42話・親しくなる前に何かすることあるだろう?
それから数日後。お昼休みにジネベラがアンジェリーヌ達といつものように昼食を取っていると、何かのキイキイという動物の鳴き声がした。その声に、バーノやジネベラの間を行き来していたモモが動きを止める。後ろ脚でスクッと立つと声のした方に、応じるようにキキキと鳴いて見せた。すると、こちらに何かが飛来してきた。
「まあ、なんだ?」
「モモのお友達?」
「可愛い~」
モモと同じ掌サイズの生き物が、モモと体を寄せ合う。その生き物はモモと同じような姿をしていながら、体毛は黄緑色で瞳はピンク色をしていた。
「この子もフクロモモンガ?」
「恐らくね。でも、驚いたな。モモの他にも変種がいるんだ」
三人でモモと、その黄緑色のフクロモモンガが仲良くじゃれ合っているのを見ていると、突然「バーノくん!」と、甲高い声が上がった。ビックリしたのか、モモはバーノの制服のポケットに入り込み、黄緑色のフクロモモンガはどこかに飛び去ってしまった。
「とんだ邪魔者ね」
アンジェリーヌの呟きに、ジネベラも同意したくなる。二匹の小動物を見て癒やされていたのに、それを邪魔された気分だ。
エトワルは、ナーナを連れてこちらに向かってくる。こちら側の歓迎していない空気を読めないのか、彼女は満面の笑みを浮かべて言った。
「バーノくん。私達も一緒に良い?」
「オロール公爵令嬢とお近づきになりたいのなら無理だよ。他を当たって」
ねえさんを目当てに、僕をあてにするのは止めてくれ。と、バーノはピシャリと撥ねのけた。エトワルは彼に冷たく拒絶されたことにショックを受けた顔をしながらも、ジネベラと目が合うと、キッと睨み付けてくる。
「そんなんじゃないわ。私達は……、バーノくんと親しくなりたくて……」
「親しくなる前に、何かすることあるだろう? ね、ナーナさん」
エトワルの側にいながらも、止めるでもなくただ、狼狽えているナーナにバーノは話を振る。
「あの、バーノくん。何か私達、バーノくんに失礼なことしてしまったのかな? だったらごめんなさい」
バーノの不機嫌そうな声で察したのか、ナーナが聞いて謝ってくる。エトワルはその隣で、ジネベラのことを批難した。
「私達、何もしていないじゃない。バーノくん、酷いわ。どうして? その子に何か言われたの?」
「呆れたよ。二人ともあれからベラに謝罪した? 翌日僕には教室で謝ってきたけど、ベラには何も無かったよね?」




