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異世界転生、異世界召喚どちらも使い古されたテンプレ。
それにつきものなのが、神様のミス、神様の楽しみのため、世界を救う者として……それはそれは馬鹿げたチート能力。
さらに、美形なのはもちろんとして、男性なら「にこぽ」「なでぽ」に始まるハーレムに、女性なら「巻き込まれ」「溺愛」といったトラブルメーカー的逆ハーレム。
……どっちにしても、あまりいいことじゃない。
目の前で神官である次兄に連れられて、父である国王に謁見している「神により召喚された勇者と巫女」という、やたら目立つ……見目麗しい顔立ちの兄妹を見ながら、私はそう考えていた。
私は、カトリーヌ・ブランシェ・ド・リュミエール。現在19歳。
ヒューケンハイト大陸の光の王国と言われる、ここリュミエール王国の第一王女。
うん、実は私もいわゆる転生者というものだ。
元は生粋の日本人だったけれど、たぶん地球の時間では去年の末頃に交通事故で死んだ。
ああ、面白いことにこっちのジアース(仮)と地球の時間の流れは違うらしい。
こちらでは20年近い歳月が流れているのに、地球ではまだ一月もたっていないとは。
2chを見たときに日付に気がついて、呆然としたし。
そして、別に神様に会ってもいないし、チート能力は特に……ああ、保有魔力量だけは常人の10~20倍くらいあるらしい。
だが、実際の魔法の行使には適性がなくて全く使えない。
その上、保有魔力を利用する便利なマジックアイテムのようなものなど、この世界には無いので折角のチート能力も生かすこともできないという、ある意味悲しみに包まれる才能の無駄遣いである。
まあ、現代日本の(半端に偏った)記憶があって、それを内政に利用してるくらい。
最近手に入れたアーティファクト(地球から迷い込んだ物はこう呼ばれるのだ)のPC……いや、インターネット? のおかげで、加速度的に仕事が楽になっているのは否めないが。
なにせ、 精神年齢だけなら、通年で50歳をずいぶん前に過ぎているので。
そういうわけで、年齢よりも落ち着いた物腰と冷静さゆえに「氷の賢姫」などという厨二病的な異名を持っていたりする。
王位継承権は兄二人に継いで、第3位。
しかし、数年前に起きた国境の争いで、長兄を命がけで護衛した近衛騎士のクラウス(侯爵、25歳。若くして近衛騎士になるくらいなので腕も立つ上にそこそこ美形)たっての願いにより王位継承権を放棄し、臣下として20歳の誕生日にその彼に降嫁が決まっている。
国政の一部を知る私を他国に嫁には出せないから仕方ないし、相手がイケメンだからまあいいかとは思っている。
ただ、厨二な異名をとっていて、父に請われて国政に口をしばしば出すのが長兄が気に入らないから、適当なのとくっつけようとしたのではと思うのは考えすぎだろうか。実際、私は側室腹でもあるし。
第一と付くくらいだから、妹は2人いる。
この二人は私とは腹違いだが、二人の母は正妃であるジゼル様なので容姿はとても似ている。
私の隣りにいるのが2つ年下のセリアーヌで、その隣りにいるのが4つ年下のリリアーヌ。
セリアーヌは、いわゆる金髪碧眼の人形のように可憐な少女だ。
少し天然が入っていておっとりしている性格と、ジゼル様譲りの美しいサファイアのような青い瞳。
仏頂面の私と違って、いつもニコニコと微笑んでいるので国民の人気も高い。
刺繍や縫い物、着飾ることが好きで、政治がらみの話はわからないし難しい話は嫌い。
姉妹の仲では一番お姫様らしいお姫様だと思う。
結婚適齢にも近いため、近隣諸国からのアプローチも多くて、返事にいつも困っているらしいし。
そしてリリアーヌも、まさに天使というべき容姿を持っている。
セリアーヌと違うのは瞳の色がこちらは父親譲りのエメラルドのような瞳であることと、趣味。
彼女は乗馬と剣術が好きで、女の子らしいといわれる刺繍や縫い物、着飾ることは苦手としている。
性格は素直で無邪気。少々お転婆がすぎるくらいだが、年の割に公私を分ける意味をきちんと理解しているので、今は普段はほとんど着ないドレスを着ておとなしくしている。
きっともう少しすれば、セリアーヌのように引く手数多になることだろう。
でも、そんな妹達の視線は、召喚されてきたという異界の「勇者」に釘付けだ。
うっとりとした表情で、頬をバラ色に染めながら熱い視線を送っている。
ありえない。
惚れっぽいセリアーヌはともかく、初恋すらしていなかったリリアーヌまでこんな表情をするなんて。
ふと、視線を父の隣に立っていた長兄に移すとそちらもありえない状況に愕然とした。
長兄……シャルル、22歳。王位継承権第一位、王太子殿下。
先の妹2人と同じ正妃のジゼル様の子で、セリアーヌと同じ金髪碧眼。
並ぶと良く似ていて、ああ遺伝子がいい仕事したんだなと思える。
転生前に王子様と言うと想像していた、長い金髪の端正な顔立ちのイケメン。
美形! カッコイイ! 甘い顔! そんな感じ。
言葉が薄っぺらくて申し訳ないが、自分に文才がないのでそれ以上の説明の仕様がないのだ。
もっと文才があれば、正確に伝えられるのだが……残念だ。
とにかく、その長兄が「巫女」に熱い視線を送っているのである。
ひとめぼれ?
なんにしろ、これは由々しき事態だ。
……しかし、これはあくまでも始まりに過ぎなかったのである。