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One Love ラプソディー  作者: 五十嵐。
第四章 人と一緒にいる意味・それは魂が磨かれる瞬間
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Kissから始まった

 観覧車から降りる。爽やかな風を受けた。

 オレ達は自然に手を繋いだ。うれしかった。思いが通じていたし、確認できたことが幸せに感じた。

 でも・・・・・・。ちょっと不安なこともある。

 オレはつぶやくように言った。


「叔母ちゃんに怒られるかな」

「えっ、なんで?」

 手を出さないと約束していたからだ。

 由紀乃はきょとんとしていた。

「だって、言われたろっ。オレ達を信用しているって」

「ああ」

 由紀乃も思い出した様子だった。しかし、すぐに破顔一笑した。

「キスまでならいいんじゃない? 私、孝江さんにキスしたって言う。つきあうってことも報告するべきだと思うから。私からキスしようって言ったんだし、竜介くんが心配することない、怒られるんだったら私の方」


 そう由紀乃に言われて少しは気が楽になった。

 まあ、キスって言っても映画で見るような恋人どおしのキスには程遠かったけど。

 一応、オレは身内だから、叱られることより気恥ずかしい気持ちの方がいっぱいだった。でもたぶん、家ではキスはしない。ただの同居人として接するつもりだ。絶対に由紀乃を大事にするつもりでいる。例え、由紀乃が襲ってきたとしても手は出さない。

 

 由紀乃のおじいさんが五時ごろに迎えにきてくれることになっていた。オレ達はお土産を買うことにした。

 富士山やかわいいストラップを知明、そしてそれぞれの友達に買った。孝江と光司には信玄もちを買った。

「竜介くんのお父さんたちにもお餅を買う?」


 一瞬、迷った。父と母は食べ物でもいいが、知明の前では絶対に食べないと思った。

「だめだ、あっちの家だと食べ物はよくない。何か飾る物の方がいいかも」

 さっと見回すときれいな富士山の写真が目に入った。ものすごいパワーを秘めているように感じられた。これで少しはあの母も癒されるかもしれない。

 由紀乃が不思議そうな顔をしている。知明のことをもう少し詳しく話す必要があった。


「知明、食事制限がある。だから、あっちの家、みんなが知明に合わせてメニューを考えているんだって」

「あ、そっか。食べられないものってたくさんあるんだよね」

「そう、水分制限が厳しいんだ。知明は少しおしっこが出るからその分は飲んでもいいらしいけど、全然でない人は飲めないらしい。薬を飲む時の水しか取れないし、生野菜、生の果物もだめ。肉も野菜もすべて一度茹でこぼしてからじゃないと食べられない」


「茹でこぼす?」

「うん、基本的に生野菜にはカリウムっていうものが入っていて、それをたくさん食べてしまうと排出できない知明たちは大変なことになるらしい。だから、一度茹でて、その茹で汁を捨てる」

「ああ、だから茹でこぼすっていうのね」


「今、透析患者用の食品も売ってるらしいけど、たぶん母が頑張る」

「さすが」

 そう、母は自分も水分を制限し、知明と同じものを食べているらしい。父は昼、外食したりしてハメを外せるからいいとして、父が母のことを心配していた。ちょっと厳しすぎるからって。

