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佐竹さんちの日常  作者:
席替え編
12/17

席がややこしすぎる

 席替え――それは学校生活で安心、平穏を保つための結構重要なイベント。それが宿泊研修のときの班を決めるときの席替えとなると、尚更重要なイベントとなるだろう。

 それが今日――いろいろな思いが渦巻く中、今この時間に開催される。俺、佐竹活樹としてはとにかく、めんどくさない班、つまりただいるだけでいいという班になることを祈っていた。DQNやスイーツ(笑)がいまくる班だけは本当勘弁してもらいたい。


「それじゃ、そっちの列から順にどうぞ。ちなみに、二学期の半分くらいまでこの席でいきたいと思います」


 俺の今の位置は窓際の一番後ろの席。今担任が言ったそっちというのは廊下側のほうである。とどのつまり、俺は一番最後であり余りものがあたるということだ。

 おまけに二学期の半分くらいまで、って結構な期間だぞ。まあ十月の半ばくらいまでこの運命の席で過ごさねばなるまいってこと。尚更重要な意味をもつ席になったぞこりゃ。

 神様仏様、俺の日ごろの行いはそりゃもういいはずです……。ですので本当もう多くは望みません、ただ平穏にごく普通に過ごせる席でお願いします本当に……。

 なんて神頼み……神様頼みをしている間にとうとう俺の列が。どうせ俺は余り者……い、いや神様が選んでくれたとても幸運な席である! 俺は謹んで、その席をお受けしよう。それは神が示す道だというならば、俺に断る理由などないさ!

 俺の列の人がぞろぞろとクジをとっていき、俺は最後の神――否、紙を取る。席に戻ってからあけなければいけなく、俺はドキドキと早鐘を打つ心臓を押さえつつ席へと戻った。

 いざ、オープン!


「……な、なん、だと……?!」


 俺の席を言う前に、ちょいと俺の学級の変わった席順を説明させていただく。

 まず、初めに廊下側の席。男女五列の席がある。そんで、その隣の列。こちらは男女四列の席。次いで、その隣の列。こちらも同じで、最後に俺がいた列。これまた五列なのである。

 まあ簡単にいうと、五、四、四、五、みたいな感じだ。列はな。

 そんで、次に班の説明をさせていただく。班は本当にややこしい。

 まず、廊下側の二列目とその隣の列の一列目、つまり六人班が一班。それでその廊下側の列の残りの三列が二班。んで、またその隣の列の二、三、四列目と三班。とまあこんな感じで、残りの反対側も同じような感じである。ちなみに左側が男子で右側が女子。

 んで、俺の席は廊下側の隣の二番目の席である。つまり、前のほうの席。

 先生に目をつけられるってやつだ。おまけに、俺の勘だと隣のやつはろくでもないやつな予感が……。

 俺は黒板にかかれている席のところに、あたった席のところにネームプレートを張る。一応、ネームプレートとはその人の名前がかかれた磁石つきのプレートのことな。

 張った瞬間、えーという声があがる。好きであの席になったんじゃねえんだから文句とかいうなよな。お、後ろは勇樹か。


「渚、惜しかったねー」


「……うん」


 あちこちで、女子の会話を耳にしつつ女子が張っていくネームプレートをぼけーっと見る。どうせ周囲の女子はろくでもないやつなんだろう。

 俺の席のほうを見ていると、とあるポニーテールの女子が。俺の席の横に。もちろん、そのポニーテールは五十嵐朱音のことであって……って朱音ェ?!


「それじゃ各自移動してください」


 担任の言葉を合図に、俺はカバンを背負いいざ自分の席へ。結構遠い席に人を避けながら行き、新たなる日々を送る席につくと、朱音がニーっと俺に笑顔を向けてくる。


「いやあ、活樹が隣なんてねえ。初めてじゃない?」


「……そうだな」


「お、それに佐々木にナギちゃんもいる。こりゃ、賑やかになりそうだ」


「でも佐武は班が違うな。朱音、残念だったな」


 そういやさっき耳に入ってきた渚惜しかったねという言葉はもう少しで勇樹と同じ班になれたから、ということだったんだな。

 同じ班だったならば、話すチャンスや距離も縮まるのになあ。できることならかわってやりたいが、いかんせん、勇樹の隣の女子は俺のことが嫌いな女子である。これだったら朱音のほうが何百倍もマシだ。


「おい、活樹かわれ。かわれかわれ。百円あげるから、マジで頼むからかわって」


「安い。それにもう、これで決まっちまったから残念だったな」


 はっはっは、と勇樹にむけて笑ってやるとくそ、とだるそうに机に顔をふせた。すまんな、勇樹。

 一方、朱音のほうをみてみるとなにやらこちらも交渉中みたいで。思わず耳を傾ける。


「お願い、朱音代わって!」


「ごめんね、悪いけど無理」


 ……ふむ、佐武も佐武で勇樹と同じ班がいいんだろうなあ、やっぱり。朱音もかわってやりたいんだろうけど、佐武の班には朱音の嫌い、というか苦手な生徒がいるみたいだし代わるのは嫌なんだろう。

 それにしてもそんなに勇樹が好きなら告白でもすればいいのに。そしたら、一発オッケーで付き合えるのになあ。でもそれは俺からいうわけにもいかないし。

 まあ班は違えど、席は近い。


「佐武、別に遠い席ってわけじゃないんだからいいだろ? 俺もできる限りの応援はするからさ」


「お、応援?」


「おう」


 疑問系で尋ねてくる佐武に対し、俺は勇樹に聞こえないようボソボソとした声で佐武に言う。


「俺、勇樹と佐武の距離を縮めてやるっていっただろ? 安心しろ、俺は約束は守る男だ」


 そういった後、ドンと胸を張っていってやると何故か悲しげにため息をつかれた。あれ? 俺約束を破るような男だと思われているのだろうか。

 でもすぐに苦笑いでありがとう、と言われなんだかやるせない気持ちに。


「この朴念仁め」


「な、なんだって?」


「なんでもなーい」


 朱音は馬鹿にしたように急にそんなことを言い出す。たしかに無愛想かもしんねーけどそんな直接いわなくたっていいじゃんかよ。

 高校、受かってました。

 これからは遠慮なく更新することができますね。

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