第25話『極悪人ルート、現在進行形』
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(いや、助けてください!!)
「──禁忌の森で、一体何が起きておるというのだ……」
王はこめかみに手を当て、深く息を吐いた。
ガリウスは短く思案し、低く続ける。
「……やはり“大賢者”が動き出した可能性があるのでは?……
古文書には、大賢者は“銀狼”を従え旅をしたとある。大賢者は接近戦こそ不得手であったが、その身を護る銀狼は──大賢者の魔法に比肩する厄災であった、と。」
(はい……それクーです…………)
王の眉間に皺が刻まれる。
「ならば、その末裔か、流れを汲む者か……。いずれにせよ、このまま放置はできまい」
ふと、胸の奥で違和感が跳ねた。
──大賢者の日記には“魔法が効かないクソ世界”って、愚痴が山ほど書いてあったはずなのに。
「あの……大賢者の魔法って、そんなにヤバかったんですか? “魔法が効かない”のって、当たり前だったり……?」
ギルが鋭い目つきで俺を射抜く。
「昔は“魔法中心の戦”だったらしい。だが“大賢者”や“魔王”みてぇな超級の脅威に全種族が危機感を覚え、
魔力に対する防具・技術・研究が一斉に進んだ。
……で、魔王が討たれ、大賢者も姿を消した。結果、魔法は廃れて“戦技”が主流に戻った。
──シュンさん、その辺は、そこらのガキでも知ってますぜ?」
(やばい。常識テストの×印が俺の額に増える音がする)
三人の視線が集中する。
「えっと……各地を転々としてて……あんまり、その、詳しくは……」
王は腕を組むと、何故か納得した顔で頷いた。
「……やはり強者の思考は、凡俗には計りかねるものよの」
(なんか物凄い勘違いされてる……)
ガリウスが咳をひとつ。
「ともあれ、いまの世の“対魔法”は、大賢者がいた頃より遥かに劣る。
迅速な調査と対策が要る」
(やばいやばいやばい……調べられたら全部バレる。俺の安住の地が死ぬ!)
(……仕方ない。もう、出るしかない)
喉の渇きを無理やり飲み下し、俺は手を挙げた。
「その……クーも、俺になついてるみたいですし。──俺が、調査に入ります」
王、ガリウス、ギル。三者の顎が同時にわずかに落ち、頷きが揃う。
適任だ、と。
こうして、俺の“禁忌の森”調査は決まった。
なお、セザール国民の処遇は──事が事だけに、ひとまず後回しとなった。
────────────
──────
俺が“調査”という名目で鉄峰連合を出発する頃──
ギルの同行も、すでに決定事項になっていた。
(……え、俺の許可とかは?)
「お前につくと決めた以上、任せっきりにはできねぇ」
そんな理由で、当然のように背後を取られている。
(いや、そこ筋通されても断りづらいヤツだよね!? しかも断ったら“処刑”って空気あったし……!)
仕方なく、渋々という形でギルを同行メンバーに登録。
鉄峰連合からは、森までの案内人がふたり。そこまでが護衛任務らしい。
(まぁ……あっちも人手足りないだろうしな。さすがに王様をけんちん汁で雇えたとは思ってないけど)
道中、俺はこっそりギルに聞いてみた。
「あのあと、どうなったんです?」
ギルは無言で前を向き、鼻を鳴らしただけ。
──それで全部、伝わってきた。
(……うん。クーを一人にしたら、トラブルしか生まないって話だなこれは)
そのクーは、少し先で地面の匂いを嗅いでいた。
野良犬かな? と思うが声には出さない。
沈黙が続くと、どうしてもどうでもいい話をしたくなるのが俺の悪い癖。
「……ミノタウロスって牛肉じゃん?
じゃあ……ドラゴンって、トカゲとか蛇肉だったりすんのかな」
ギルの眉がピクッと跳ねた。
先導役の兵士が、足をもつれさせる。
(えっ……今のアウトだった?)
