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俺、仲間と狩りに出る

『おめでとうございます! レベルが3にあがりました!』


 俺はチュートリアルクエストを終えて、簡単な退治クエストを一通り受けながらレベルアップを図っていた。

 最初のダンジョンでボスの巨大クモを必死に倒したころには時間は十一時をまわっていた。


 そろそろ立川からフレンド申請が来てもおかしくない時間なのにな。まぁ彼女は時間を明言していないからな。ただ「申請するから大丈夫」とだけ言って物事を終わらせるなんてびっくりだ。


 それより、よく考えてみれば立川彩子とまともに会話することは今までなかったような気がする。


 立川は砂川と同じくチャラチャラしてるから、同系統の人ばかりとしか絡まない。そこで教室の隅っこで大人しくしている俺が気軽に話しかけられるほど仲良くはない。さっきも言ったとおり、砂川と一緒にいるから少し話してもらえるようなものだ。


『お知らせ。あやぴょん☆さんからフレンド申請が来ました』


 お、やっとフレンド申請が来たようだ。深夜の二時くらいに来なくて一安心だ。

 はい、申請を拒否……じゃなくて承認ね。


『あやぴょん☆さんとフレンドになりました』


 今気づいたのだが、☆まで正式名称だったのか。まぁすごくどうでもいい情報だけどな。


『やっほ』


 そんなチャットがどこからともなく現れた。差出人はお察しのとおり、立川(あやぴょん☆)である。


『どうも、こんばんわ』


 俺はなぜか丁寧に返してしまった。相手は立川だという事が確定しているのだが、やはり違う人なんじゃないかという不安が残ってしまう。


『なんでそんな堅い挨拶から始まるんだよw』


 やはりツッコミを入れられた。そして「w」とはなんだ。ダブルか。二倍にするのか。倍返しという意味か。


『今どこにいるの?』


 「w」についてはあとで自分で調べておこう。


『えーと、自宅です』

『リアルじゃねぇよ!』


 あ、ゲーム内でか。つい自宅と答えてしまった俺は全くのドジっ娘だな。


『ダイアダンジョンの入り口にいます』


 俺は死闘を繰り広げていたのでダンジョンの入り口で休憩していた。休憩を使うと体力が自然に回復するらしい。


『とりあえずフィミリアシティの大広場まで来てー。あと敬語禁止』

『了解です、じゃなくて了解』


 どうしても初対面の人だと思い込んでしまって敬語になってしまう。チャラチャラした立川から見れば不快極まりないのだろうか。


 今の会話に出てきたフィミリアシティはここから一番近い街で、そこから俺のプレイが始まった。軍隊の施設がフィミリアシティのど真ん中にあるらしい。それ以外には武器屋、道具屋、治療所などの基本施設や、大きい噴水がある大広場などプレイヤー同士が使う憩いの場がある。

 さて、体力もそれなりに回復したから向かうとしますか。



 大広場に行くと、何人かプレイヤーがのんびりと過ごしていた。基本無反応でボーっとしてるプレイヤーが普通だが、ちらほらチャットは飛び交っていた。


 チャットの内容は、武器のあれこれやモンスターの倒し方あれこれなど、初心者が色々教わっているみたいだった。

 俺も立川に色々教えてもらえると、妹を救える日がギュッと縮まってくるだろう。


 そんな事を思ってたら遠くから頭上に「あやぴょん☆」とかいう恥ずかしい名前を掲げたまま走ってきてる女がいた。


「あら、ゲーム内でも地味ね」


 開口一番がこれかよ。


 リアルでの立川は世間一般でいうギャルな感じで高いファッションセンスを持ち合わしているので何かと俺を地味だ地味だと言って来る。


 しかし確かにあやぴょん(面倒なので☆は今後略す)の格好を見ると、なんかキラキラした服を着ていて、かわいいスカートなんか履いちゃっている。果たしてこれで戦場に出向いて大丈夫か、と言われれば肯定は出来ない。


 対して俺は初期装備の灰色の鎧のままで地味極まりなかった。装備はどうすればいいのかイマイチわからなかったからこのままにしておいただけだが。


「キャンペーンでもらった期間限定の服は着ないの?」

「一応あるよ。あなたとは違う物だけど。でも服より鎧の方が強そうだから」

「防御を捨ててこそのファッションでしょうが!」


 そんな言葉、初めて聴いたぞ。とても滑稽な名言だな。


「まぁ、ゲーム音痴なケンタ君にはそっちの方がいいか」


 なんか妙な妥協をされて、ちょっとイラっときた。やはりチャラチャラしてる人はあまり好かない。


 確かに期間限定でもらえる服は、初期装備の鎧より防御力が「2」も低いのだ。高いのか低いのかわからないけど、とりあえず鎧を選ぶのが常識人だろう。


「じゃあ今日はケンタ君がどれだけ戦えるのか見てやろうじゃないかっ。というわけでダイアダンジョンにレッツゴー」

「え、また戻るの」


 俺はさっきまでそのダンジョンにいたことをこの人はご存知であろうか。なんでそんな二度手間につき合わされなければいけないのかっ。

 ちなみにダイアダンジョンとはこの街から見て南西に位置していて、冒険者にとっては初めて行くダンジョンとなる。


「つべこべ言わないの!」


 俺はあやぴょんに言われるがままにさっきまで居たダイアダンジョンに戻ることになった。



 なんやかんやあってダイアダンジョンの前までやってきた。傍から見れば大きい洞窟の入り口である。

 早速中に入って、大きな岩の扉の前で立ち止まる。この扉には鍵穴があるようだが、鍵を使わなくても開くのでいつも普通に開けている。


「さて、雑魚モンスターを狩ってる姿を見ててもつまんないから、一気にボス行っちゃおうか」

「え、そんなこと出来るのか」


 ダンジョンは地道に奥へと進んでいくしか方法がないと思っていた。


「そんなことも知らないのかー。ダメな男ねー」


 クソ、バカにされっぱなしで悲しくなってくるぞ。現実でもゲーム内でも俺は下の立場がお似合いなのか!


