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佐竹さんちの日常  作者:
来客編
5/17

たしかにそうだけども

「よっ、活樹。なにしてんの?」


 昼休み。なんかもう警戒心を強めるのがだるくなってきた俺は机に突っ伏して寝ていた。そこに、生徒会の生活委員長――五十嵐朱音(イガラシアカネ)が俺の頭を小突く。朱音は低い位置にポニーテールしており、学業優秀でとても面白いやつである。俺的には女子の中で一番仲がいいと思っていたり。あと特徴といえばボクっ娘であったり眼鏡をかけていたり、俺によく勉強を教えてくれたりもしている。あ、恋愛感情とかは一切ないぞ、お互いにな。

 ちなみに佐武も委員長だが、それはクラスの委員長であり、佐武は生徒会ではないので、一応補足しておくことにする。

 俺は何もしてねえよ、と適当に返すと朱音はニーッと何かたくらんでいる様な目で俺を見てきた。


「活樹さ、ナギちゃんに告白されたんだって? 噂になってるよん」


「は? 告白? てかナギちゃんって誰?」


「ナギちゃんっていったら佐武渚ちゃんのことっしょ」


「……ああ、渚だからナギちゃんね。ああ、はいはい。っておいちょっと待て。告白なんてされてねえぞ」


「いや、ただの噂だからね。ボクとしては真偽を確かめたかっただけ。嘘ならいいんだ、別に」


「ふーん……そうか。じゃあさ、悪いけど寝かしてくれねえか? 久々に授業中寝ないでいたから眠くてよ」


「え? 嫌だ。暇だから図書室に付き合ってよ」


「ほかのヤツに頼めよ。お前なら俺みたいなヤツじゃなくて、他の女子とかといけばいいじゃん」


「そんなつれないこと言うと服装点検のとき、毎回活樹のとこにチェックいれるよ? それでもいいの?」


「ちょっと待て、それは理不尽ってやつじゃねえのか? 見ろよ、俺の服装のどこに乱れがある? 俺の心みたいにキチンとしてるだろうが」


「へえ、キチンとしてるんだ。それじゃあワイシャツをキチンとズボンにいれてないところとか、袖のボタンをきちんととめていないところとか、ブレザーの第二ボタンがちゃんとしてると見せかけてとれていたりするところを担任いっても問題ないね?」


 はい、見事俺の服装の乱れを全て言い当てました。てか俺座ってるのによくみえたね。特にブレザーの第二ボタン、我ながら上手く隠せていると思ったのに。


「……わかりましたよ、委員長サマ。ついていけばいいんだろうが」


「はい、それでよし。おとなしく最初からそういっていればいいんだよ」


 相変わらず朱音にはさからえない。朱音は他の女子とかには結構いじられキャラなのだが、俺相手だといじってくるし、毒舌になる。二年に成り立てのとき、それとなしに聞いてみたのだが俺をいじるのが楽しいとか言いやがった。なんかツッコミが笑える、だとか。いや、好きでツッコンでるわけじゃないからな?

 朱音は俺の制服の袖をつかみ、無理やり立たせそのまま引っ張る。俺はめんどくさいので、そのまま引っ張られるがまま歩いてたら朱音に歩けと小突かれた。いや、俺はついていくとはいったけども……。

 不服そうな顔を朱音に向けるととてつもない笑顔で返された。はい、申し訳ないです。

 眠気が襲ってきて、思わず欠伸をしてしまう。そこに俺を呼び止める声が聞こえたので、俺と朱音は歩みを止める。そこにはたしか違うクラスの……名前忘れたから君は名無し君と名づけよう。名無し君が、深刻そうな表情で立っていた。


「さ、佐竹……。お前さ、生活委員長とそういう関係になったの?」


「はい?」


「だから付き合ってんのかって聞いてんだよ」


「な、何言って――」


「そうそう、ボク達付き合ってんの」


 そういって、朱音は今度は俺と腕を組む。そこでブイ、と名無し君に向けて笑顔でブイサインを送る。おいこら、俺たちいつからそういう関係なったんだ。

 弁解しようとしたら、朱音が後で説明するからと耳打ちをし、その場はあわせることにした。なんやかんや言ってもコイツは俺の大事な友達であり、恩も色々あったりするからな……。まあ事と次第によっては断るけど。

