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【11/12 コミック1巻発売中】悪の皇女はもう誰も殺さない  作者: やきいもほくほく
六章 皇女は護衛を欲する

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99/102

⑨⑨

それから滞在中にエヴァとローズの母親が働きに出ている屋敷へと行ったのだそう。



「なんと、最近引っ越してきたばかりなんですって! 母が仕事を見つけたって喜んでいましたわ」


「キャンディス皇女様と同じ、ホワイトブロンドの髪でとってもとーっても美しい方でしたわ。ふんわりしていとお花の精みたいでした」


「ですが病弱らしく、ご挨拶しただけで血を吐いてました」


「帝都から引っ越して無理をされたみたいで……」


「そ、それは大変ね……」



病弱と聞いてキャンディスは母親のリナのことを思い出す。


(病弱ってことは……お母様もそんな感じなのかしら)


肖像画でしか見たことがない母の姿。

キャンディスは彼女たちの話を聞きながら考えていた。



「幼い娘とずっと離れて暮らしているようで、毎日その子のことを思って手紙を書いているんですって!」


「手紙を……?」


「今の夢はその子を抱きしめてたくさん『大好き』だと伝えたいって聞いてわたし……思わず泣いてしまいましたっ」



その時のことを思い出しながら泣いているローズの涙をエヴァがハンカチで拭う。


(わたくしのお母様もそう思ってくれたらいいのに……)


羨ましいと思っても手が届かない。

空虚な気持ちになったが、キャンディスはその女性に会ってみたくてたまらなくなった。



「今度、わたくしも行けたらいいのに……その方と話してみたいわ」


「それは難しいと思います」


「どうしてよ!」


「馬車での移動が長すぎてとても大変でしたから」



エヴァとローズはそう言ってげっそりとしている。

ほとんどを移動で費やしたからだそうだ。

帝国はとても広い。帝都にあるラジヴィー公爵邸ですら数回行ったことがあるかどうかだ。



「だけどわたくしは護衛もつけてもらったのよ!」


「護衛、ですか?」


「わたくしの護衛のモンファよ!」



ユーゴと同じでどこかにいるだろうと、何もない場所に手を伸ばす。

暫く誰もいない場所を見つめていたが……。


キャンディさんの背後にモンファが現れたではないか。


(な、なんだかわたくしかっこいいわ……!)


いきなりでてきた彼女に驚きすぎて、エヴァとローズは抱き合いながら悲鳴を上げる。

モンファはローブを被ったまま顔も見えないままだ。

それにやはり親しくなろうなどという意思もなく心を開くことはない。

そういえばユーゴ以外の影の顔もほとんど見たことがなく、名前すら知らない。

彼女は一瞬、目を離した隙にもうどこかに行ってしまった。


(モンファといい関係を築かなければ、外出は難しいかしら……)


そう考えつつもいつもの日々に戻っていく。

シェフたちも故郷に帰り、珍しい食材をたくさん持ってきてくれた。


あっという間に夜になり、久しぶりにホワイト宮殿にホッと息を吐き出す。


(無事にバイオレット宮殿で過ごせて本当によかったわ……わたくしは大きな粗相もしなかったし)


アルチュールが興奮のせいかバイオレット宮殿で好き放題していたためか、ジャンヌの方が慌てていた。

今回、キャンディスは大きなミスもなく過ごせた。

強いて言うなら初めてのヴァロンタンと夕食をする際に、まったく食事が喉を通らずに医者を呼ばれて大騒ぎになったことくらいだろうか。


次の日からは医師を呼ばれないようにと食材を口に入れる。

お腹が空いていたことや、食事の美味しさに気を取られて大丈夫だった。

バイオレット宮殿のシェフたちもキャンディスとアルチュールに気を遣ってくれたメニューが美味しすぎてほっぺがこぼれ落ちてしまいそうになった。


キャンディスが美味しそうに食べているのを見て、シェフたちが泣きながらハイタッチしているとも知らずに、アルチュールと一緒に「おいしいっ」と感動しながら毎食、楽しみにしながら過ごしたのだ。


少しずつではあるが、ヴァロンタンと一緒にいる時間が緊張だけではないことに気づいていた。

以前とは明らかに違う道に進んでいるのだ。


キャンディスは一日が終わり、窓から星空を見ながら考えていた。


(お父様はわたくしを殺したりしない。アルチュールとリュカお兄様、侍女も仲良くできているわ。これでわたくしが殺されることはないかもしれない……ルイーズが現れてもわたくしは死刑になることはないはずよ!)


キャンディスに生まれ変わって半年くらいだったろうか。

運命の日まではあと十年。

あの時の恐怖は幸せの気持ちと共に薄れてしまうことがある。

だからこそこうして己を振り返り、あの日のことを思い出し戒めていた。

でなければ、あまりにもうまく進みすぎて高笑いが止まらなくなってしまう。


(わたくしったら、やればできるのよ……! このままいい皇女にだってなれるわ。オーッホッホッホ)


キャンディスは一人部屋でニマニマとする頬を押さえていた。



「このまま……生き残ることができるわ」



キャンディスが独り言のようにそう呟いた。

肌寒さを感じて窓を閉めようとした時だった。

窓ガラスに映る人影を見て息を止める。



「────ッ!?」


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