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63話・キャトリンヌの後継者


 バーノの言葉で、ユベールへの思いが変化してきた頃。長期休暇も残り僅かとなっていた。キャトリンヌの滞在もあと二日と迫っている。それまでに何度かアンジェリーヌの来訪があり、それにしつこくユベールが同行してきていた。

 アンジェリーヌも初めのうちは攻防していたようだが、途中から諦めたのか、今は何も言わずに祖父を同行させるようになっていた。


 ベラは、キャトリンヌとユベールを会わせない方が良いのではないかと思っていたが、キャトリンヌはユベールに会うと、時に少女のような反応を見せる時がある。それを見ている限りでは、ユベールのことを嫌ってはいないように感じられた。しかも、アンジェリーヌ達が帰ると、「今度はいつ会えるかしら?」と、楽しみにしている様子も窺えた。


 母はジネベラよりも長くキャトリンヌの側にいた。口に出しては言わないキャトリンヌの想いを、正確に察していたのは母だったのかも知れない等と思い始めたら、ユベールの来訪を咎める事は出来なくなっていた。


「失礼致します。奥さま。お客さまです」

「どなた?」


 母やキャトリンヌと、ジネベラが庭で午後のお茶を頂いていた時だった。ナーナが来訪者を告げた。ジネベラは、アンジェリーヌとユベールかと思ったのに違った。


「カナレッドと名乗る御方が、キャトリンヌさまにお会いしたいと訪ねて来られました」

「まあ、カナレッドが?」


 訪問者の名前を聞いて、キャトリンヌが反応した。確認するようにマーサが聞く。


「叔母さまの知り合いですか?」

「うちの商会で働いている将来有望な若者よ。あなた達にも紹介したいと丁度思っていたの」

「その御方を通して頂戴」


 マーサの指示で、ナーナは戻って行き、キャトリンヌは言った。


「私も若くないでしょう? 後継者を育てていたのよ。ゆくゆく私の後を継がせるつもり。後は彼に良いお嫁さんをと思っていて、その相手にベラを考えていたのだけど──」

「叔母さま」


 キャトリンヌから突然、そんなことを言われると思って無かったジネベラは面食らった。


「分かっているわ。無理そうだから諦めたの。あなたには好きな人がいそうだしね」


 キャトリンヌにからかうつもりはなかったようだが、意味ありげにジネベラを見てくる。母も同じ様子を見せた。二人にはジネベラがバーノのことを、異性として意識しているのがバレていたみたいだ。






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