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21話・皆が見守る決行日当日


 決行日当日。

晴天に恵まれた王都中央の時計台広場。その前でピンク色の髪をした少女が、後ろ向きで立っていた。少女は商家のご令嬢らしく、愛らしい服装をしている。それを木陰で見守る黒いフードを深々と被った男女二人。ジネベラとバーノだ。バーノの着たフードのポケットには、モモが大人しく身を隠していた。


「これで誤解が解けると良いわね」

「ベラは上手く行くと思う?」

「殿下は相手に誤解があっただけよ。11年前に会った少女がアンジェだったと知ったなら問題解決でしょう? 来たわ。殿下よ。黙って見守りましょう」


 ジネベラは自分の事のようにドキドキしていた。殿下は自分の変化した姿を見ただけで、11年前に出会った少女だと誤解したのだ。

 本物のアンジェリーヌが、その姿を再現してそこにいるのだ。運命の再会となるはず。その二人のシーンを見届けようと、バーノとモモと共に影に潜んでいた。

 昨日、アヴェリーノ殿下が教室を訪ねてきたときに、ジネベラは「明日、二人きりで出かけませんか?」と、持ちかけていた。


 殿下は、約束通り待ち合わせ場所に現れた。しかもおあつらえ向きにいつも一緒にいるオラースと、ベヤールの姿は見えない。二人はジネベラが誘うのを側で聞いていたので、殿下に配慮して遠慮してくれたに違いなかった。これで邪魔は入らない。あとはふたりでじっくり向き合うだけだ。

 殿下は庶民を気取ってか、商家の息子のような装いをしていた。離れた場所には数名の男達がちらほら見える。あれは近衛兵だとバーノが耳打ちしてきた。王宮の兵は優秀だと聞く。


 さすがに婚約者がいるだけに、他の女性とデートするなんて王子が自ら言う訳もないから、きっとどこかで情報を入手してきて、こっそり護衛しているのに違いなかった。ちなみに公爵家からも護衛は出ている。彼らもジネベラ達同様に、離れた場所から見守っていた。


「やあ。ごめんね。待たせたかな?」

「いいえ。そんなにお待ちしていませんわ」


 殿下がピンクの鬘を被ったアンジェの肩を叩く。振り返った彼女を見て殿下は息を飲んだ。


「きみ……?」


 二人が見つめ合っているのを見て、ジネベラの胸は高鳴った。ああ。これで殿下は彼女が運命の相手だと認識してくれるはず。実はジネベラ達の他にも二人の仲を応援している者達がいた。近衛兵と公爵家の護衛達だ。


 彼らは11年前に起きた事を知っていた。お互い相手の素性を知りながらも、知らない振りをして小さな恋人達を微笑ましい気持ちで見つめていたのだ。

 それが最近、第3王子と公爵令嬢との仲が上手くいっていないと聞き、双方心を痛めていた。お互い、立場があるので表立って交流は取れないが、この場にいる誰もがアヴェリーノ殿下と、公爵令嬢アンジェリーヌが再び手に手を取り合うシーンを待ち望んでいた。


 皆が息を飲んで、殿下の一挙一足から目を離せない。ところがそこに皆の期待を裏切る殿下の無情な声が響いた。



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