表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/44

0.醜い女の戦い

 新連載、始めました!

 よろしくお願いします!(>ω<*)



「素肌に直接触れたいなんて、破廉恥(はれんち)聖女もいいところじゃない!!」


 ダークブロンドの長髪とワインレッドの瞳を持つ、女性にしてはかなり長身な人物が、そう叫べば。


「治療ですもの。それよりも一目惚れしたからって、その場で他の女性と恋仲になれないように呪いをかけるなんて、迷惑魔女もいいところですわ!」


 毛先だけが薄いピンクがかって見える、ホワイトブロンドの長髪と、淡いアメシスト色の瞳を持つ女性が、そう返す。


「なによ! この破廉恥聖女!」

「恋愛の仕方も知らない、迷惑魔女!」


 魔女と呼ばれたワインレッドの瞳の女性は、その魅力的で豊満(ほうまん)な肉体を強調するかのように、体の線がハッキリと浮き出るような、上下とも丈の短い黒いドレスのような服装をしていた。

 対して聖女と呼ばれた、淡いアメシスト色の瞳の女性は、白一色のドレス。頭に花のような飾りと、ドレスに合わせた白い真珠のイヤリングが、清楚感(せいそかん)を引き出していた。

 二人は見た目も色も、全てが対照的。魔女と呼ばれた女性は、長く伸ばした爪も厚い唇も、全てが真っ赤だが。聖女と呼ばれた女性は、全てが自然のままで。

 なにもかもが正反対でありながら、それでいて彼女たちは、ある意味ではとてもよく似ていた。


 そもそも、彼女たちが言い合いを繰り広げているこの場は、とある国の夜会の場。

 窓ガラスは、全てが外側から割られ。会場の出入り口では、騎士たちが避難誘導を行っているという、とてつもない非常事態ではあるが。先ほどまでは確かに、スローテンポのワルツが流れる優雅な場所だったのだ。


 それが、今。なぜか、醜い女の戦いの場へと発展してしまっているのだが。


 元はと言えば、彼女たちが一人の男を取り合っていることに、(たん)(はっ)する。

 幸か不幸か、魔女と聖女に愛されてしまった男の名は、デューキ・ブッセアー公爵。現国王の腹違いの末の弟で、シャンパンゴールドの髪とターコイズブルーの瞳に、短く切りそろえた(あご)ヒゲを持つ紳士だ。

 会場内に残っている人々の中には、時折彼に目線を向けては、同情のような(あわ)れみの表情を浮かべる者もいるのだが。彼のこれまでの人生を考えると、それも致し方ないことではあろう。

 「ふしだらな女」だとか「覗き見」だとか、あまりよろしくない言葉が飛び交う中。公爵はその場を立ち去ることもできず、最も迷惑を(こうむ)っている人物として、その場に立ち尽くしていた。


淫乱(いんらん)聖女!!」

色欲(しきよく)魔女!!」


 醜い争いが、なおも続くこの場で。どうしてこんなことになってしまったのかと、現実逃避のようなことを考え始めたのは、きっと一人や二人だけではないだろう。

 いったいどんな経緯をたどれば、こんな状況へと成り下がるのか。

 その答えを探るべく、今から半年以上前に(さかのぼ)って、確認してみようではないか。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