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【11/12 コミック1巻発売中】悪の皇女はもう誰も殺さない  作者: やきいもほくほく
六章 皇女は護衛を欲する

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⑨⑤

小さなアルチュールとルイーズを守って死んだアルチュールの顔が重なったような気がした。

緊張から胸元で手を握って目を見開いたキャンディスに驚いているようだ。



「キャンディス皇女様?」


「どうか……しましたか?」


「…………。な、なんでもないわ」



キャンディスはゆっくりと首を横に振った。

アルチュールが抱きついてきたことで安心したのか震えが止まる。


(わたくしは二度とあんなことはしないわ……今回は絶対にっ!)


そんな覚悟を胸にキャンディスは自らを落ち着かせるように深呼吸を繰り返す。

アルチュールを抱きしめ返した後、なんとか笑みを浮かべながら、バイオレット宮殿で会ったことを話していく。

エヴァとローズが休暇を取っている間はバイオレット宮殿に向かうことになりそうだということ。

嬉しくて号泣し、そのままヴァロンタンにしがみついたまま爆睡してしまったこと。

起きたら護衛を用意してくれることになったことも話していく。



「その護衛がいたら、今度はエヴァとローズについて行ってもいいのかしら……! 楽しみだわ」


「「「…………」」」



可愛らしく言ったキャンディスの言葉に侍女三人は頷くことしかできなかった。

何故ならヴァロンタンの過保護な言葉を聞く限り、そんな日は訪れないのではないかと思ったからだ。

それをキャンディスに言えないのは彼女がこんなにも喜んでいるからだ。


夕食の時間までアルチュールが押し花を作ってくれるのを見守り、ホワイト宮殿にリュカを招いて食事をした。

シェフがキャンディスのために可愛らしい料理をたくさん出してくれた。



「ぼく、この野菜すきじゃないです」


「アルチュール、好き嫌いは…………わたくしも好きじゃないわ」


「アルチュールもキャンディスもその野菜は栄養素がたくさん入っていて万能薬って言われていて薬の原料にもなるくらいなんだよ」


「だからこんなに苦いのね」



キャンディスは息を止めてから口に運ぶ。

やはり葉っぱを食べている感覚は好きではないが、息を止めなくても食べられるもねが増えてきた。

だけどサラダだけはどうしても好きになれない。


(うぅ……にがぁ! まずぅ……)


キャンディスが二度とこの野菜を出さないでと言おうとした時だった。



「それからお肌にもいいんだって!」


「──この葉っぱ、もっとわたくしにちょうだい!」



キャンディスの美肌への執着は相変わらずだった。

リュカは苦笑いをして、アルチュールは「ぼくも!」と手を上げる。

長いテーブルは賑やかで、すべての料理が美味しいと感じた。

お腹いっぱいになるのと同時に気持ちが満たされていく。


(わたくしにはみんながいるもの! もう寂しくなんてないわ!)


こんなに幸せな気分で誕生日を迎えたのは生まれて初めてだった。



──数日後


エヴァとローズは泣きながら馬車で旅立って行った。

予定通り、一週間半ほどの休暇になる。

片道、三日かけて家族の元へ向かうのだという。

家族と過ごせるのは三日ほどだそう。

さすがにもっと休むように進言するも、エヴァとローズは「十分です!」と言って聞かなかったのだ。


二人を送り出した瞬間、部屋に戻るかと思いきや突撃してくるバイオレット宮殿の侍女たち。



「キャンディス皇女様、お迎えにあがりましたわ!」


「さぁさぁ、バイオレット宮殿に行きましょう!」



アルチュールとジャンヌは、と問いかけようとしたところ彼らは侍女たちの後ろにいるではないか。

バイオレット宮殿の侍女たちの勢いにアルチュールは引いている。



「……わ、わかったわ! 行きましょう」



キャンディスは頷くしかなかった。

ホワイト宮殿のシェフたちも寂しそうにしているが、これを機に彼らも休暇を取るそうだ。

アルチュールと手を繋ぎながらキャンディスは長い長い廊下を歩いていく。

バイオレット宮殿の侍女たちに歓迎してもらうのは嬉しいが、なんだか歓迎っぷりが怖いくらいだ。


誕生日が終わり、今日からは普通の日々に戻る。

部屋はいつもキャンディスたちが過ごしている部屋だ。アルチュールはその隣。

アルチュールはバイオレット宮殿に泊まれると無邪気に喜んでいた。


一方、キャンディスは粗相をしないように気をつけなければとソワソワしていた。

あんなことがあったのだ。尚更、気をつけなければならない。


バイオレット宮殿の侍女たちは、ヴァロンタンの世話をしているだけあり動きに無駄がない。

皆、ジャンヌ並みの完璧さだ。

彼女たちを見つめならがらキャンディスもしっかりしなければと緊張してしまう。

エヴァとローズのまったりとした空気が懐かしい。

今日のスケジュールを話して、手早くキャンディスの身なりを整えていく。



「髪型はどうされますか?」


「毎日、このリボンを使ってほしいの」



エヴァとローズにプレゼントでもらったリボン。

『これをわたしたちだと思ってえぇぇ』

『キャンディス皇女様ああぁあぁ』

と泣きながら馬車で去って行ったエヴァとローズ。

キャンディスよりも二人の方が寂しそうに見えたのは気のせいだろうか。


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