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佐竹さんちの日常  作者:
来客編
10/17

決してエロリコンではない

 メンバーが決まったのにも係わらず、四人はゴニョゴニョと耳打ちしたのち、再びジャンケンを開始した。なんのジャンケンかはわからないが、見た目ただのジャンケンなはずなのに朱音をのぞく三人のメンバーに黒いオーラが見えるのは何故。

 ……もしかしたら、負けたら陽介と交代とか? いや、でもそうしたら、あそこで悔しそうにしている陽介は立ち会っててもいいはずだし……。わからん。

 相子で、相子で、と何回聞いたのだろう。ようやく決着がついたようで、佐武一人、落ち込んでいる。見るからに佐武は負けたのだろう。よくわからないけど、どんまい。

 落ち込み気味の佐武とは違い、ご機嫌な様子の朱音が俺を呼ぶ。


「活樹! 紙四枚と、ペン用意して!」


「あ? なんで?」


「いいから!」


「……よくわかんねえけど、ルーズリーフとボールペンでいいか?」


「うん。よろしくー」


 俺は攻略本などがある棚からルーズリーフを四枚取り出し、ボールペンを持って朱音のところへいき渡す。一応分岐ルートなどを記録するために、おいていたからわざわざ部屋までいく必要はない。

 朱音はありがとうと笑顔で受け取り、ルーズリーフをジャンケンメンバーへと配る。ボールペン、人数分用意したほうがよかったのだろうか。

 だけどそれはすぐに俺の杞憂に終わり、朱音は俺から隠すようにさらさらと何かをかくと折りたたみ、ボールペンを隣にいた日向に渡す。それで、日向も何かを書いて神林さんへ、神林さんもかいたら佐武へ。それで、最後俺に戻ってきた。紙の内容は見れなかったけど。


「それじゃ、私たちはレッドチームで、ナギさんはブルーチームに」


 ……私、たち? 私たちってなんぞや? いや、複数なのはわかるさ。

 だけど俺がその疑問を口にする前に、いつの間にか復活した陽介が俺より先に言ってくれた。


「あ、あのよ、なんで渚さんだけ、一人なの?」


「アンタに関係ないっしょ?」


「いや、いくらなんでも三対一は横暴だろ?!」


「陽介くん、これは渚さんも納得してます」


 朱音が苦笑いでそういうや否や、陽介は佐武のほうへと振り向く。同じように、佐武も苦笑いで陽介を見上げる。どうやら、佐武も納得しているというのは本当のようだ。


「あはは……さっきジャンケンやったとき、負けちゃって。でもみんな納得した上の結果だし」


 なるほど、さっきのジャンケンはそういうことだったのか。てか、三対一とかよく考えたな……。これで、三人チームが勝てばまあ三人は俺に言うことを聞かせられるってことね。その分俺に負荷がかかるんだけどな……。

 さて、その事実を知った陽介くんはどう行動にでるのだろう。ちょっと見ものだな、さっきなにやら二人で話ししてたみたいだし。

 ニヤニヤとその行動を見ていると何を思ったのか、やはり予想通りの行動を。


「じゃあお……僕が代わりに。別に一人の人は攻撃しちゃいけないっていうルールはないよな?」


「ん。もちろん、そういうルールはないよん」


「ふん、陽介が私たちに勝てるとは思えないけど」


「……やってみなきゃわかんねーだろ?」


 ニヤッと含み笑いを浮かべる陽介。なかなかの男気だが、勝てなきゃ意味ねえからな。それに、代理っていうくらいだから勝たないとかっこもつかないし、恥をかくだけだ。てか、本当に告白したんじゃねーのか? こいつがこんなに人のために何かするって、姉貴以外では初めてじゃね?

 思わず感嘆してしまうほどの、かっこつけようだ。もしかしたら、何か秘策があるのかと思ってしまった。だが――


「ほ、本当にご、ごめんなさい……」


「う、ううん。あたしだったら、きっと諦めて自滅してたし!」


 もうものの見事にぶちのめされまして。主に日向に。まあ、元々日向と陽介は同じくらいの強さだしな。陽介のほうが若干強いが、やはり三対一では太刀打ちできないのも無理はない。神林さんもまあそこそこの強さはもってるみたいだし。

