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第1話『神に選ばれし社畜(ただし死因はR-18)』

どうも、『才能奪取』を書いてる作者、pyocoです。


今回はちょっとだけ──

本編の隙間時間を使って、

「流行ジャンルに触れてみようかな」と軽いノリで書き始めた新作を投稿しました。


内容は、過労でぶっ倒れて転生した社畜が、

“経験値カンスト”という謎のボーナスを武器に、異世界でドタバタに巻き込まれる話です。


はい、どうかしてますね。


ただ、ギャグとテンションには全力で向き合ってるので、

よかったら1話だけでも覗いてみてください。


更新はゆるめになります。

初回3話までは近日中に公開予定、それ以降は週一ペースでまったりやっていきます。


よろしくお願いします!



──目覚めなさい。


……目覚めるのです…………


………………。


「起きろコラァッ!!」


……ッがはぁっ!?


バチンと脳髄を殴られたような衝撃とともに、俺は思わず跳ね起きた。


「い、いてっ……!? な、なに……え、もう仕事……? 月曜……?」


反射的に口から出たその言葉に、自分でも泣きたくなる。

だが周囲を見回した瞬間、その“いつもの現実”がどこにも存在しないことに気づいた。


「……え?」


そこは、壁も天井も床も、全てが“光”でできているような、妙に神聖っぽい空間だった。

中央には机と椅子。そして──。


「っ……」


思わず声を詰まらせた。


その椅子に座るのは、あまりにも“女神然”とした女性だった。

まるでRPGの最終局面で現れる神的存在そのもの。

腰まで流れる金髪に、白の神衣しんいみたいなドレス。完璧すぎるプロポーション。

ただし──


「ぶっ……く、くふっ……くはっ……!」


今、腹を抱えて爆笑していた。


「え、えぇ……」


「ご、ごめ……ちょ、無理、むりぃ……っ! だって、あなたの死因が……ふっ、くくく……!」


「……俺、死んだの?」


口にした瞬間、確信が下腹部から冷たく湧き上がる。

ああ、そういえば──

記憶の断片が蘇る。


・会社で連勤二十七日目。

・残業時間、今月累計220時間超。

・終電を逃し、床で仮眠。

・過労で頭はぼんやり、でも性欲だけはなぜかギンギン。

・誰もいない社内、テンションが狂って……。


「ぎゃああああああああやめてえええええええええええええ!!!」


「ぷはっ! ひっ、ひひひ、ごめ、ごめ〜んっ! だって、過労と自慰行為のコンボでショック死する人、初めてだったんだもん……!」


女神は床を叩いて笑っていた。


なにこれ、地獄より恥ずかしい。


「や、やだ……死後世界にきて、こんな辱め……」


「ふぅ〜、笑った〜。……うん、でも、おめでと!」


ぱんっ! とクラッカーの音が鳴った。


「日本人ダサ死ランキング第1位! おめでとうございまーす!」


「……は?」


「あなたに、特典付きの異世界転生権が与えられまーす♪」


ニコニコしながら女神が差し出したのは、パラパラと手帳らしき何か。

どこから取り出したんだ、それ。


「……いや待って? 俺がランキング一位? そんな大層な……俺なんて、何一つ報われたことなかったのに……」


「ふむふむ……」


女神は手帳をパラパラとめくりながら読み上げ始める。


「えーっと……15歳から筋トレ開始。勉強も継続。文武両道を掲げて、県内屈指の進学校に進学。でも大学受験は失敗して浪人、さらに浪人、六浪?」


「言わないでぇぇぇぇえええぇええええええっ!!!」


「で、やっと入った会社がブラックすぎて、週7勤務・休憩15分・残業サビ化・先輩は鬼畜・同期は鬱。そして最後は過労で下半身に逃げて……ショック死、と」


「うわああああああああああああああああ!!!!!」


「いやぁ、努力の方向性がすごいわね〜。これだけ積み上げたのに、なんでこうなったのかしら?」


女神はくすくすと笑いながらページを閉じる。


「つまり俺って……“報われなかった努力ランキング”一位とか……?」


「ブッブー。違います」


女神は軽やかに指を振った。


「正しくは──“ダサい死に方ランキング”第一位、です♪」


「ぐはっ!!」


……俺は膝から崩れ落ちた。


血反吐を吐くほど努力して……筋肉痛で涙して……誰にも褒められない人生を……!