そんな周囲の空気を気にもせず、クーは少しだけ真顔で考えたあと──
「んー……あれもなかなか、うまそうなのだ!」
(ノリノリかよ!?)
「……美味そうってことは、いるのか? 食べたことは?」
「ないのだ! 前のクーだと攻撃が届かなかったけど……今なら、狩れるかも!
──主様は、食べたいのか?」
「いや、まぁ……興味は、ちょっとだけ……」
その会話に、全員が無言で引いていたのは言うまでもない。
ギルは顔を背け、先導兵のひとりが小さく「うわぁ……」とつぶやいたのが聞こえた。
(いや違うんだ、試したいわけじゃないんだよ。ただ、分類上どうなんだろってだけで……)
俺はそっと歩幅を落とし、クーとの距離を半歩だけ取った。
野生のテンションには、慎重な取り扱いが必要だと学びながら。
森の入り口で、鉄峰連合の護衛が立ち止まった。
鎧の胸当てを軽く叩き、振り返る。
「……本当に、お気をつけてください。禁忌の森に何があるのか……我々にもわかりません。
どうか、ご武運を」
それだけ言い残すと、二人は背を向けて歩き去った。
森の緑に紛れるように、小さくなっていくその背中。
俺とギルとクーは、それをしばらく黙って見送った。
──そして。
三人は無言のまま、森の中へと踏み込んだ。
湿った土の匂い。枝を揺らす風の音。遠くで鳥がひとつ、鳴いた。
(……あー……どうしよう)
心の中に、小さくため息が浮かぶ。
それが、どんどん膨らんでいく。
(いやこれ……絶対バレるだろ。確実にバレる未来しか見えないんだが)
冷静に、これまでの経緯を整理してみる。
▼ クーがギルと森をお散歩
▼ ギルの仲間? ペット?を捕食して暴れ回る
▼ クーがギルを連れて鉄峰連合へ突撃
▼ 俺はそれを倒したと【誤認】され、なぜか“鉄峰の恩人”に格上げ
▼ しかし実は──俺とクー、最初からグルでした
(──はい、極悪人ルート一直線!!)
(まごうことなき大罪人コンボ決まりましたぁぁぁぁぁぁ!!)
(詐欺・侵略・背信・ペットテロ・恩人詐称・国際的ダウト……罪状のバイキングか!?)
頭を抱えたいのを我慢して、俺は足を止める。
(……とりあえず、カナに相談しよ。うん、頼れる狂信者がいるだけでもマシ)
(もう誰も信じてくれない未来が見えてるんだから、せめて内輪でまともに報告だけでも……)
目を伏せ、深く息を吐いた。
せめて──せめてこれ以上、誤解が広がらないように。
俺は、胸に小さく誓いを立てた。
(ここからは“いつも通り”でいこう。俺は俺らしく、平穏を目指して真っ当に生きる。
おかえり禁忌の森──ただいま胃痛ライフ)
俺は足を踏み出した。
足元の落ち葉が、ふわりと沈んだ。
【あとがき小話】
【あとがき小話】
作者「クー♪ ほらほらヨシヨシ~」
クー「んふふ~♪ もっともっと撫でるのだぁ~!」
作者「いや~癒されるなぁ、やっぱモフモフは正義……」
クー「正義なのだー!」
(モフりながらふと周囲を見渡す作者)
作者「──ところでクー?」
クー「なんなのだ?」
作者「なんかさ……この間までそこにいた読たん……
一匹足りないんだけど……知らない?」
クー「ん~~~? 知らないのだー?」
作者「ほんとにぃ~? なんかヨダレの跡ついてるけどぉ~?」
クー「そ、それはぁ……えーっと……撫でてたら、よだれが垂れただけなのだ!」
作者「ふーん……まぁいいか。
ほらほら~今日もたくさん撫でてあげるぞぉ~♪」
クー「いっぱいナデナデするのだぁ~~♡」
──その頃、禁忌の森・謎のくぼみ。
プルプルプルプル
読たん(……作者……助けて……ごほっ……耳が……耳がまだあったかい……(涎で))