 ま、でもかっこつけたからといって勝てるというほど世の中は甘くないってことだ。これで陽介も少しは学んだだろう。

 それにしても、華麗といえるぶちのめされようだった。

 落ち込む陽介をよそに、朱音がメインイベントといわんばかりの声をあげる。


「よし、それじゃ各々活樹に例の紙を!」


 例の紙? ……ああ、あのルーズリーフね。あれにかいてたのだろうか。

 まず朱音が俺に先ほどのルーズリーフを渡す。どうせろくなことはかいていないだろう、そう思いつつおそるおそるみてみると予想以上のことがそれにかかれてあった。


「あのう……つかぬ事をお聞きするのですが」


「なんだい?」


「……これ、本気?」


「うん」


 そこにはとある部活並みのバツゲームが。め、メイド服でご奉仕とな……。


「俺に、メイド服を着ろと?」


「……てへっ」


 かわいらしく舌をだして語尾に星でもつくような声をだしたと思うと、自らの頭を小突く朱音。……てへじゃねえよ! 可愛くねえよ! いや、やっぱ可愛いけど! でもその笑顔の裏には間違いなく悪魔が存在してる!

 ずーんと、実際に効果音がでそうなくらい落ち込んでいるのがわかったのが、朱音は爆笑しだす。俺的には笑えないんだけど……。


「ちゃんとよくみなよ! そっちじゃなくて、こっちの小さいほうね」


 そういって、メイドでご奉仕! の下に小さくかいてある文字を示す。そこには「ではなく、活樹の姉ちゃんに会ってみたい」とのこと。


「あーおかし。すごい顔してたなあ」


 アンタの笑い顔のほうがすごいよ。


「そんなわけで、よろしくね? あ、もしかして、本当はメイド服のほうが――」


「ぜひ、こちらのほうの願いを叶えさせていただきます」


「なんだ、つまんないの。ま、よろしくたのんますわ」


 冗談じゃねえ、メイド服なんて。メイド服は着るんじゃなくて、見るもんだ。

 ありがとといって俺の肩をポンとたたくと、次は後ろに並んでいた神林さんがおずおずと手紙を差し出す。うむ、朱音もこれくらいの謙虚さがあってもいいものだ。

 俺はできるだけの笑顔で、その紙を受け取る。中身を確認。……最初に頭に思い浮かんだ言葉。何故(ナニユエ)


「あ、あの、やっぱりだめですか?」


「……い、いや、別にだめじゃないけど。神林さんは本当にこれでいいの?」


「はいっ! ……あ、できれば、下の名前で呼んで欲しいです!」


「え? えーと、沙月、さん?」


「呼び捨てでお願いします!」


「そ、それはさすがに……。そ、その、馴れ馴れしすぎないかい?」


「いえ、ぜひ呼び捨てで!」


「……さ、沙月?」


「はい! えへへ」


 嬉しそうに頬をゆるめその頬を少しばかり赤らめて言うかんばや……沙月。いや、別に下の名前で呼ぶ分にはいいのだけれど、そんなに喜ばれるとこちらまで照れてしまう。い、いかん。なんかこのままだとロリコンとか呼ばれそう――


「そこのエロリコン。なんてかいてあったんだよ?」


 俺の想像より上、ロリコンだけでなくエロまでついてしまう始末。そういう陽介はものすごい不機嫌である。なんだ? ハーレムを壊されると思って嫉妬してんのか?

 それに便乗したのか、朱音もロリコン変態とかいいだす。お前はだまっとれ。


「俺は決してエロリコンなどではない」


「どうでもいいから、はやくいえよ。なんてかいてあった?」


「……んと、俺の携帯のアドレスと番号を所望らしい」


「は? な、なんで兄貴のを?」


 知らん。むしろ俺にも教えて欲しい。

 だけども、顔を真っ赤にする沙月に俺はこれ以上の追及はできなかった。


「いや、その、理由はいえないんだけど……。と、とにかく、活樹さん! お願いします!」


「ん、あ、はい」


 まあ、願いを叶えるといった手前、教えないわけにもいかないだろう。俺は受け取ったルーズリーフの裏に、自分の携帯のアドレスと番号かき沙月に渡す。それを嬉しそうに受け取ると大切そうにポッケの中へとしまった。

