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佐竹さんちの日常  作者:
来たる、新慣編
17/17

降板ですか?

「た、竜輝(タツキ)?!なんでアンタがここに……。が、学校はどうしたのよ?!」


「早退してきた」


「じゃあなんでここにいるわけ? 具合が悪いなら、家に帰って寝てればいいじゃない」


「……俺の病気はお前にしか治せない」


「そんな病気があるわけないでしょ? 意味わかんないこといってないで、学校に――」


「最後まで聞け。いいか? お、俺はお前が地球上の誰よりもす、好きだって……」


「――カットカット! そこで恥じるな佐竹! 一番重要なシーンだろうが!」


 大声で叫び、あの映画とかで使うカンカン鳴るやつならすとある女子。現在、主役を務める俺とヒロインを務める佐武の一番良いシーン(告白)らしく、俺の演技が大層お粗末なものらしく、とある女子を怒らせてしまっていた。

 それと冒頭の部分で竜輝って誰? ってなったかもしれんが、劇の中の主人公である。ちなみにヒロイン役は凪っていうらしい。なんでも渚にちなんでるんだとかなんだとか。俺の名前も本名にちなんでことらしい。

 カンカンうるさいのは監督を務めていて、出し物を決める際に非常に活躍された女子。あんな厨二くせえ台詞を真顔で大真面目でいえるほうがどうかしてらァ。


「あーもう。竜輝の一番良い台詞じゃない」


「リアリティを求めるなら俺じゃなくて勇樹に頼めよ。アイツならもっといい演技やってくれると思うぜ」


「もう配役変更は無理です。ちゃんとやってよね」


 はぁ、と重いため息をつかれ、そのまま少し休憩。

 俺はその場に座り込み台本を見直す。内容はどこにでもありそうなごく普通の恋愛劇。詳細を言えば、幼馴染の竜輝と凪はすれ違いの両想い。お互い素直になれず、あと一歩のところで主人公がヒロインを突き放し、険悪に。そしてヒロインは転校することになり、主人公が想いを伝えるために学校を抜け出して、会いに行くという話だ。しかも、新慣シナリオだから中学一年生な訳であって。

 ま、フィクションだからリアリティも糞もないわけで、こんなことを実行する中学一年生がいれば、俺はそいつをDQNと呼んでやる。女子からみればキャーキャーする内容かもしれんが、俺からみれば主人公はただのDQNであってそれ以上でもそれ以下でもない。

 俺はお前が地球上の誰よりも好きだ。お前も俺と同じ気持ちなら、付き合ってくれ。こんな歯の浮くような台詞、こんなDQNが言うとは思えないのだが。

 なんて考えていたら、どこからか鋭く、突き刺さるような視線が。悪寒が走り、その不吉な視線を送っている主を辿ると例の監督サマが。ちょいちょい、と人差し指でこっちの来いの合図。……なんのこっちゃ。

 とりあえず、向かうことにした。 


「監督サマ、俺は降板ですか? 喜んで受けますけど」


「そんな訳ないでしょ。てか、アンタさ、渚の相手役うれしくないの?」


「なんで俺が嬉しいんだよ」


「……脚本かいたの、あたしなワケね?」


 どうりで、とても中学二年生が喜びそうな内容だと思いましたよ。


「それでさ、アンタの好みをいれてやったんだから感謝されこそすれ、恨まれる筋合いはないんだけどなあ」


 ……どうりで。ツインテールにツンデレなんておかしいと思った。まんまドストライクなんだけど、俺に三次元を好きになれというのは無理な話で、あれがギャルゲーとかのヒロインなら間違えなく俺はそのルートをやり、最後にもう一回やるだろうな。

 てかなんでコイツ、俺の好み知ってるの?


「それは企業秘密。てか、そんなにツインテールにツンデレが好きなの?」


 あれ、もしかしてコイツ俺の心読んでる? やべえ、ギャルゲーとかのくだり恥ずかしいじゃん。


「いや、別に読んでないし。全部口にでてるよ。あと恥じることはないさ、痛いけど」


「……サイですか」


「うん。ま、とりあえず真剣にやってよ。あと、渚にそれいっちゃ駄目だかんね。あの子、一番頑張ってるから」


 ……んなこと、知ってら。

 佐武は演技も俺なんかとは桁違い段違いってもんで、台本もすごい使い込まれているし劇の練習の合間合間に大道具や小道具や編集、いろいろなことを手伝っている。今もそれらの手伝いにいってるんだとか。

 だったら尚更、俺みたいなヤツではなく勇樹とかやる気をだして演技にも集中できるやつとやったほうがいいと思うんだが。正直いって、俺はとてもやる気になれる内容でもないしやる気もでないし、今すぐにでもやめたい。

 なんで俺なんだろうな、今度佐武が暇そうになったら聞いてみようかね。……ああ、しばらくなさそうだな。

 ちょっと短いですかね……。

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