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One Love ラプソディー  作者: 五十嵐。
最終章 生きること、それは人とのしがらみを解くこと。
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第二話 父との距離 1

つなぎの話です。短めです。

 その日の夕食は私が作ろうと思っていたが、帰宅するともうすでに光司の手で仕上がっていた。

 久しぶりに四人が顔をそろえる。


 私は、河口湖ホテルでのバイト生活の感想を述べ、明日の夜は桐野の父のところへ泊ると報告した。

「やっぱ、由紀乃ちゃんはお父さんと一緒に暮らすことになるのかな」

 孝江がため息交じりにそうつぶやいた。

「あ、まだ、そういう事は話し合っていません。でもたぶん、明日話すと思います。祖父母もそう考えていたので」

 チラリと竜介を見た。

 平気そうな顔をしているが、目をそらしているから、そんな話はしたくないと思っているらしかった。


「そうしたら、由紀乃ちゃん、出て行っちゃうんだね。もうキャラ弁、作っても喜んでくれるひとがいなくなる」

と光司が大げさに悲痛な声をあげた。

 竜介がそれを鼻で笑う。

「そんなもん、オレが食ってやるっ」

 途端に光司は嫌な顔をした。

「竜介はいつも質より量だろう。どうせまた、食べてこないことになる」

 今度は否定的。

「ああ、やだやだ。だから、この家には女の子が必要なんだよね。こんなくだらないことを言ってるむさくるしいのが二人、ここに残されるなんて・・・・」


 今度は、竜介までが嫌な顔をした。むさくるしいってなんだよ、とブツブツ口ごもって言っていた。

「あ、本当にどうなるかわかりませんから。今の父のところは病院の職員のアパートらしいし、父と顔を合わせられる時間がどれだけあるのか、話し合ってみないとわからないんです」

 孝江が、にっこりと笑った。

「まあ、そうだね。いろいろ考えてもしかたがない。うちは由紀乃ちゃん次第だよ。お父さんのところへ行くんならそれでいいし、もちろん、このままでもいい。もし、出ていくんなら遊びに来て、竜介のためじゃなくて私のために」

「なんだよ、それっ」

 竜介が苦笑いしていた。

「一つ、良かったことがある。由紀乃ちゃんがこんな竜介とつきあいはじめたってこと。これでつながっていられるから、またここへ来るよね」

「もう、叔母ちゃん、こんな竜介って、どんな竜介なんだよっ」

 光司はげらげら笑っていた。文句を言いながら、渋面を作る竜介。


 私も複雑な思いがある。竜介も同じなのかもしれない。


 翌日、私は少し早めに起きて、竜介が剣道の練習に行くのを見送った。そして、スーパーマーケットが開くのを待ち、牛丼用の買い物をする。今夜は父のところで牛丼を作る予定でいた。

 たぶん、調味料もそろっているとは思うが、一応、牛丼のタレを作って持っていくことにした。

 漬物は、祖母に持たされたものがあり、みそ汁と酢の物も作るつもりで用意した。

 あとは、一泊用の着替えをカバンに詰める。そして、父のために買ったお土産もあった。


 ここを三時ごろ出て行けばいい。途中、電車を乗り換えなけれがならないから、その待ち合わせの時間、そしてちょっと道に迷う予定の時間も考えていた。

 その予定を一応、父にメールしておく。父は夕べ病院へ泊ったそうで、午前中には帰っているはずだ。寝ているかもしれない。なるべく、ゆっくり行くつもりでいた。

 襖を開けると竜介がいた。

 いつものようにゲームをしていた。一瞬、彼の目が私の荷物を見た。


「行くのか」

「うん、行ってくる」

 竜介は画面を見ている。

「荷物、持ってやろっか」

 それは一緒に行ってくれるという意味なのだろうか。昨日も竜介は私につきあって、病院へ行ってくれた。そんなに甘えてはいけないと思う。

「大丈夫。そんなに重くないし、明日の朝、父が出勤するときに一緒に出て、帰ってくるつもり」

「そう・・・・か。わかった。じゃ、明日な」


「うん、どうもありがと」

「おう」



 電車の乗り換えは、ちょっと待っただけで思ったよりもスムーズに乗れた。でも、もしも父のところから竜介のところまで行くとしたら、かなり距離感を感じるかもしれない。こんな日中の時間だから、それほど混雑もないが、朝や夕方はどうなんだろう。そういうことも気になった。

 改札口から出ると、その目の前に父が待っていた。

「あっ」

 すぐさま私の荷物を持ってくれる。

「迎えに来てくれたんですね」

「うん、あの時間に出たならもう着くかなと思ってね。散歩がてらに出てきたんだけど」

「よかった。道順は教えてもらったけど、私、絶対に迷うと思うから」

 父はくすくす笑う。

「迷いようがない道だよ。真っ直ぐだからね」


 並んで歩いた。父が急に思い出したように言う。

「あ、昨日、お土産をどうもありがとう。皆、大喜びだったよ。突然の差し入れに」

「いえ、お祖母ちゃんが持っていけっていうからです。お礼ならあっちに言ってください」

「もう電話した。改めて、ありがたいなって思ったよ。こういった気配りってされたことなかったからね」

 ああ、そうだった。父はあまり家庭に恵まれていなかった。


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