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佐竹さんちの日常  作者:
来客編
6/17

二度あることは三度ある

 時間の都合上、朱音と佐武の二人には俺と一緒にそのまま家にいくことにしてもらった。今日は金曜日なのに、何故か六時限まで授業があったしそのままのほうがゆっくり話せると思ったからだ。一回家に帰って待ち合わせしてそれからーなんてなったら時間もかかってめんどいし。まあ本来なら、一回家に帰らないと駄目なのだがそこはやむえないってことで。それにしても生活委員長が校則守らないでどうするんだよ。

 佐武はもちろん、朱音も俺の家に来るのは初めてだ。二人ともなんか知らないけど、物凄い期待しているみたいで楽しみだね、なんて話し合っている。別に対したものはないんだけどな。

 家に来る分にはいいんだが、そういや一つ問題があった。


「あーそうだ。弟妹が家で遊んでるかもしれないが、気にしないでくれ」


「佐竹って兄弟いたんだ。もしかして、一番上?」


「いや、俺は二番目。上に姉貴がいる」


「じゃあ四人兄弟なんだ? いいなあ、あたし一人っ子だから兄弟とか羨ましい」


「よかねーよ。弟は俺のこと嫌いだし、妹はアレだし姉貴は痛いし」


 俺がそういうと佐武はアレってなんだろう、と考え込む。だがあえて言わない、というか言いたくない。アイツからいつも来るのに、俺がいつも痛い目線を送られるからあんま人に知られたくないんだよな。よく考えたらうちの女共にろくなやつっていなくね? ……やべえなんか悪寒が。

 思わず後ろを振り返ってみると、誰もおず俺はふう、と息をつく。前、いないかと思って姉貴の悪口いってたら後ろにいたんだよな、いつの間にか。あの時の恐怖は忘れられない。


「活樹の弟妹って双子だったっけ?」


「おう。あんま似てないんだけどな、あの二人」


「でも下がいていいね。ボクなんて末っ子だからさ、兄ちゃんや姉ちゃんにコキ使われて……たまったもんじゃないよ」


 朱音さん、もしかしてそこでたまった鬱憤を俺にぶつけているのですか?

 家につくまで、兄弟の話で持ちきりだった。主に俺は質問される側であったけど。佐武には姉貴や妹はどんな感じなのと聞かれ、朱音には弟をコキ使いたいからくれなどという会話を繰り広げていた。家でも可哀想な位置づけだが、こういう会話でも陽介は残念な位置である。だけども同情はしないぜ、確かに陽介も可哀想に見えるが一番可哀想なのは俺だからだ。決して自画自賛などではない。

 今まで説明する機会がなかったからここで言わせてもらうと、俺んちはマンションの一室を借りている。結構高級なマンションで、部屋数が多いっちゃあ多い。だからここを借りたんだろうけど。

 家の中に入り、ただいまと声をあげる。後ろの二人はお邪魔しますと言って靴を脱ごうとすると、ドタドタと騒がしい足音が今日も聞こえてきた。今日も神林さん達がきているのだろうか。

 ガチャ、と勢いよくドアが開くと案の定、神林さんもきていたのか日向の後ろに立っていた。


「おかえり、おにい……さま? あれ、おにいさまのお友達?」


「お邪魔させていただいてます。活樹さん、こんにちは!」


「こんにちは。――えーと二人とも俺の友達で、こっちのポニーテールが五十嵐朱音、そっちのロングが佐武渚。それとこいつが俺の妹の日向で、日向の後ろにいるのが日向の友達の神林さん」


 俺にとっては佐武や朱音、神林さんがいる以外、普通どおりなので簡単に自己紹介をする。だけども、佐武は物凄くひいたような目で俺を一瞬見たが、朱音はいつも通りの笑顔を浮かべながらも挨拶をする。あれ、俺佐武になんかしたか……?


「こんちはーっす! えーと、今活樹に紹介された通り、五十嵐朱音です! 活樹とはそこそこに仲良くさせてもらっていたり。よろしく!」


「……こんにちは。あたしは佐武渚です。よろしく」


「佐竹日向っていいます! 私の活樹おにいさまがいつもお世話になっています。こちらこそ、よろしくお願いいたします!」


「神林沙月です! よろしくお願いします」


 何故か文頭の私のの強調させる日向。それにより、更に佐武は顔を引きつらせた。

 さて、みんなの自己紹介が終わったことにより、俺は二人を部屋に案内しようとするが、日向がいつものように腰に抱きついてくる。おにいさまーと変に高い声をだして甘えてくるのももはや日常であり、もうあまりなんとも思わなくなった。慣れっていうのは恐ろしい。だけど何故か佐武は先ほどのように引いたような顔を――ってあれ、さっきもこんなことあったよな。

