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佐竹さんちの日常  作者:
悩める主人公編
1/17

カンストが……

 赤い鮮血が飛び散る。真っ白い雪を赤く染め、まるで赤い雪が降ったかのようだ。例えこの真っ白い雪を汚すことになろうと、俺は攻撃をやめない、いややめることができない。

 例え己の体までをも真っ赤に染めようとも、この世の雪全てが赤く染まろうとも、俺は攻撃をやめることはできないのだ。そう、あいつを助けるまでは――へぶっ。


「ねぇ、またそのゲームやってるの? あんたさ、何回その国の姫助けてんのさ」


「うるせぇな。別に俺が何やろうと勝手だろ?」


「おにい、はやく僕と交代してよ!」


「おにいさまの次は私だし。ね、おにいさま?」


 姉貴にたたかれ、やむなくゲームをストップさせるべくスタートボタンを押す。あのままだと俺の血でやつ等を真っ赤に染め上げないからな。

 ……あ、どうも。俺、佐竹活樹(サタケカツキ)と申すものです。決してどこぞの勇者とかではなく、ごく普通の平凡な中学二年生です。ま、どこにでもいそうな中学生です。

 とりあえずご紹介させていただくと、俺の頭をぶったたいたのが長女の莉桜。一応俺が長男で、その下にいるのが双子の陽介で、その片割れが日向。こういってはなんだが、陽介と日向はコンプレックスのつくアレであったりもする。まあでもごく普通の兄弟姉妹であるからして。


「なにいってんの、あんたたち。次はあたしだし。この新作ゲームやるんだから、さっさとどけろ活樹!」


「まあ、ちょっと待てよ。セーブするから――」


 全てを言い終わる前に、姉貴は何かに引っかかったのか、こけた。それと同時にプッと目の前のテレビ画面が青くなり、その画面にはテレビ3、とうつっていた。

 ……急な展開すぎて、頭がついていかないんだけど。


「よ、よよよよ陽介! あ、あああああんた、な、何コンセントにぬいてんの!」


「え、えぇ?!ね、ねえさま、ぼ、僕はなんもしてませんよ?!」


「……あ! あたし、バイトあるんだった! よ、陽介、日向、あとはよ、よろしく!」


「ちょ、お、お姉ちゃん!」


 そういって慌ててその場から走り去る姉貴。理解したら、顔をあげる気力もでなかった。


「……お、俺の勇者が……。もうすぐで、姫様とか、夢のカンストが……」


「お、おにいさま! 今日は私と一緒にお風呂はいろ? ね?」


 いや、それ、何の慰めにもなってないから。むしろ俺の尊厳とかを奪う発言だとすら思えるのだけど。

 はぁ、とため息をつくと、ティロリン、と携帯が鳴る。空気嫁、携帯。ちなみに差出人は姉からである。

 内容は「あたしの買ってきた新作ゲームやっていいからさ! それと、何か買ってきてほしいものがあれば、なんでも買ってくるよ!」とのことである。

 おいおい、ご機嫌とりのつもりか? てか姉貴が買ってきた新作ゲームって乙ゲーじゃなかったっけ? 誰がやるか!

 なんか無償にはらがたったので、前々からほしいと思っていた新作の初回限定版を要求してやった。てか、姉貴、今日バイト休みだろうが。

 はぁ。今日はもう泣き寝入りしよう。



*



 翌日。中学校にて。

 俺が昨日の姉貴の所業を友達に愚痴っていると――。


「あ、さ、佐竹。今日の放課後さ、暇?」


 急に話しかけられて驚いてしまった。こいつの名前はクラス委員長、じゃなくて佐武渚(サタケナギサ)。漢字は違うが、同じ苗字であり隣の席のときはしょっちゅう話しかけられたもんだ。佐武は学年人気ナンバーワンといわれている。なんでも、この学年の三分の一は佐武にメロメロらしい。俺は残りの三分の二に分類されるんだけどね。

 で、その佐武は若干頬を赤く染め、何故か必死なようだ。……もしかして、怒ってるのか? やべえ、俺なんかしたかな。


「さ、佐武……。俺、なんかしたか? そうだとしたら、頼むから先生にはいわないでくれ」


 説教、なんてことになったら帰宅時間が遅くなり、ゲームする時間が減る。それでなくても、昨日の分を少しでもリカバリーしなければいけないというのに。

 頭をさげると、軽く佐武に小突かれた。


「ち、違う。ちょ、ちょっとあたしから頼みたいことがあって」


 あーよかった。佐武から俺に頼みごとだと? ……めんどくさそう、断ろう。


「ごめん、俺ちょっと急がし――」


「はあ? なにいってやがんだ。お前、帰ったら昨日の分のリカバリーしなきゃ、とかいってただろうが」


 聞いてやがったのか、このハゲ……って、こいつに愚痴ってたもんな、当たり前か。一応紹介しておくと、こいつは俺の友達の佐々木勇樹。俺の数少ない友達でもある。

 ちなみにこいつも例の三分の一に含まれているらしい。


「佐武、俺も一緒にいってやるよ! 活樹なんかと二人きりだと、何されるかわからねえしな。俺が一緒なら、安心だぜ!」


「佐々木と一緒のほうが危ないよ。いいから、佐竹だけ、きて」


 佐武は笑顔でそういうと、俺の耳元で場所を告げ、後に待っている、と言って元いた女子のグループのところへいった。正直いって、めんどうくさい。

 まあその件については、あとで勇樹をしめるとして……。思わずチラッと佐武のほうをみてみると、女子共と何故か盛り上がっていた。


「な、なんで活樹なんかに佐武が……」


「頼みごとがある、とかいってたろ。それより、お前のせいで、俺の大切なゲームの時間が減ったんだから、責任とれよ」


「うるせえ! もげろお前!」


「何を?!てか何で俺、逆切れされてんの?!」


 ……ったく、昨日から本当ついていないぜ。それにしても、佐武みたいな人気者がこんな俺に何を頼むのかねぇ。頼みごとなら、俺なんかより勇樹のほうが向いているだろうに。

 忘れてた、とか言い訳は通用しないだろうか。ああでも、翌日が怖い。佐武は委員長だからなあ。


「くそう……なんで活樹なんかに……」


 お前はクドイ。油汚れかっての。



*



 放課後、中庭の池前。佐武は掃除らしく、遅れるらしい。呼び出した本人が呼ばれたやつより早くくるとか、なんか無駄にわくわくしてるみてえじゃん。なんでこんなところで一人、鯉なんて眺めてなきゃいけないのかねえ。

 ポツンと鎮座されているベンチにどっこいしょ、となんとも年寄りくさい声をだして座る。こんな陽気のいい日にボーっとしてると眠くなってくらぁ。


「あー……本来なら、今頃家に着いて即効ゲーム陽介から奪ってるころだろうなあ」


 我が家では弱肉強食である。強さ的にいえば、やはり姉貴で、二番目が俺、日向。そして三番目が陽介だ。日向は一応陽介の妹なのだがな。まあ、数秒の違いだしたいして違いはないのだが。

 両親があっちこっち仕事の都合で色々いっているので、家事は姉貴と日向がほとんどやっている。だけど、母親が料理できず、それは遺伝なのか二人は料理は壊滅的だ。料理だけは俺がやっているのだ。そのおかげで、無駄に料理がうまくなって家庭科のときはまかされっぱなしで、困ったものである。

 それにしてもねみいな。俺は眠気に勝てなくて、意識はなくなっていった。

 新作です。

 しばらく受験に備えて、本格的に勉強することになったので、しばらく更新はできません。

 受験が終わり次第、また更新します。

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