「なんでも普通に食べられるって幸せなんだ。知明くんが私達に身をもってそれを教えてくれているんだね。感謝しなきゃ」

「うん」

 本当にそうだった。好き嫌いなんて言ってる場合じゃない。

 あいつのことだ、簡単には弱音は吐かない。それがたまりすぎないころに、そのつらいということを吐き出させる必要があると考えていた。


 知明とオレは双子なのに、なぜこうして離れてくらしているのだろう。そして他人のはずの由紀乃と暮らすことになっている。

 叔母は一度、前世がね、と口ごもって言ったことがあった。オレ達なんかやらかしたのか。


 オレ達がランドを出ると、その駐車場でおじいさんが待っていてくれた。おばあさんも乗っていた。

「帰りにほうとうを食べていこうってことになったの」

「あ、そっか」

 由紀乃がオレを見た。

「ほうとう?」

 オレには見当もつかない。なんだろう。

「甲州名物のほうとうよ」


 ほうとうという食べ物はオレのデータにはなかった。

 昔の囲炉裏端で使うあんな感じの鉄鍋に、野菜ときしめん風のうどんが入っていた。その汁はみそ仕立てでトロリとしている。

 その量は多く見え、こんなの一人で完食できるかと思ったが、案外すんなりと胃袋に収まっていた。

 由紀乃はあと少しというところでギブアップの様子。さっとオレ達はお互いの鍋を交換した。由紀乃の食べきれない分を澄ました顔で食べるオレ。なんとなく気恥ずかしかった。由紀乃のおじいさんとおばあさんはきっと気づいていただろうが、知らん顔をしてくれていた。


 おじいさんたちのマンションは新しくて広い。五階のベランダに出ると目の前に大きい富士山がそびえたつ。その迫力はすごかった。

 オレはおじいさんと一緒に寝てもいいといったが、いびきをかくからと、奥の座敷に布団を敷いてくれた。由紀乃はおばあさんと居間へ寝る。

 明日の朝、オレはおじいさんと河口湖へ釣りに行くことになっていた。釣りなんて初めてだから少し興奮していた。


 ふと静かな空間の中、居間の方からぼそぼそと声を押し殺したような声がする。きっと由紀乃とおばあさんが話しているんだろう。あの手紙のことだろうと思った。

 桐野先生はなんて書いてきたのだろうか。オレも気になるところだった。 明日になっても由紀乃が何も話してこなかったら、そっとしておいてやろうと思っている。人に言えないということは自分の心の整理がついていないということだ。それをもし、オレがどうなったなんて興味本位で聞いたら心をかき乱されたような気になるだろうし。


 由紀乃のことを考えていたはずだった。しかし、いつの間にかオレと母との問題に入れ替わっていた。

 母親からにらまれ、鬼のような顔でののしられるということは子供にとってつらい。それはオレが母を嫌うことで心の傷を和らげていた。オレはあの人が嫌いだ、だから何を言われても別に何ともないという態度をとるだけで受ける傷も半減したように思えた。


 十二時前に寝入るなんて、今までオレの生活からは考えられなかったけど、今朝早く起きて電車に揺られ、富士ランドでは遊びまくった。そして、ずっと心に秘めていた想いを由紀乃に打ち明け、受け入れられた。

 体の疲労と心の安堵感で、オレは寝返りを打つこともなくストンと寝入っていた。


 翌朝、由紀乃に起こされ、わざわざ作ってくれたおにぎりと味噌汁の入ったポットを持たされた。ぼうとしたままで由紀乃のおじいさんと釣りに出かけた。

 釣れるかどうかは別だ。楽しめればいい。

信玄餅は小さな包みに入ったきな粉餅で、黒蜜が入っています。山梨では定番のお土産でもあり、現地の人もお茶菓子として食べています。

私も帰郷すると必ず買うお菓子です。


ほうとうもおいしいです。野菜たっぷりで、古民家風のお食事処が多いでしょうか。私は食べに行くよりも味噌付の生ほうとうを買ってきて作ります。


富士ランド、富士急ハイランドですが、ここで二人が乗る「ええじゃないか」はいろいろ乗った中でも充分楽しめるアトラクションです。

以前私が「フジヤマ」に乗った時、その列の前に家族連れがいました。父親がジェットコースターが好きらしく、母親とその娘さんが不安そうに尋ねていました。本当に怖くない?と。お父さんは涼しい顔で答えました。「大丈夫、平気」

私は大丈夫かなと思いました。その「フジヤマ」は一度はギネスに載るほどの高所から降りるし、すごいスピードなのです。案の定、そのお父さん、降りた後、女性二人にいろいろ言われていました。つぎに「ええじゃないか」の列に並んだ時はそのお父さんは一人でした。

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