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One Love ラプソディー  作者: 五十嵐。
第六章 結果良ければすべてよし
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第四話 夏休み2

短いです。

「いいの。私も日本人だから言わなくてもわかります」

 竜介の隣へ立った。

 竜介はかなり照れくさそうな顔をしていたけど、その緩んだ目が、いいぞ、と言ってくれていることが伝わってきた。


「ん、なるほど。言わなくてもわかるのか。まあ、相手に伝わっていれば、言わなくてもいいな」

 竜介の表情をずっと見ていたらしい父がそう言った。

 私も照れくさくなった。

 その時、皆の関心をさらうようにして一際大きな花火が打ち上げられた。少しそれに見とれ、内心ほっとしていた。

 どさくさに紛れて、竜介が私の手を握ってきた。ちらりとその顔を盗み見ると知らん顔をしている。

 家族の集まりなのに。

 大胆な行動をする竜介。ドキドキもするが、そんな触れ合いを楽しんでいた。


 花火も大詰めになった頃、祖母が急にスイカ、スイカと思い出したようにつぶやき、中へ入っていった。すぐさま光司がその後を追う。手伝いをするためだとわかった。

 私も気になって振り向いていると竜介がそっと耳元で言う。

「大丈夫、光司くんに任せなさい」

 ちょっとどこかで聞いたお笑いふうに言って、私の肩に手をかけた。

 これにはずっと端の方にいる父も私達に目を向けていた。

 ちょっと調子に乗りすぎだと感じ、肩をグイッと上げて、その手を外した。

 竜介は何事もなかったかのように、その目を空に向けていた。

 ダメ元でやってみた、そんなところだろう。少し笑っている。全くもう。後で父に何か言われるかもしれない、と思う。叱られはしないと思うが、少したしなめられるかも。

 しかし、そんな他愛のないことを吹き飛ばすかのように、バタバタと光司が慌ててベランダへ出てきた。

 皆が何事かと振り返った。


「知明っ、お母さんから電話だぞ、緊急みたいだ」

 知明が一瞬、何のことかわからずきょとんとしていたが、すぐさま中へ入った。

「ずっと知明の携帯に電話していたらしい。でも出ないからこっちに電話したって」

 祖母が出て、すぐに光司に変わったらしい。もう花火どころではなくなっていた。サッシのガラス越しに見ると、電話で話す知明の顔の表情が硬い。何かあったのかもしれなかった。

 そして知明がこっちを見た。その目が父の姿を探していた。

「お父さん」

 父もそれを察してすぐに中へ入った。

 知明は、父にすがるような目で言う。

「先生、腎移植だって。今すぐ帰ってこられるかって・・・・・・」

 知明から父が電話を受け取る。


 腎移植、その言葉に緊張がはしる。竜介の握る手からも伝わってきていた。

 電話で話をしている父は一度受話器から顔を外し、知明に言った。

「知明くん、どうする? 受けるのか、それともやめるか」

 知明は決断を迫られていた。ずっとくちびるを引き締めて、神妙な顔をしていた。二、三秒、待った。

「お母さんは受けて欲しいそうだ。でも知明くんの返事次第だって」

 それでも知明はまだ決めかねているようだ。

「知明くん。移植のことは知っているね。いいことばかりじゃないってこと。それにこの腎臓は三番目だ。リスクは大きい」

 三番目ということ、孝子が小声で説明してくれた。


「死体腎は、移植希望リストに上げられている適合率の高い順から選ばれる。一番、二番目の人は今回の移植を拒絶したことになる。それで三番目の知明に番が回ってきたということ」

 ああ、なるほどと思った。でも、皆、移植を待っていたはずなのに、なぜ拒絶するのか疑問も出てくる。


「こうした移植の電話は突然だからね。特に夜中に電話がくると、はい、そうですか、ってわけにはいかないみたい。登録はしていても何回も断っているという人、結構いるよ。それに三番目、せっかく移植をしても適合率が下がるから、拒絶反応が起きやすくなる」

「え?それって」

「そういうリスクも大きいってこと」


 そうか、それで知明もすぐにとは言わないのだ。

 しかし、知明は決断したみたいだ。きっと顔を引き締めて、父に言った。

「受ける」

と叫んだ。それはもう迷わない、と自分にも言い聞かせているようだった。

 父はすぐにその意を伝え、電話を切った。

「すぐに病院へ行く。支度して」

 知明がうなづいた。

 孝江が中へ入っていった。

「そんなのどうでもいいから、すぐに行って」


 祖父が車の鍵を持ってくる。

「車で送る。東京なんて近い」

 父が破顔した。

「ありがとうございます。時間がセーブできる」 

 祖父の後に、父と知明がついていく。

 竜介が私を見た。

「オレも行く」

 私もうなづいていた。

 四人はバタバタとマンションを出ていった。

 その急な展開に、私達は少しの間、放心状態のようだった。誰もが力が抜けたかのように座り込んでいた。

 もう花火どころではなかった。テーブルの上のスイカを見つめる。


「大丈夫、手術自体はリスクは少ない。腎臓と知明しだいだね。知明の体がどれだけ新しく入ってきた腎臓を受け入れるかによる。先生もついていることだし、後は祈るだけ」

 孝江がそう言ってくれた。

「成功すればもう透析をする必要ないし、水も飲める。食事も低脂肪、低塩だけど結構普通の物が食べられるしね」

「普通に学校にも行けて、普通の生活ができるんですね」

「そう、普通の高校生になれる」


 私達には本当に普通のことでも知明には制限されていた。それが解禁となるのだ。知明もだが、お母さんにとって願ってもないことなのだろう。

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