基本は……いいやつ?
「お前さー、生活委員長と付き合ってんだろ?」
「あ? 何いきなり」
「いや、さっきのじゃれあいでお前もようやく女子と付き合うようになったんだなーってさ」
「馬鹿じゃねーの? 付き合ってないよ。朱音とは友達だ」
「でも活樹が下の名前で呼ぶってことは信頼してる。そうだろ?」
勇樹がニヤニヤと笑いながら茶化す口調で言ってくる。確かに朱音のことは信頼してるし、アイツも俺のことを信頼してくれている……と思う。面と向かってそんなこと言い合ってことないからわからんけど。
モテるコイツにとって、誰でも彼でも下の名前で呼び合うのは普通なのかもしれんが、俺にとっては下の名前で呼ぶことは信頼してる、ということ。学校の友達の仲では二人しかいないんだけどな。
「まあ信頼してるよ。お前の女バージョンみたいなもんだ」
「あら、それはそれは。私も負けてられませんわね。オホホホホ」
「何それ気持ち悪い」
急に女口調になった勇樹に寒気を感じ、体を抱える。笑いながら小突いてくる勇樹とガラにもなく、じゃれあう。こういうのが普通の友達なんだ、と実感。
ある意味、この席替えは俺にとって幸運だったのかもしれない。後ろには勇樹がいて、隣には朱音がいる。まあなんとか、なりそうだ。みんな同じ班で、楽しく過ごせそうだ。まあ、ほかの人たちは俺があまり関わらない人だから、その辺は朱音や勇樹にまかせることになりそうだけど。
「それよりさ、お前は佐武とどうなんだよ? そろそろコクってもいいんじゃね?」
相手はお前のこと好きだぞ。俺からは言えないが。
「ばーか。こういうのはもっと仲良くなって、下の名前で呼び合えるようにならなきゃな」
「お前、普通に他の女子と下の名前で呼びあってんじゃん」
「ああ、まあな。好きな人と下の名前で呼び合うっていうのは、俺にとって特別な意味を持つんだよ」
意外にも初心なのね。
決め台詞を言ったかのようにドヤ顔をする勇樹に一つの疑問。
「お前さ、彼女いたことなかったっけ?」
「小学校時代はサッカー一筋。中学校時代もそれと同様、佐武一筋だぜ。ま、サッカーも好きだけどな」
「じゃあ彼女いない暦=年齢か?」
「うるせえよ。今までサッカーが恋人だったし、佐武が初恋だし彼女がいないのは当たり前」
当たり前、ね。その当たり前ができてるコイツはすごいよな。好きでもない女とは付き合わないってことだろ。
勇樹も普段はおちゃらけてはいるが、芯はしっかりしてる。だから俺も信頼できるんだよな。
ちょっとふてくされ気味の勇樹だったが、次第に何を思ったのか頭を下げる。
「……悪い」
「なんで謝るんだよ? 別にお前は何も悪いこといってないだろ?」
「だ、だけど」
「いいから。じゃないと謝ったことを謝ってもらうぜ。味噌ラーメンつきでな」
「じょ、上等だ。ラーメンくらいおごってやんよ」
ま、まさかマジに受け止められるとは思わなかった。
当然おごってもらうのは悪いので、冗談だよというとそこからは意地の張り合い。お互いに自分の主張を譲らず、結局俺は負けてしまって味噌ラーメンをおごってもらうことに。……今度は俺がおごってやらないとなあ。
*
「おまっ、飲み物はいいっていったが、餃子つきなんてきいてねえぞ?!」
「はっはっは、こうなったらとことん奢ってもらうぜ!」
……今更冗談なんていってやらねえ。次は俺の番、か。
渚の話は次にさせてもらいます!
なんか、勇樹がちょこっとしかでていなかったので、かいてみました。
男の友情最高!