 ……さ、さて。お次はもっとも恐れていた人物の願い事、か。


「ひ、日向のは?」


「これです、おにいさま!」


 そういって嬉々とした様子で俺にルーズリーフを押し付けるように渡してきた。……どうも恐ろしくて、開く気になれないのだが。

 ま、まあでも、さすがにそんな十八禁の内容はかいてあるまいし、そのへんはちゃんと常識あるだろうし……たぶん。完璧否定できないところがまた恐ろしい。

 俺は覚悟を決めゴクリとつばを飲み込み、中を開く。…………ノーコメント。


「じゃあ今夜、お願いします!」


「……毎日やってるようなもんじゃん」


「全然違うよ! 実際触れ合うのと、壁があるのとでは違うもん!」


「む、むぅ……」


 まあ約束しちまったもんはしちまったもんだし……。きちんとやる義務はある、のだろうか……。

 言い負かされ、悩んでいると朱音があのーと、俺に声をかける。


「その、さ。なんて書いてあったの?」


「……教えない」


「気になるじゃん、いってよ」


 こうなると、言うまでとことん追求されそうだ。いいたかないけど、しょうがない、のか。


「…………ね、だよ」


「ね?」


「だから……い…………ね」


「稲?」


「添い寝だっつってんだろ! 何回もいわせんな!」


「え? ……本当に?」


「……ああ」


「…………ばふっ」


「笑うな!」


 なんて失礼なやつだ。聞いといて、笑いやがって。だから言いたくなかったのに。

 大声をだしてしまい、ほかの人にも聞こえたらしく日向以外なんともいえぬ表情になっている。ああ……そ、そんな目で俺を見ないでくれぇ……。


「……ま、添い寝くらいいいじゃん。兄貴っしょ、君は」


「…………あ、ああ」


「えへへ、おにいさま、ありがとう! 大好き!」


 そういって腰に抱きついてくる日向。いつもなら、頭を撫でてやるところなのだがさすがに今はそんな気にはなれず、そのまま。

 ため息をつき、ふと視線をずらした先には、ルーズリーフをもって少し落ち込み気味の佐武が。……ま、こいつ以上の難問はないだろうし、そこまでケチな男だとは思われたくないしな。


「佐武、それ、俺にかして」


「え? ……い、いや、あたしには権利ないから」


「いや、陽介のせいだろ? いいから、俺は無理やりコントローラー奪った陽介のお詫びをしなきゃなんねえから」


「で、でも、陽介くんはあたしより強いし」


「だけど佐武がやってりゃ、勝てたかもしんねえだろ? 一パーセントくらいはあったろ、勝てる確立が」


 もう三つでも四つでももう大して違いはないだろう。こいつもきっと俺ができる範囲で指定してくれているだろうし。

 そういってやると、佐武はうつむき小さな声でお願いしますといって俺にルーズリーフを差し出した。その内容は、「また一緒に遊んでください」とな。……ううむ、難易度、高いんだろうなあ、これはきっと。


「……了解ですよっと」


「ありがとう、ございます」


 とまあ、なんか次の約束を取り付けられた。……まあ、悪い気はしないんだがな。だけど本当に佐武のほうはそう思っているのだろうか。今日はなんか理由があったし、佐武みたいな女は俺みたいなインキャラと遊んだりなんて、しないもんだと常日頃から思っていた。やはり苦手意識の払拭はまだできない。

 その後は、ゲームやったり、俺のいった七並べとかをやって、あいつらはもう帰らなきゃといって帰っていった。無論、沙月や彩乃さんもである。ちなみに彩乃さんにも後に下の名前で呼んでくださいと要望があったので、失礼ながらも下の名前で呼ばせていただいております。まあ呼び捨てまでは要望されなかったので、さん付けだが。

 あと、帰り際に佐武に勇樹とのことを応援しておいた。俺も協力してやる、と。俺が久々にいいことをしようとしているのに朱音には呆れ顔を、佐武には物凄く落ち込まれた。そんなに俺の協力が迷惑なのかと俺まで落ち込んでしまったが。

 そういや、なんで朱音と佐武って俺んちきたんだっけ……。

 もはや本題のことなど、思い出すのに時間がかかり結局思い出せなかったので考えることをやめ、寝た。

 ……ちなみに余談ではあるが、ちゃんと日向と添い寝したぞ。翌日俺は朝起きたとき上半身半裸になっていたことをのぞけば、特になんでもない一日の始まりだ。……ってなんでもねえわけねえだろう! 怖くてこのことについては聞くことができなかったけど。

 次はなんの話にしようか、悩んでいます。

 二つほど今かいているのですが、次はどちらにしようか・・

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