 よくわからないまま、そのまま部屋へと向かう。部屋の前につき、俺は日向を離れさせるため頭を撫でて自分から離す。日向と神林さんはゲーム部屋へといく。俺は二人を部屋へ入るように促し、カバンを俺の机の横におくようにうと、俺もカバンかけにかける。

 そして適当に座るようにいうと朱音は俺の勉強机のイスに、佐武は朱音が座ったイスの近くの床に女座りというのだろうか、その座り方で座る。俺も佐武と適度に距離を置き、あぐらをかいて座った。


「で、昼休みの話なんだけど――」


「ちょっと待って、佐竹。なんで何事もなかったかのように普通に本題に入ってるの?」


「は? なにいってんのおまえ? 何もなかっただろ?」


「妹さんのこと! おにいさまなんて呼ばせてたの?」


 ああ、だからあんな引いたような顔を……。なるほど、合点がいった。でもやっぱり予想通り俺を責めるのね。


「アイツがそう呼び始めたんだよ。俺がそう呼ぶようにいったわけじゃねえ」


「ナギちゃん、活樹の妹がブラコンだって知らなかったんだねえ。まあボクも初めて日向ちゃんを目にしたんだけど」


 そういって朱音はくるりと回転して、イスを跨ぐように座り、背もたれのところに両腕を置きその上に顎を乗せる形で座る。こいつ、スカートを穿いてるって忘れてないか? 俺の位置からだと、パンツが見えそうで見えない。いや、別に残念とか思ってないから。

 佐武は朱音のその一言で不機嫌になったのか、ふんっと俺から顔をそらした。いや、なんで俺に怒ってるの?


「えーとまあ、妹のことはどうでもいいとして、本題に――」


「どうでもいいとかひどいよ、おにいさま!」


 その掛け声とともに、ドアが勢いよく開く。いつになったら本題入れるの? 主菜はもうきてるのに前菜ばっか食わされてる気分。

 他に後ろには陽介、神林さん、月城さんがいた。陽介はあちゃーっというような顔で片手を頭にあて、神林さんは真剣な表情で月城さんはあわてた様子でこちらをみている。

 揃いも揃って、何やってるんだか。だけども、言わなきゃいけないことはあるな、兄貴として。

 俺は立ち上がり、日向の前へ行き目線を合わせるため屈む。


「……まあ聞かれて困るような会話じゃねえけどさ。盗み聞きってのは感心できねえな」


「お、おにいさま。私はただ、お茶菓子を――」


「言い訳はいい。俺さ、前にお前らになんて言ったか覚えてるか?」


「……自分が悪いと思ったら素直に認めるようにしなさい……」


「そうだ、確かに言った。まあ人間だし、やっちゃだめだっていわれるとやりたくなることもあるかもしれねえ。確かに俺もそういうことがあったしな。だけど言い訳する前に言うことがあるだろ?」


「は、はい……。ご、ごめんなさいおにいさま……」


「よし、許す。陽介も、言うことないか?」


「わ、悪かったよ……兄貴」


「許す許す。じゃあこいつらと話が終わって、送っていったらあとで遊んでやるからゲーム部屋いってろ」


 日向と陽介ははい、と返事をくれると素直に部屋からでていった。最後に日向がしょぼんとした表情で頭をさげ、ドアをしめていく。

 俺はふう、と一息をつくと先ほどいた場所に再びあぐらをかいて座る。


「悪かったなあ、あいつ等が変なことしてよ。それじゃ本題に――」


「いや、ちょ、活樹ってちゃんとお兄ちゃんやってるんだね! ボクの兄ちゃんなんて悪いことしてもっていうか、兄ちゃんをボクが注意してるのに?!」


「マジヤバイマジヤバイマジヤバイ」


 二度あることは三度あるってやつ? もう勘弁してよ、三食前菜飽きたヨ。いい加減メインディッシュ食わせてヨ。

 朱音は珍しく俺に感心してるし、佐武にいたっては頭を抱えて顔を隠すようにずっとカタカナでマジヤバイを繰り返している。今の佐武さんのほうがマジヤバイ。

 いつになったら本題に入れるんだ、と俺はため息をつきこいつらの興奮がやむのを待った。

 執筆欲がやまない。助けて。

 毎回題名をつけるときに悩んでしまう。でもありきたりでいいよね、うん。

 それにしても塾で英語がやばい。毎日勉強しないと……。


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