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1.0 『出会いは劇的――悲劇的』

 高々とした木が、視界の果てまで等間隔に連なっていた。

 地面から生え出てきた木の幹の部分からは、多くの枝が生え出し、葉を茂らせ、そしてそこから生い茂った葉が、地面に降り注ぐはずの太陽の光を遮っていた。

 地面に当たっている微かな光は、どれもこれも木洩れ日ばかりである。

 しかし、それがかえってこの空間に存在している神秘的な雰囲気を、より一層引き立てていた。


 そこは深い森の中だった。


 足元には自然色の緑色や茶色、木々の隙間から漏れている光は黄色や橙色、目に映るそれら全てが、小さな視界を覆いつくし、耳元には静かで流れるような風の音が届いていた。

 神秘的というより、むしろ幻想的。

 そんな現実とは隔離されてしまっているようなこの場所に、一人で立っていた。

 木漏れ日や冷たく心地良い風をその身一杯に受け、不思議な気分に包まれながら、センチメンタルな気分の中で、

 ミズノは――


 モンスターに遭遇した。


 ……モンスターに、遭遇した?

 なぜ疑問系なのかは、ミズノ自身『あれ』が果たしてモンスターなのかどうなのか、いまいちよくわかってないからである。

 全長は……三メートルくらいはあるだろうか。

 四本足で茶色の肌、頭から二本の角を生やし、鋭い牙も目立っている。その姿はまさに牛――いや猪か。

 ふーん。

 ……いやいや大丈夫、まだ慌てる時間じゃないよ。

 さて問題は、ここでこうして牛だか猪だか見分けのつかない謎の生き物と『目が合ってしまっている』というところにある。

 ミズノ、一般人、全長一メートル七十五センチ(ちょっとサバ読み)

 謎の生き物、全長三メートル(巨大角付き)

 ……大丈夫、全然余裕、全く問題ない。……?何が問題ないのかって?知るか。

 現在地点から謎の――(以下猪)との距離は、少なく見積もってもまだ五十メートルは離れている。

 全然余裕だ、余裕で逃げ切れる。なにせ五十メートルも離れているのだ。余裕だよ余裕。


 ……あれ?確か猪って、時速五十キロとかで走るんじゃなかったか?


 こういうときに目線は外したほうがいいのかどうかなど分かるはずもなく……。

 ミズノは、猪と視線を絡ませたままその場からジリジリと後退し――


 不意に猪が動いた。

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