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5話・ふざけた病名


「ナーリックさま。お願いします」

「この子をどうかお助け下さい」


 ジネベラは不安で仕方なかった。先生の口が重いように感じられる。もしかしてたちの悪い病なのだろうか? 両親はナーリックに必死に懇願していた。


「処方箋はあるにはあるのだが……」

「ナーリックさま。それは?」

「娘が直るためなら幾らでもお金を払おう、家が傾いても構わない」

「この子が直るためなら、私なんでもします!」


 どうか頼むから教えて欲しいと願う両親を見て、ジネベラが申し訳なく思った時だった。ナーリックは、気まずそうにポツリと言った。


「……真実の愛じゃ」

「え?」

「は?」

「!」


 ナーリックの言葉に、この場にいる皆が耳を疑った。


「真実の愛? 何ですか? それ」


 ふざけているのかと怒りかけた父だったが、ナーリックがまあまあ、と宥める。


「嬢ちゃんは世にも稀なヒロイン病にかかったようだ。これは100年に一度、1人、いやあ、2人がかかるかどうかと言われておる病じゃ」

「ヒロイン病……?」


 そんな奇妙な名前の病気など聞いたこともない。ジネベラは両親や、ボーナと顔を見合わせた。


「嬢ちゃんを心から愛する者が現れれば、元の姿に戻るはずじゃ」

「心から愛する……?!」


 ジネベラは思わぬ言葉に絶句した。母は安堵したように言った。


「先生、ではそんなに気にすることはありませんわね?私達はベラを心から愛しておりますもの」

「それがのう。厄介なことに異性でないと利かないのじゃよ。この病は年頃の娘が媒体になりやすい」

「異性?!」


 ナーリックが期待させて申し訳ないがと、母に言う。母は愕然とした。


「先生。ジネベラには許婚もおりませんが、そのヒロイン病とかが直るには恋愛が必要だと言うのですか?」

「まあ、そうなるの」


 貴族の結婚は政略ありきで、親が子供の結婚相手を決める。ジネベラは人見知りが強いこともあり、婚約者を早急に決めるよりも学園に通って、他人と交流をしていく中で、好感を持てるような相手がいれば打診すればいいかと男爵夫妻は考えていた。


 幼い頃から婚約相手のいる高位貴族とは違い、大概の下級貴族は王立学園に通う中で、相手を見初める者も少なくはない。ジネベラの両親はそれで結びついた。お互い一目惚れをしたらしい。嘘のような本当の話だ。


 母は父に初めて会った時に、ビビビ……と、来たと言っていた。ジネベラも両親のような恋愛結婚に憧れを抱いているが、積極的に関われない自分の性格上、半分諦めてもいた。


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