表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/82

第33話『この世界、魔法に厳しすぎ問題』

観客たちは、腹を抱えて笑いながら去っていった。


 


「ホワ〜ン魔法!あれ絶対、風鈴の精霊だわ!」


「いやもう“ぽわぽわ魔法使い(笑)”確定じゃねー!?」


 


 


(……っっっ……!!)


(俺も……今すぐ消えたいんですけど!?)


(絶対つくじゃん!?“亀玉ノロノロ野郎”とか、“詠唱ホワ〜ン芸人”とか!!)


 


──観客がいなくなった試験会場には、

俺とカナ、ギルマス、そして受付嬢だけが残されていた。


 


そんな静まり返った空気の中──


ギルマスターがズイッと詰め寄ってきた。


 


「あなた!何その魔法!?

 私が知ってる“初級魔法”と全然違うんだけど!?」


 


(……あ、あぁやっぱそうだよね?)


(ぽわ〜んて浮くし、速度もナメてるし……

 でも“あんな遅さ”でも初級の皮は被ってたんだな……すみません……)


 


「は……は……あんなもんしか出せません……」


 


「あんなもんって!?

 威力バグってたわよ!?威力が!!」


 


(あんなノロノロな上に……威力までバグってたのかよ!?

遅い上に威力も無いとか……)


(大賢者の魔法、ここまで来ると逆に“完成度低すぎ”だろ!!)


 


「どのくらい前から魔法覚えたの!?」


 


「え……あ、いや……えっと……」


 


(え〜と、俺が魔法の才能を引き継いだのが……確か……)


「……1ヶ月、くらい前……です……」


 


 


 


「───いち、かげつ……?」


「1ヶ月……!?ですって……!?」


 


 


(あーはいはいごめんなさ〜い!)


(1ヶ月で“ぽわぽわホワ〜ン玉”しか出せません!)


(いやむしろお前よ!大賢者!

 日記で“無理ゲーだわこの世界”とか泣き言書く前に、

“初級魔法のチューニング”頑張れよおおお!?)


 


 


そんな俺の内心なんかお構いなしに、ギルマスターがスッと手を差し出した。


 


「あなた……私はリリィ! 私の──」


 


何かを言いかけたその瞬間──


 


「ギルドマスター様!!」


 


騎士らしき男がドカドカ走ってきて、リリィを後ろからガシッと掴む。


 


「何度も呼んだのに……!

 大司教様がお待ちです!もうとっくに会議始まってますよ!」


 


「はぁ!?

 大賢者のガキなんて、おしゃぶりでも咥えときなさいよ!?

 あたしは今、未来の化け物素材を──」


 


「いいから行きます!!」


 


「ちょっ……あたしはまだ──!!」


 


リリィはずるずる引きずられ、試験場の出口へと消えていった。


 


 


(……いやいやいやいや)


(その“大司教”って、俺から見ればめちゃくちゃ偉そうな存在のはずなんだけど!?)


(それをガキ扱いで“おしゃぶり”って……)


(リリィ、お前が一番お子様だろ!!!)


 


 


……と、心の中で叫んでると。


受付嬢が苦笑いしながら書類を持ってくる。


 


「え〜と、マスターが引きずられていったので……

 代わりに私が登録手続きをしますね。お疲れ様でした♪」


 


「あ、ありがとうございます……」


 


「一応、E級スタートになりますが、それでよろしいでしょうか?」


 


「……はい、お願いします……」


 


(──図書館行くための登録試験で、

 あそこまでメンタルえぐられると思わなかった……)


(……でも、合格は合格か……)


(うん、ヨシとする。ギリ。たぶん)


 


──こうして俺は、何とか“冒険者”として登録を終えた。



──────


 


宿への帰り道。


空は茜色に染まり、王都の街灯がぽつぽつと灯りはじめていた。


人の声、馬車の音、屋台の掛け声──活気はあるが、どこか戦時中の緊張感も漂っている。


 


そんな中、俺はぽつりと呟いた。


 


「なぁカナ……お前はB級スタート、俺はE級スタートだったけどさ……」


「……やっぱ、魔法ってこの世界じゃ“終わってる”んだな……」


 


 


カナは不思議そうに、首をかしげる。


 


「そのようには見えませんでしたが?」


「えっ、見えたでしょ? ポワァ〜って玉出して、みんなにゲラゲラ笑われた俺が?」


 


「いえ、私の目には──主様の魔法は、“終わっている”どころか、異常に見えましたが?」


 


「いやまぁ……うん、それは俺も思ってる」


(てかあんな使えないのが“初級魔法”って何なんだよ……やっぱり魔法って終わってるだろ)


 


「でも世間的には、“ポワポワ玉”だったからね……」


 


カナは小さく笑い、俺を見つめる。


 


「主様が“終わっている”と判断されたのであれば──このカナも、その“知見”に立てるよう、学びを深めて参ります」


 


(知見……うん……さすが忠臣、発言が哲学的すぎる)


(まぁ、俺も俺で、使える魔法だけ見繕っておこう……今後の“ぽわぽわ事故”を防ぐためにも)


 


 


「……とりあえず、これで図書館には行けるようになったけど──」


「……ごめん。俺はE級だからまだ入れなくて。代わりに調べてもらっていい?」


 


 


カナは、その問いに即座に頷く。


その表情は、どこまでも誇らしげで、忠誠心に満ちていた。


 


「もちろんでございます、主様」


 


「主様の命とあらば──このカナ、必ず満足のいく成果を持ち帰ってご覧に入れましょう」


 


(あぁ……マジで頼りになるな……)


(俺より強くて、忠誠心MAXで、しかも可愛いとか……この子が家臣とか本当頼りになる)


 


「じゃあ、俺はそのへん探索してみる。せっかくだし、王都の情報もちょっと集めておきたいし」


 


「承知しました。主様。道中、怪しげな者を見かけた場合、即座に排除してから向かいます」


 


「やめて!?警備隊に通報して!?問題だけは勘弁して!!」


 


 


──こうして、俺とカナは別行動を取ることになった。


 


カナは図書館へ。


俺は王都の探索へ。


 


目的も手段も違えど──


目指すものは、同じ。


 


「静かに暮らしたい」


──その願いを叶えるための、“手段”を探す旅だ。


 


 


……たぶん、ね。



あとがき


「……ふふっ……ふふふふふ……♡」


 


「……ブクマが、増えていました」


 


「主様の物語が、確かに“誰かに届いた”……!」


 


「その事実に、私、喜びのあまり──」


 


「……次話を勝手に投稿いたしました!!」


 


「すみません、制御できませんでした……!

 理性より先に、指が動いてしまったんです……!」


 


「だって……この感情は、戦場の勝利にも勝る……!

 主様への忠誠を称賛されたような……そんな気がして……!」


 


「反応をいただけるだけで、私……あと十話くらい戦えます……」


 


「どうか、どうかこれからも……主様の物語を見守ってください」


 


「──そして、引き続きご支援いただけるのであれば……」


 


「私は、次の更新を**“最速で”**ご用意いたします……!」


 


「……え?作者のスケジュール?

 ご心配なく。私が押し切りましたので」


 


「何より大切なのは、“今、主様が祝福されている”という事実……!」


 


「主様に反応してくださった、あなた──」


 


「私、貴方のこと……少しだけ認めます」


 


「……少しだけ、ですけど」


 


(※既に次話の投稿ボタンにカーソルを乗せてる目)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