その“結果”が──ダサい死に方ランキング一位……!?


「いやだああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


「まぁまぁ、そんな泣かないでよ?」


女神は何かを取り出しながら言った。


「でもご安心を。あなたのその、報われなかった経験……ちゃんと“数値化”されてますから」


「……へ?」


「つまりね──あなたの人生、全部“経験値”になってるのよ?」


────────────



──目が覚めると、そこは森だった。


とにかく、森だった。言葉の通りに、森だった。


「……どこ飛ばしてんだよ、あのクソ女神」


周囲を見回しても、人影ゼロ。道も建物もゼロ。地図もゼロ。GPS? ねぇよそんなもん。


──草、木、虫。音。匂い。太陽の光。


すべてが“本物”すぎて、肌がビリビリする。


異世界かどうかはわからない。でも、少なくとも“地球”じゃないことは確かだった。


「……魔法とか、魔物とか、いるんだよな……? 異世界ってことはさ」


少し怖くなって、俺は意識を集中させる。

念じれば出せるって、さっき女神が──いや、あのクソが言ってた。


「……スキルウィンドウ、開け」


──ピコンッ。


目の前に半透明のウィンドウが現れる。



【スキルウィンドウ展開】


【スキル取得】

使用可能経験値:999,999,999(上限表示突破)


取得候補:

・火起こし(Lv1)──350EXP

・水分生成(Lv1)──500EXP

・野草識別(Lv1)──620EXP

・簡易建築(Lv1)──900EXP

・サバイバル知識(Lv1)──1,200EXP


→ イエス!


──取得スキル:

【火起こし(Lv1)】

【水分生成(Lv1)】

【野草識別(Lv1)】

【簡易建築(Lv1)】

【サバイバル知識(Lv1)】



「……よし」


5つのスキル、合計使用経験値は3,570。


“999,999,999”の表示からして微々たる量だ。

……が、なんというか、使った瞬間に背筋がぞわっとした。


(……これ、感覚的には『命の時間』を削った感じがするな……)


気のせいかもしれないけど、無限に見えても「使う=減る」のは事実だ。

無駄遣いは、しない。


「とりあえず……ベースキャンプ作成、開始」



◆最初の目的:生活圏の確保


俺は森をざっと見回すと、日当たりのいい丘の下にスペースを見つけた。

周囲に木はある。風通しも悪くない。地面もそれなりに平らだ。


「ここを拠点にする」


まずは【簡易建築】スキルを発動。

意識を集中すると、手のひらがポッと温かくなり──


「……あれ、なんか見えるぞ?」


まるで“設計図”みたいな半透明の図面が空中に浮かんだ。

そこに木材や石を“はめ込む”と、組み立てが進んでいく。


「なるほど。DIYに魔法のチュートリアルがついたみたいな感じか」


枝や石を使い、最低限のシェルターを作っていく。

10分、20分、1時間……ようやく完成したのは、草と枝で組んだ“傾いた犬小屋”のようなものだった。


「……あれ? 俺、スキル使ってこれ?」


俺はスキルに裏切られた気持ちで、地べたにへたり込んだ。


「……まぁ、ないよりマシか」



◆次の目的:飲み水と食糧


【水分生成】スキルを発動。


──パキッ。

両手の間に、ポタ……ポタ……と雫が生まれ始める。


「……えっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっくそ少ねえ!?!?!?!?」


目薬か!? これ目薬か!?

