56話・どっちに妬けるの?
「別に不思議でも何でもないと思うよ」
「バーノが精神的に大人なだけよ。皆がそうとは限らないけどね」
視界をピンク色が掠めたと思ったら、肩にモモが乗っていた。バーノの肩にはキミドリが乗っている。
「あなた達、仲が良いのね。焼けちゃうわ」
「どっちに?」
「どっちもよ」
モモに話しかけていると、バーノが聞いてきたので二匹の仲の良さに焼けると返せば「僕も同じく」と、言葉が返って来た。
「ねぇ、バーノ。あなたに聞きたいことがあるのだけど、あなたから見た薬師長さまってどういう御方?」
「急にどうしたの? オロールの爺さまと何かあった?」
「ううん。何も無いわ。薬師長さまは奥方さまはいるの?」
「爺さまは気難しいところはあるけど、ナーリック爺さんの話では、若い頃に比べて態度は軟化したと聞くよ。オロールの爺さまに奥さま? いないよ。今は独身」
どうしてそのようなことを聞くかとバーノの目線は訴えていた。でも、その答えを聞いてジネベラは安堵した。
この間オロール先代公爵と、出会った時のキャトリンヌの態度が気になっていたのだ。あれからバリアン男爵家に帰ってきて、キャトリンヌはずっと浮かない様子で、母からこっそりと「何があったの?」 と、聞かれたぐらいだ。その晩のキャトリンヌは、夕食後すぐに部屋に下がってしまい、両親と三人で心配していた。
翌日には何事もなかったような顔をしていたが、よくよく観察してみれば、キャトリンヌはオロール先代公爵のことが話題に上がると時折、顔を顰める時がある。
薬師長を苦手に思っていそうな感じではあるものの、それにしては王都で会った際に、自分から堂々と名乗っていたのはどうしてなのだろう? 薬師長とアンジェリーヌ二人をじっと注視していた気もするし、キャトリンヌが何を考えているのか分からない。今までにこんなことはなかっただけに気になって仕方なかった。




