情は狂気的な笑みをうかべてるしな…
「ちょっと!!私がいる前でなんてことを言うのよ!」
「すまんすまん」
父さんが笑いながら謝っている…あれはちっとも反省していないな。
「はぁ…もういいわ。それで、ハクヤの事だけど…」
「それで、どうなったの?」
「マイから聞いていると思うけど、文句なしの合格よ。それとね、今のハクヤならSランクは余裕であるわ。マイちゃんもSランクの実力はあるわ」
…え?マイもそこまで強かったの!?
「私がみっちり指導したから当たり前でしょ。ハクヤは独学でこの実力は正直すごすぎるわ」
まぁ…転生チートのお陰ですけど…。
「だから、今日から1週間で冒険者に必要な知識とか野営の仕方とか教えるわ。だから、しっかり覚えなさい!」
「「はい!!」」
あれから1週間が経ちあっという間に旅立ちの時を迎えた。
「…ハクヤ」
母さんの目にはうっすら涙が浮かんでる。
「…ほんとうに10年は早いわ…」
「母さん…ありがとう。次にこの村に来るときは立派な冒険者になって、強い仲間も連れてくるよ」
「ふふ…約束よ。それと、これを次に行く街のギルドマスターに見せなさい。役に立つからね」
母さんは手紙を俺に渡すと優しく抱きしめて、俺の頭を撫でてくれた。
「あっという間に大きくなって…まったく…」
母さんは満足したのか俺から離れた。
「ちゃんとご飯を食べるのよ。辛くなったらいつでも帰ってきてもいいからね」
「うん!それじゃ、行ってくるね!」
「えぇ!!マイちゃんもハクヤのことお願いね」
「はい!5年間大変お世話になりました!!」
「なら、頑張ってきなさい!!」
俺は母さんの温かい言葉に安心しながら旅が始まった。
―――――――ハクヤが旅立ったあとのレミリア
「行っちゃったわね…」
「ん?ハクヤは旅立ったのか?」
「えぇ…大丈夫かしら…」
「あいつなら大丈夫だ!!それに次に会うときは立派な冒険者になっているさ!」
「…そうね!」
「なら、今日は二人で近くの街まで出かけるか?」
「ふふ、たまには良いわね。なら行きますか!」
「おう!!」
二人は仲良く手を繋ぎハクヤとは反対方向の街に行った。
感想・評価お願いします!!作者が豆腐メンタルなので、意外と評価が気になるんだよ…orz