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佐竹さんちの日常  作者:
悩める主人公編
2/17

悩める子羊な俺

 陽気に勝てなくて、思わず転寝をしてしまった。寝起きのこの感覚は、何度も体験していたので寝起きに関してはなんの違和感も感じなかったが、一つだけ違うところがある。それは、今しがた気づいたのだが背中のこの感触。とても温かくて、心地よい感触なのだが……転寝する前はこんな感触はなかったはず。

 なんだろう、と思いうしろを振り返ってみるとそこには今日、俺をこの場所に呼び出した人物だった。


「さ、佐武……?」


「あ、やっと起きたんだ。こんなところで寝ちゃってさ、こんなことされる、とか思わなかったの?」


 いや、普通に考えて思わないだろう。頼みごとがあるっていわれてきてみたら、思わず寝ちゃって起きたら有無を言わさずこうなっていたわけだし。

 ……さて、勇樹ならばこの状況、飛び上がって喜びそうだが俺は別にアレだからなぁ……。


「え、と。その、だな。とりあえず離し――」


「顔みたら、きっと言えないからさ。このまま、聞いてくれない?」


「お、おう」


 って、なんで許可してんだ、俺?!普通に考えて、ここは断るべきだろうが!

 だけども今更それをいうわけにもいかなく、やむなくこのままに。……そ、それにしても背中に柔らかいのがあたって――。

 い、いかん。体のほうが反応してくるから考えないようにと思っていたのだが、一度意識したらそっちのほうに神経がいってしまって、頭がくらくらしてきた。

 なんてふしだらなことを考えていたら、佐武がぎゅっと力をこめてきた。俺の考えている事がバレたのだろうか。


「……それじゃ、本題言うよ。一度しか言わない――ううん、言えないから」


「た、頼みごとだろ?」


「うん、それじゃあ頼むね。あたしの話、ちゃんと聞いてて?」


 耳元で囁かれるいつもより甘い声は俺の頭を更にくらくらさせ、思考力を低下させるには十分な言い方だった。

 何も言えずにゴクリとつばを飲み込む。また少しだけ俺を強く抱きしめると、あの甘い声でほんの一言だけ、呟くとそのまま俺を放し走っていってしまった。


「……あ、あいつ……。い、いやでも、俺の聞き間違いか?」


 とりあえず、帰ろう。帰って、誰かに相談して今後のアドバイスをもらいたい。まあでも俺の身の回りで頼れるやつなんて、一人くらいなんだけどな。問題はそいつが俺の相談にのってくれるかどうか、ってことだ。

 普通なら学年一可愛い、というか人気な女の子に言われたら嬉しいはずの言葉であるのに、何故か俺の足取りは重く家につくまでに何時間もかかったのではないか、と錯覚してしまうほど考え込んでいたと思う。俺らしくもねえ。



*



 家に着いた。ただいまーと声をあげるとドタドタと足音がきこえる。これは妹が家にいる、ということだ。家にいるときは決まって、おかえりと言いにきてくれるのでこれはいつも通りなのだが心なしか足音が多いような気がする。

 靴を脱ぎ、自室へ向かおうとすると妹が抱きついてきた。ここまではいつも通りである。だけど、いつもと違うのは妹の友達と思われる女の子二人がきたこと。一人はポニーテール、もう一人は前髪を綺麗に揃えて若干茶髪ロングな感じの子たちである。

 うむ、普通の子たちだな。


「こんにちは! 私、神林沙月っていいます!」


「こ、こんにちは。私は月城彩乃です」


「あ、ああ。こんにちは。俺は佐竹活樹っていいます」


 お二方、とても丁寧に挨拶されたので俺もつられて丁寧にいってしまった。とりあえず陽介のところへ――と思いゲーム部屋のほうをみると神林さんと目が合う。睨みつけるのもアレだし、出来るだけの笑顔でニコッと笑うと神林さんは顔を赤くして俺から目をそらす。……やべ、怖がらせてしまったのだろうか。

 月城さんのほうは、早くゲーム部屋にいきたいのかそわそわした様子でゲーム部屋をチラチラと見ている。俺も丁度ゲーム部屋、というか陽介に用事があるので腰に抱きついている日向の頭を撫でて、俺から離すと月城さんと目線を合わせた。


「月城さん」


「は、はい。何ですか?」


「えっと、月城さんは陽介と遊んでるんだよね? 俺も陽介にたいした用じゃないんだけど、用事があるから一緒にいってもいいかな? あ、日向。いつもお迎えごくろうさん。神林さんと遊んでるなら、そっちいってもいいぞ」


 先ほど怖がらせてしまったのあるため、出来るだけ優しくいうと、え? と言いたげな顔で同時に俺のほうを見る。あれ、俺また何かおかしなことを言ってしまったのだろうか。


「あの、おにいさま。彩乃と今日遊んでいたのは私だよ」


「え、まじ? てっきり月城さんが陽介と遊んでいるのかなって思ったんだけど……。違ったんだね。ごめんごめん」


 この子、さっきからゲーム部屋のほうチラチラみてたし、陽介のところはやく行きたいようだったし、陽介と遊んでるのはこの子かと思ってたんだけど。

 でもまぁ、思わぬ事実を発見できたみたいだな。この子、顔真っ赤だし。


「えーとそれじゃ、神林さん。一緒にゲーム部屋に――」


「おにいさま! 私たちも一緒にいく!」


「別にこなくてもいいよ。すぐ済む用事だし」


「私たちもいく!」


「あーはいはい、わかったわかった」


 こうなった妹はもう何をしても決断を揺るがすことはしない。なんか妙に頑固なところがあるんだよな、コイツ。まあ人に意見を委ねることが多い俺と違って意見をあっちゃこっちゃ曲げないってところは、いいところなんだろうけどさ。

 俺たちはそろってゲーム部屋へ向かう。日向は今度は腕に抱きついてきて、いつも通りの声をだすし神林さんもなんか色々と俺に質問してくるしで、行くだけで少し疲れてしまった。そういえばこの子って、さっき俺のこと怖がってなかったっけか……。

 まあ今は他人のことを考えている余裕なんてない。自分のことなんて滅多に考えないから、既にもういっぱいいっぱいなんだよ俺は。

 はい、あけましておめでとうございます。

 だけどお正月に関係のないお話です。新年早々眠いですよっと……。

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