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38話・ベラの家は凄い


「二人ともこっちよ。どうぞ」


 バリアン男爵邸に見合った小さな屋敷と広い庭。芝が刈られた庭には石畳が広がり、小さな噴水と花壇がある。そこには色んなハーブが植えられている。母が庭師と共に作った自慢の庭園(ハーブガーデン)だ。


「この匂い懐かしい。ラベンダーよね?」


 バリアン男爵邸には東屋がないので、中央にテーブルクロスのかかった丸いテーブルと、椅子を三脚用意してもらった。

 テーブルの上には、母が育てているハーブの葉で入れたハーブティーと、お菓子は朝起きしてジネベラ自ら焼いたマフィンと、ナッツ入りのクッキーだ。

 モモにも気に入ってもらえるように、裏山で摘んできたベリーに木の実もある。


「お茶は母の自慢のハーブティーなの。マフィンとクッキーはわたしが焼いたの。二人の口に合えば良いけど。どうぞ召し上がれ」

「これベラが? 上手ねぇ」

「頂きます。うん、上手い。サクサクしている」


 席に二人を案内し、マフィンやクッキーを勧めると、バーノがクッキーに口を付けた。すぐに一枚食べ終わり、二枚目に手を伸ばした所からみると、バーノ好みの焼き具合と味だったようだ。アンジェリーヌは、ハーブティーの香りを楽しんでいた。


「う~ん。綺麗な色だし、良い香り~。堪らないわ」


 こっちも気に入ってくれたようだ。ジネベラはほっとした。


「このソーサーに添えてあるレモンは何に使うの?」

「そのハーブティーに、そのレモンを搾ったものを入れる為のものよ」

「レモン汁をハーブティーに?」


 アンジェリーヌの反応から、ジネベラは首を傾げた。アンジェリーヌは高位貴族令嬢だ。もしかして自分でレモンを搾るなんて事はしたことがないのだろうか?

 そう思っていると、バーノが手出ししていた。


「ねえさん。ちょっと貸して。こうするんだ」


 バーノがソーサーに添えられていた、カットされたレモンをお茶の上で絞り、スプーンで中身をかき混ぜた。するとアンジェリーヌが目を輝かせた。


「まああ。変わったわ。華やかな紫色だったのに青く変化した。綺麗~」

「ああ。化学変化が起きたんだね」


 バーノは薬草科の生徒で、ハーブについても学んでいるせいか、お茶の色の変化にそう驚きはしなかった。


「化学変化? さすが薬学科の秀才君は言うことが違うわね。でも、こんなの初めてよ。凄いわ。ベラの家って」

「別に凄くもなんともないと思うけど……」


 貴族令嬢の頂点に立つアンジェリーヌが感心していた。


「わたくし、レモン汁をお茶に入れるなんてレモンティー以外に思いつきもしなかったわ。これって小母さまが?」

「ええ。そうよ。これってどこの家でも出されているものと思っていたけど……、違うの?」


「そうだね。あまりベラの家のようにハーブティーにレモンを入れるという発想はないかもしれない」


「でも、バーノはためらいなくやって見せたのに?」

「ああ。それは……、特別授業で講師に教えてもらったんだ。こんな楽しみ方もあるよって」

「それって……、お父さま?」

「まあね」






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