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41話・わたしって嫌われていない?


「どうしたの? ベラ」

「何でもない」

「そう? それにしては食事が進んでないみたいだから」

「お腹は空いているはずなのに、あまり食べる気になれなくて……」


 親子三人での夕食時。なかなか食事の進まないジネベラを見かねて母が聞いてきた。ジネベラの苦笑に、隣の席についている夫を見やる。妻の視線に促されるように父が聞いてきた。


「ベラ、何かあったのかい? 父さん達には話せないことかい?」


 両親はジネベラをよく見ている。心配する両親には迷惑をかけられないと思うのに、父からの気遣う声を聞いてしまっては無理だった。気になることが口を突いて出た。


「お父さま。先代オロール公爵さまってどのような御方?」

「なんだい? 藪から棒に? 薬師長が何だって?」


まさかいきなり上司について、娘が聞いてくるとは思わなかった父は驚いたようだ。父は上司である先代オロール公爵のことを、役職名である「王宮薬師長」を省略して「薬師長」と、呼んでいた。


「元王弟だった御方だから、ご自分の孫達が低位貴族と付き合うなんて、あまり良く思われていないかと思って……」

「そんなことはないよ。ベラがアンジェリーヌさま達と仲良くしていると知って、宜しく頼むと言っていたよ。まあ、仕事では気難しい面がある御方ではあるが、お孫さんとベラとの付き合いを快く思われているようだよ」


「そんなの嘘よ。本当は嫌っておいでだわ」


「どうしたんだい? ベラ。おまえは薬師長と直接お会いしたことはないじゃないか。誰かから何か言われたのかい?」

「薬草学科の子から聞いたの。わたしは先代のオロール公爵さまに嫌われているって。どこの馬の骨とも分からぬ女が、バーノくんの周辺をうろついているって、薬師長さまが嘆かれていたって」

「はああ? どこの誰だい? そんな馬鹿げた嘘をうちの可愛い娘に吹き込んだ相手は?」


「違うの? わたし嫌われてない?」


「薬師長がベラのことを、どこの馬の骨なんて言うわけがないだろう。僕の娘だと分かっているのだから。もしも、何か言うとしたら、バリアン男爵家のところの娘が──と、言うはずだよ」

「そうよ。ベラが薬師長さまに嫌われることは絶対にないわ。心優しい子だもの」


 それまで話を黙って聞いていた母まで口を出してきた。直接、先代オロール公爵の下で働く父が言うのだから、彼女が言ったことは嘘なのかも知れない。


「しかし、気になるな。薬草学科の生徒がそんなことを言っていたなんて。もしかして噂にでもなっているのかい?」

「分からないけど、バーノに聞いてみるわ。彼も薬草学科だし」

「そうだな。それは早急に確認した方が良いかも知れないな。薬師長の名が出ているくらいだ。揉め事にならなければいいが……」


 それはジネベラも感じていた。あのエトワルは何を考えてそのような事を言い出したのか分からないが、薬師長の名前まで出したのだ。もしも、その発言が虚偽だったのならば大変なことになる。彼女自身はそれを分かっているのだろうか? と、バーノ曰く、お人好しのジネベラはそれが気になっていた。



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