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46話・謝って済む問題ではない


「ああ。もういい。きみの口から出るのは、副薬師長の娘であるジネベラ嬢を傷つけるものばかりだ。なぜ、他のクラスの生徒と仲良くしては行けないのかね? 担任の教師がそのようなことを指導しているのかな? バーノ?」

「いいえ。爺さま。エトワルさんの勝手な都合です。担任の先生はそのような指導はしていません」

「そうか。良かったよ。他の学科の生徒に喧嘩を売るような指導をしていなくて。していれば学園長や、陛下に言上しなくてはいけないところだった」


 強気の姿勢を見せていたエトワルは、薬師長とバーノの会話から、事が大きくなり始めていると気が付いたようだ。勢いがなくなってきた。


「ジネベラさんが副薬師長さまの娘……?」

「あなた、知らなかったの? 副薬師長さまはバリアン男爵さまよ。副薬師長さまの授業は面白くて、薬草学科の生徒さん達はそれを楽しみにしていると聞いていたけど、愛娘を害されてまで、人の良い副薬師長さまも講習を続ける気にはならないかも知れないわね」

「う、うそ──。あの気の良い先生の娘さん? そんな──」


 エトワルは、ブルブル震え出した。


「お祖父さま。この子はね、散々、ベラのことを馬鹿にして言いがかりを付けて批難してきたのよ。両親を呼んで担任の先生との話し合いが必要だと思うわ」

「そうだな。このような生徒がいるとは嘆かわしい。さっそく、そうするとしよう」

「あの、その……、ご、誤解でした。すみません」


 アンジェリーヌは薬師長に、エトワルの言動には問題があるから彼女の両親を呼んで担任と今後、どうするか話し合った方が良いと勧めた。エトワルは忘れていたようだが、この学園は王立学園で、学園長は陛下の従兄弟であるサイエ公爵になっている。その学園長にも薬師長は陛下の叔父と言う立場からもの申せる立場にある。

 薬師長は、一介の娘が気軽にホイホイ頼って良い御方ではない。


「謝って済む問題ではないのよ。エトワルさん。今までバーノや、ベラに忠告されてきたんじゃないの? 言葉には気をつけるように……って」


 薬師長の名前まで出して色々言っていたエトワルだ。さっそく詳しい話しを聞きたいと、薬師長に連れて行かれる羽目になった。肩を落としたエトワルの側には、ナーナの姿はなかった。彼女はエトワルの旗色が悪くなったと悟った時には、もう手に負えないと思ったのだろう。早急にその場から逃げ出していた。


「あ。そうそう。彼女、動物に噛まれたの。話し合いの前に医務室に連れて行ってあげて。お祖父さま」


 と、キミドリに噛まれた怪我の治療のこともアンジェリーヌはご丁寧にも付け加えていた。

騒々しい人物が去り、後には三人だけが残された。バーノはキミドリの治療をするために教室へと戻って行き、アンジェリーヌとその場には二人だけとなる。


「アンジェ。もしかして薬師長さまに言ってくれていたの?」

「まあね。バーノからも相談を受けていたし、何よりあなたを悪く言っていると聞いて腹が立ったのよ。だからお祖父さまに事情を話して協力を求めたの。そこに丁度良く、彼女がお祖父さまに近づいて色々言っていたみたいで、こんなに上手く話が進むとは思わなかったけれどね」


 ジネベラは、こんなにタイミング良く現れた薬師長が気になっていた。もしかしたらアンジェリーヌが、何か話をしてくれていたのではないかと思っていたのだ。


「ありがとう。アンジェ

「どういたしまして。でも、ちょっとジネベラに謝らなくてはならない事があって。お祖父さまは彼女から色々と話を聞き出す為に、話を合わせていたらしく、もしもベラが誤解したら申し訳ないと言っていたわ。彼女はこれから大変かもね」


 そして後日、アンジェリーヌから聞いた話には呆れてしまった。彼女は自分の都合の良いように解釈していたようだ。

 アンジェリーヌから彼女のことを聞いていた薬師長が、エトワルの話しに合わせてただ、ウンウン頷いて聞いていただけなのに、彼女は薬師長さまにも同意してもらえていると思い込み、自分の考えは間違っていない。きっと、薬師長はそう思っているはずと、話を誇張していたらしい。


 事情徴収した担任の先生や、学園長らは絶句していたと言う。それでもエトワルの両親は良心的な人達で、娘のしでかした事を重く受け止め、学園を退学させる事にしたそうだ。彼女の実家は商店だそうで、実はジネベラの祖父の知り合いだった。


 もともと隣国で商売を始めた時に、物は良いはずなのに思ったほど売り上げが伸びず困っていた時に、知り合った祖父にランメルト国では、薬草は重要とされている。もし良かったら、ランメルト国に来ないかと、誘われて移ってきたとの事だった。今は亡きその恩人の孫娘を害していたと聞いて、両親らは激怒したらしい。

 始めから友好的ではなかったエトワルのことに、同情はしない。でも、彼女の両親は関係ないので、その両親には何のお咎めもないようにと父や、アンジェリーヌにお願いだけはしておいた。



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