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One Love ラプソディー  作者: 五十嵐。
第四章 人と一緒にいる意味・それは魂が磨かれる瞬間
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Kiss から始めよう2

 手を引っ張られるようにして、観覧車の乗り場へ行ってみると結構並んでいた。家族連れの列とカップル同士の列にわかれていた。

 家族連れの方はすいすいと列が進み、見る間に短くなっていくが、カップルの方はなかなか進まなかった。

 由紀乃はオレの疑問をすぐに解消してくれた。

 

「こっちの列はシースルー(透明)なの。しかも二人乗り」

「えっ」

 なるほど。よく見ると色分けしてあるワゴンの中、四台に一つが透明なワゴンになっていた。だからなかなか進まないのだ。

 オレ達の後ろにももう既に三、四組が並んでいた。中には女の子同士もいるが、ほぼ九十パーセントはカップルだった。


「これ、前に乗ったことあるのか」

と聞く。

 これだけここに馴染んでいる由紀乃だ。もしかすると以前に、前のボーイフレンドと一緒に来たことがあったのかもしれない。そうはっきりと聞くことができないから、そういう聞き方となった。

「ううん、このシースルーはなし。あっちのはおばあちゃんとか友達と一緒に乗ったことあるけど」


 ゆっくりとしたペースで動く観覧車だから、かなり待つ。しかし、周りは全く構わない様子で、二人きりの世界に入り込んでいるようだった。皆、手を繋いだり、腕を組んでイチャイチャしていた。

 いよいよ乗り込む。

 中は由紀乃が言った通り、二人だけの席になっている。シースルーだから足元から地上が見えた。

 これは思ったよりもすごい。高所恐怖症の人は無理だろう。

 由紀乃ははしゃいでいた。富士山も目の前に一望できるし、この辺りの地域がよく見えた。


 オレはそんな中、ものすごい決心していた。こんなチャンス、滅多にない。二人きりなのだ。下へ降りるまで誰にも邪魔されない。

 告白しようとしていた。もし、由紀乃が少しでも戸惑いを見せたら、待つつもりだった。前の彼氏との交際に疲れているかもしれない。まだ少し未練があるかもしれなかった。それでもいい。オレは待つ。由紀乃がそれを知っていてくれればいいのだ。


 観覧車はかなり上まで登っていた。下を見るとなんだか足元からぞくぞくしてきた。

 興奮状態だ。決意していた。ごくりと唾を飲み込み、由紀乃を真剣な目で見つめて言った。


「由紀乃」

 ずっと下を眺めていた由紀乃がオレを振り返った。その真剣さに彼女も顔を引き締めた。

「好きだ。初めて会った時からかもしれない。好きだ。今すぐじゃなくてもいいから、お前の心が落ち着いたら・・・・・・つきあってください」

 緊張しながらもなんとか言えた。

 ほうっと息を吐き、今度は由紀乃の反応を見た。


 由紀乃はじっとオレを見つめていた。すぐに輝くような笑みにかわった。

「うれしい。私も竜介くんのこと、最初から好きだったと思う」

 その言葉に安心する。よかった。両想いだった。

「でもさ、なんで今すぐじゃなくてもいいわけ?」

と突っ込んでくる。

「え、だってさ、お前。彼氏と別れたばかりだろう。少し間を置いた方がいいのかなって」


 由紀乃が黒眼を上に向け、冗談じゃないという表現をする。

「私はもう豊和のことなんて全く気にしていないの。あの人のことはもうおしまいです。もう言わないで」

 結構強い調子で言われた。少し気おくれしてしまう。


「ねっ待つことない。今すぐ、彼女にして」

「え、今すぐ?」

「そう、そしてこの観覧車がてっぺんに登った時、キスしよっ」

「えっ」

 オレの聞き間違いかと思った。

 キスしようって聞こえたぞ。

 オレがあっけにとられていたからなのか、由紀乃はもう一度繰り返した。


「ね、このてっぺんでキスしよう。私達、手も繋いでいるし、あちこち一緒に行ってるし、デートらしいデートってしてるでしょ。だから、キスから始めようよ。ねっ」

 由紀乃の大胆な発言には驚かされるが、それも一理あった。こんな雰囲気の絶好のチャンスだし。


 オレはちょっと目をそらし、言おうか言わないでいようか迷っていたことを思い切って言った。

「言っとくけどな、オレ、それをするのって初めてなんだ。ドキドキしてる」

 由紀乃はちょっと驚いた顔を見せた。

「うん、大丈夫。私だってドキドキしてる。ホントだよ」

 ワゴンは頂上に登ったようだった。


 オレは手を握り、顔を近づけた。由紀乃は目を閉じている。

 こういう時、男まで目を閉じたら成り立たないなんて変なことを考える。由紀乃のちょっと震える瞼を見つめながら、ピンク色に光っているくちびるにオレは自分のくちびるをちょこっと押し付けた。


 これで満足だと言わんばかりに、由紀乃は嬉しそうにして目を開けた。

 ずっと由紀乃のペースに乗せられているから、ちょっとだけオレも男だという所を見せてやろうと思っていた。

 肩を抱いて引き寄せた。キャッとわずかに声を上げて、簡単に由紀乃はオレの腕の中に入ってきた。いわゆるハグみたいなものだけど、お互いの体温を感じながら、由紀乃も何も言わないでずっとそのままでいた。

 幸せなひと時だった。

ご無沙汰しておりました。すみません。

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