 すると名無し君はそっか、と言ってそのまま歩いていった。一瞬の出来事だったな、なんか。


「詳しい話は図書室でね。そこなら人も少ないだろうし」


「あ、ああ」


 朱音はそういうと、俺の腕を話、スタスタと歩いていった。なんかめんどくさそうにため息をついている。ため息をつきたいのは俺のほうだっていうのにな。

 俺も朱音についていき、図書室についた。予想通り、中には人があまりおず真剣に本を読んでいる人たちばかりだ。


「じゃ、あっちの人気のないとこいこ。そこならゆっくり話しもできそうだ」


「へい」


 さっきから俺はひとつ返事である。だって、意見したところで聞いてもらえないんだもの。

 俺たちは辞典が多い奥のほうへと向かった。まあ辞典なんて好き好んで読みにくるやつはいないだろうし、いなくて当然だろうけど。


「いやあ、悪かったね、さっきは。実は図書室で話そうと思っていて、その前に出会っちゃったんだもん」


「ああ、名無し君のこと?」


「は? 名無し君って誰?」


 やべ、俺が命名した名前で言ってしまった。

 すると朱音はそんなことどうでもいい、というように話を続ける。


「んで、さっきの……えーと名前は佐伯君だったかな。その人が、ボクに告白してきたわけ。それで、めんどいから付き合ってるやつがいるっていったの。その彼氏役を活樹に演じてほしいってこと」


「なんでそんなめんどくさい役を俺に……。佐伯君? って、結構良い顔してたじゃん」


「ボクは恋人とかそういうの、まだいらないから。それに活樹は好きな人いないっていってたし、恋愛とかに興味ないべ?」


「うーむ……まあそうだけど。だけど俺、茶化されるのとか嫌いだからなあ」


「ああ、その辺はボクにまかせておいてよ。活樹の友達なんてたかが知れてるし、その辺にはちゃんと言っておくから」


 たかがってひどくね? たしかに、俺には友達は少ないけども。


「それにもうすぐさ、夏休みだし。人の噂も七十五日っていうじゃん」


「お前のもうすぐって二ヶ月ももうすぐに含まれるんだな。それにあれがあっただろ、新入生がこの学校になれた頃だからって行う学園祭と同規模の祭り。それにはたしか、男女がペアになって参加するっていうのなかったか?」


「……ああ、あったね。でもいいじゃん。そこで、ペアが決まらなかった人はなんか物凄いことが待ってるらしいよ」


「らしいよってお前……。お前生徒会だろうが、知ってんだろ、その辺のこと!」


「うん、知ってるけど。やっぱサプライズにしときたいじゃん? だけど、ハッキリ言ってやれるもんじゃないよ、あれは。すべったら少なくとも一学期中は……」


 脅迫だよね、こいつ俺のこと脅迫してるよね?!お前には自分以外の異性の友達はいないんだから、確実にはぶられるよ、だけど自分と組めば助かるよっていう。

 たしかにそれは事実だ……。俺は異性の友達っていうか、異性で話せる相手はコイツしかいない。佐武も頭に浮かんだが、アイツはだめだ。アイツは人気者だし俺のことを狙っているし……。


「わ、わかったよ……。そ、その代わりその佐伯君ってやつにだけだからな、付き合ってると思わせるのは」


「おー、話わかるねい! じゃあ今日、活樹の家にいっても――」


「あ、朱音! さ、佐竹とな、何話してたの? 家に遊びに行くとか付き合うとか、その……」


 話がまとまったと思いきや、佐武登場。噂をすればなんとやらってやつか? いやでも俺の心の中で名前をだしただけだし……。

 いきなりの佐武登場に最初は朱音は驚いていたようだが、次第に何か思いついたのかニヤリと笑う。


「んー? ただ、今日活樹の家に大事な話があるから、行くって話ししてただけだけど?」


「だ、大事な話って?」


「それは言えない。ボクと活樹の秘密、かつ親密なお話です」


 あれ、そんな親密な話か? いや、でもまあ一応人には知られたくない話だし、大方間違っているというわけでもない。

 隠す必要はないけど、言う必要もないってことだな。


「まあ佐武、そういうことだ。あまり気にしないでくれ」


「い、いや気になるよ!」


 なんなんだ、コイツ。妙に絡んできて……。それに、ここまで狼狽している佐武は初めてみるし、もしかして……。

 いつもと様子が違う佐武に、俺はある仮説を立てる。佐武はもしかして、誤解しているのではないだろうか? 俺と朱音の関係を。もしくは先ほどのアクシデントを見ていた、とか。それならば誤解していてもおかしくはないな。まあ友達をこんな駄目男と付き合ってた、なんて嫌だろうしここは誤解をといておくか。それに誤解されっぱってのもめんどいしな。


「じゃあ佐武もくるか? 俺んち」


「へ?」


「いやだから、なんか変な勘違いしてそうだし。佐武に予定がなければだけど」


「う、うん……予定はないけど」


「じゃあもうすぐで休み時間も終わりそうだから、詳しくは俺んちでな」


 こっちのが手っ取り早そうだ。めんどうごとはさっさと片付けちまったほうがいいしな。

 すいません、やはり秋ではなく、春の終わりということにさせていただきます。

 作品の都合上、そちらのほうがいいと思い、急遽変更させていただきます。今はまだ大して変更するのに支障がないと思いましたので……。

 一度投稿しておいてなんですが、これからはこんなことのないようしますので……。

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