舌に乗せてみると、ちゃんと飲み水だった。冷たくて、すっと染みる。けど──


「……全然足りねぇ……!」


飲み水ひとつでこれだ。食糧も期待できない。

俺は【野草識別】を使って、近場の草を手に取る。


「識別、っと……」


──ポコン。


《この植物は食用です。苦味あり、毒性なし。味評価:★☆☆☆☆》


「うん、雑ッ! しかも星1かよ!!」


とりあえず囓ってみた。


「にがっっっ!!」


舌を押さえてその場に悶絶。


「誰だよ星つけたやつ!!! 舌ないだろ!!」


でも腹は膨れる。多少なりとも、だ。



◆最後の目的:火を起こす


【火起こし】スキルを使うと、手のひらに細かな火花が散った。


──パチ……パチ……


近くの乾いた枝に火を移す。

……着いた。パチパチと、ほんのり赤く燃える。


「……あったけぇ……」


ずっと張ってた体の力が抜けて、俺はその場にしゃがみ込んだ。


火って……こんなに安心感あったっけ。



陽が落ち、森に“夜”が来た。


鳥のさえずりはいつの間にか消え、虫の鳴き声だけが空間に残っている。

焚き火の光は、心許ない揺らぎで地面と俺の顔を照らしていた。


「………………」


誰もいない。誰も喋らない。

この静寂は、俺が望んだはずの“自由”のはずだった。


けれど──


“誰からも干渉されない自由”は、

“誰からも関与されない孤独”と、限りなく近かった。


「……はは」


乾いた笑いがこぼれる。


「これが……自由、ね」


会社はない。

怒鳴る上司もいない。

納期も報告書も、始発電車に揺られる通勤も──なにもかもが、ここには存在しない。


でも。


「……誰も、俺に……話しかけてくれない」


──ぱち。


焚き火の中で、小さな枝が爆ぜる。


俺は火を見つめながら、じわりとこみ上げる“何か”を抑えきれなかった。


「俺……何のために転生したんだろうな」


前世では、努力しても、報われなかった。

なら、この世界では。

今度こそ何かを手にできると、信じてたのに──


こんな夜を、一人で過ごす未来なんて、誰が想像した。


森の夜は、冷たかった。

そして、静かすぎた。


思わず、口をついて出る。


「……誰か、いてくれたらな」


話をしたい。

何かを言って、返ってくる声がほしい。


──そのときだった。


ふと、頭の奥にあの女神の言葉が浮かぶ。


『特典付きの転生よ?』


……そうだ。特典。

俺には、あの“スキル”がある。

“経験値”がある。


ゆっくりと立ち上がり、火の揺らぎを背にして手をかざす。


「……スキルウィンドウ、開け」


──ピコン。


半透明の光のパネルが浮かび上がる。


いつもと違うのは、スクロールできる数。

下に、下に、延々と続く項目の群れ。

【???】と表示されたものもある。


(……経験値がいくらあっても、表示されないスキルがあるのか)


たぶん条件がいるんだろう。

“目撃”、“体験”、“前提スキル”──あるいは“覚悟”。


その中で、今の俺の目を引いたのは、ひときわ異質な項目だった。



【スキルウィンドウ展開】


【特殊スキル:臣下召喚】

必要経験値:1,000,000EXP

召喚内容:あなたに最も適した忠誠100%の臣下を創造します

備考:外見・性格は初回のみ自動生成。以降変更不可。

用途:話し相手/生活補助/戦闘補助/国家運営の布石



「……100万……?」


目が泳ぐ。


【使用可能経験値:999,996,429】

さっき生活スキルで3,570消費してるから、計算は合ってる。


それでも、数字の圧に手が震える。


(話し相手のために、100万……)


重い。

あまりにも、重い。

でも。


「……使うよ」


俺は目を閉じて、決定ボタンに指を伸ばす。


→ 使用しますか?


→ ……(指が震える)


→ イエス!


──発動中……


ウィンドウが光を放つ。


焚き火の光とは違う、冷たくも神秘的な光が、周囲の闇を押しのけるように広がっていく。


光の中心に、何かが“形”を成そうとしていた。


俺はただ、手を下ろしながら、静かに呟く。


「……本当に、誰でもいい。強いとか、美人とか、すごいとか、どうでもいいから……」


「……ただ、俺の話を……聞いてくれるだけでいい──」


──第一話・完。




この作品は週1ペースで更新していく予定です!

気に入ってもらえたら、ぜひブクマして追ってもらえると嬉しいです。

これからよろしくお願いします!

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