「これ、『勇者の鍵』って言うの。これを使えば扉の向こうにはいきなりボス部屋が用意されてるってわけ」


 あやぴょんは俺がさっき言っていた鍵穴に勇者の鍵を差し込む。そして岩の扉を開けると、予告どおりそこはボス部屋だった。

 あんなに苦労してたどり着いたこの部屋にこう簡単に着いてしまうと、とても釈然としないな。


「さぁ、あの巨大クモをやっつけてちょうだい!」


 アンタは戦隊ヒーロー物に出てくる子分たちに命令する悪役か!


「ちなみに武器は?」

「一応長剣にしてみました」

「ふーん、ベタすぎてつまらない男だね」


 センスまでバカにしてきたぞこの人は! キルニャさん(NPC)を想って俺はこの長剣を選んだんだぞ!


「そういうあなたは?」

「聞いて驚け、見て驚け。あやぴょんの武器は双銃だー!」


 あやぴょんはそう言いながらどこからか銃を両手に取り出して指でクルクル回していた。


「なかなかかっこいいな」

「でしょー。センス感じるっしょー」


 いや、そこまでセンスは感じないな。ちなみに絶対今の言葉はチャットしないぞ。


「とりあえずその長剣で倒してみなさいよー、早くー」

「わかったよ」


 俺は長剣を構えるとそのまま巨大クモの元へと走り出した。さっきまでずっと戦っていたんだから恐れるような敵ではない。


 まずは頭にジャンプ縦振りで一発。

 ズシャア!

 着地してすぐに腹に横振りで一発。

 ズシャア!

 そしてここで攻撃が来るので回避。

 ……。

 あ、ボタン間違えた。

 バシーン


「ぎゃあああああああ」


 俺は回避のボタンを間違えたため、もろにクモの攻撃を喰らって吹き飛ばされた。


「うわー、だっさ」


 あやぴょんの心ない言葉が俺に突き刺さる。俺のライフは残り少ないから言葉責めでとどめをさすのはやめて!


「仕方ないわね。じゃあ私が倒しちゃうわよ」


 あやぴょんが双銃をまっすぐ敵に向かって構えた。こんな遠くから正確に狙えるのか、間違って俺を撃つことだけは避けて欲しい。


 パーン、パーン


 双銃だからなのか、左右一発ずつ放たれた。そして一瞬だけ弾道が見えたのだが、すごかった。

 二発の弾道は互いに違う方向に進んでいるため、途中で衝突してしまった。しかしなぜかそこで一発の弾と変化してそのままクモの頭にぶち込まれていった。

 クモがなんとも表し難い悲鳴を上げながら倒れてた。


「……一発で倒しただと?」

「これくらいの雑魚ボスなら余裕っしょ」


 あやぴょんさん、超かっこいいです。


「まぁ、アンタの実力がなんとなくわかったからダンジョン出ようか」


 確実に過小評価されてるな。次の機会で挽回するとしよう。

 俺たちは巨大クモを倒したことで奥の扉を開けることが出来る。そこを開けるとダンジョンの裏側に出れて、すぐにダンジョン入口に戻れる。


「さて、次はどうしようか」

「あの、一つ聞きたいことあるんだけど」


 俺はようやく妹救出に繋がる手がかりについて情報収集することにした。


「このゲームって対人戦が出来るんだよね?」

「うん、毎週土曜日の夜にヴァルハイっていう大きい街で大会があるらしいよ」


 ふむふむ、だとすると理穂も毎回その大会に参加している可能性が高いのか。これはその大会に行って、理穂を探した方が良さそうだな。


「そのヴァルハイって遠いのか?」

「まぁけっこう遠いね。それに行く途中で一定のレベルがないと通れないゲ

ートがあるって聞いたな」


 そんなに危ない場所通らないといけないのか。ネット上で妹に会うのはこんなに遠い道のりなのか……現実では隣の部屋にいるのになぁ、もどかしい。


「それってレベルどれくらいあれば通れる?」

「確か10だったかな。アタシはギリ通れないわね」


 俺のレベルは3、ある程度の時間をかけてのレベル3だ。俺の脳内で導き出した計算上、きっとこれからレベルは上がりにくくなるだろう。

 ならばレベル10の達成はいつ頃になるだろう。なにがともあれペースアップせざるを得ないな。


「できるだけ早く、ヴァルハイに行く必要があるんだ」

「まぁ行ってみたいと言われれば行ってみたいね。いろんな施設があるらしいし、楽しみだね」

「俺のレベルを上げるのを、サポートしてくれないか?」


 俺は文脈を無視して急にそう言った。勝手に言葉になって出てしまった。何かムキになっていたのかもしれない。


「な、何よ急に。サポートくらいしてあげるわよ」

「悪いが俺は本気だ。本気でレベルを上げなければいけないんだ」

「……え? どうしたの?」

「お願いだ。教えてくれ。レベル上げる方法を」

「……わかったわ。みっちり教え込んであげるから、街に戻るよ」


 こうして俺たちは街へと戻った。


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