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34話・きみはどんな姿をしていてもベラだ


「どうしてきみの言うことを聞かなくてはならないのかな? エトワルさん」

「ば、バーノくん。聞いていたの?」


 急激にエトワルの顔色が悪くなっていく。ジネベラはご愁傷さまと心の中で呟くだけにした。自分を一方的に非難してきた相手だ。同情はしない。


「ずいぶんとベラのことを知ったかぶりで語っていたけど、ベラと一緒にいると僕の印象が悪くなるだって? 勝手に決めつけないで欲しいな」

「だって、彼女はアヴェリーノ殿下に言い寄っていたことで有名じゃない。殿下に袖にされたからって、今度はバーノくんだなんて。節操がないわ」

「きみは失礼だな。ベラが殿下に言い寄っただって? ベラはそんなことしない。ベラは優しい人だ。きみみたいに憶測で人を傷つけたりはしない」

「酷い。あたしはただ、バーノくんを心配して……」

「別にきみに心配してもらうようなことでもないよ。ベラを悪く言う人とは、いくらクラスメートでも仲良くする気にはなれないな。これからは僕の側に近づいて来ないでくれ。不愉快だ」

「……!」


 バーノに突き放されてショックを受けたのか、エトワルはその場から走り去ってしまった。後に残されたナーナは、気の毒になるほどひたすら頭を下げてきた。


「ごめんなさい。バーノくん。エトワルは思い込みが激しくて。たぶん噂で聞いたジネベラさんと、その見た目から噂が本当だと思い込んでしまったんだと思うの。悪気があったわけでは無いと思うし、後日、改めてお二人には謝罪するので──」

「ベラには謝って欲しいと思うけど、あのエトワルさんの態度を見る限りではありえなさそうな気がするから、しばらく僕らには近づかないで欲しい。きみだって仲良くしている友達を悪く言われたら気を悪くするだろう? 評判が悪いから別れろと言われて、はい、そうですかって認める?」

「……ごめんなさい」


 彼女が直接、バーノの機嫌を損ねたわけではない。それでも友人の為に、深々と頭を下げるとナーナはエトワルの後を追うように行ってしまった。


「ごめんね。きみを不愉快にさせてしまった」

「いいの。バーノのせいじゃないもの。この見た目が悪いのかしらね?」


 ジネベラは、以前は自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。黒髪に焦げ茶色の瞳は、クラスメート達の金髪や、銀髪、茶髪の髪色に比べて地味に感じられたからである。

 現在はピンク色の髪に黄緑色の瞳を持つ華やかな容姿となったが、別にそれで得した気はしない。外見が派手になれば、それだけ他人の目は惹くが、そのせいで今度は無駄に同性から誤解を招くようになったし、元の姿に早く戻りたくて仕方なかった。

 ため息を漏らすと、バーノは言った。


「見た目は関係ないよ。きみはどんな姿をしていてもベラだ。気にすることはないよ」

「ありがとう。バーノ」


 バーノはいつも優しい。ジネベラが欲しい言葉をかけてくれて励ましてくれる。彼が幼馴染みで良かったと、心からジネベラは感謝した。



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