はじめに ~とりあえず今日は死なないで済む方法~
死にたい。または、消えたい。
そんな感情を人生20年ばかし生きていれば、普通一度は抱くものだと思っている。
運が悪ければイジメや家族との不和、病気、死別。経済的困難などで思春期やそこらで抱く者もいる。
巷ではいわゆる「自己啓発書」というものであふれている。たった一度の人生、周囲の目が眩むような逆転劇を描き、華々しい人生を歩もうと唄う有害書物の類である。もし諸君がこの類の本を持っているなら今すぐ中古本屋に売ってしまうか、捨ててしまった方が有益だろう。
この「自己怠慢書」は、なにかしらの不幸や挫折で心が折れてしまった諸君に対する賛歌である。
そして諸君が文章を読むことが苦痛になっている、読んでも目が上滑りしてしまうことも理解している。
なので私の秘伝である、「とりあえず今日は死なないで済む方法」を最初に伝授しようと思う。
其の一、「肉を食べる」
肉を食べてほしい。食欲がないなら少しでもいい。空腹をなくすことが目的ではない。なにかしらの命を奪ったという業を背負うということに目的がある。
あなたは死にたい、または消えたかったはずだ。それなのにまだ生きたかったはずの動物の命を奪う最終的な原因を作った。この矛盾、業の深さを自覚して噛みしめてほしい。動物が残酷に屠殺される様子を思い浮かべるならなお良い。
ベジタリアンになれと言うのではない。業の深さの自覚はいわゆる希死念慮に効くのである。
其の二、「新聞を読む」
新聞はこの場合、漫画などでも可とする。とにかく続いていくものを選んでほしい。明日どんな事件が一面に載るのか、漫画の次の展開はどうなるのか。未知の未来の展開を期待することも希死念慮に効く。
おそらくこのご時世では新聞を選ぶ人は少数派かもしれない。漫画を選ぶ場合、物語が終わりがいつか来ることに注意が必要である。物語の終わりにはロスが起きる。そのロスで心が滅ぼされないように、好きな漫画は複数あるべきだと私は考えている。ワンピースや名探偵コナンなど、2025年3月現在で終わっていない長編漫画はなんと終盤に差し掛かっていると聞く。ロスには十分な警戒が必要である。
さて、この秘伝が私が伝えたかったことの9割だ。必要のない人はここで読むのをやめても構わない。
あとは私自身が今まで「死にたい」気持ちをどうやっていなしてきたかの体験談でも語ろうと思う。
再現性はあまりないが、なにか生きるヒントが見つかるかもしれない。