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【11/12 コミック1巻発売中】悪の皇女はもう誰も殺さない  作者: やきいもほくほく
五章 号泣する皇女

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⑧④

だからこそ今までキャンディスの心情を汲んで言い出せずにいたのではないのか。

それにキャンディスが二人を我慢させていたのかと思うと何とも言えない気持ちになった。


(わたくしのせいでエヴァとローズを苦しませてしまったの? もしかしたらこのまま嫌われてしまったら……!)


当たり前にあったものは突然なくなってしまう。

ルイーズの時もそうだった。

キャンディスの前にあった当たり前のものが次々と変わっていき、あっという間にすべて彼女のものになってしまう。

悪の皇女と呼ばれて、死んでいったキャンディスは地獄を見た。

今の生活のありがたみを知ったキャンディスは、少しずつ我慢を覚えて人の気持ちを少しは考えるようになったのだが、まだまだだったようだ。


(こんな時、いい皇女ならなんて言うのかしら……)


キャンディスは自分の気持ちを必死に押し込めてから顔を上げた。

泣きそうになっている二人を見て、大きく頷いてから口を開く。



「エヴァ、ローズ……わたくしなら大丈夫よ」


「「え……?」」


「家族に会ってきてちょうだい!」



そう言うとエヴァとローズは瞳を潤ませてキャンディスの腰あたりを抱きしめた。

お礼を言いながら泣き縋る様子を見下ろすのはなんだか悪くない。

なんだか気分もよくなってくる。


(フフッ、わたくしはいい皇女だもの! このくらい許可するのは当然だわ)


二人の感謝する様子を見て誇らしげなキャンディスだったが、やはり侍女が変わるとなると不安が残る。

そこでキャンディスはあることを思いつく。



「そうよっ、いいことを思いついたわ!」


「キャンディス皇女様?」


「わたくしもエヴァとローズと一緒について行けばいいのよ!」



キャンディスの提案にこれでもかと二人は目を見開いている。



「そうすればあなたたちと離れなくて済むじゃなくって!?」



なんていい案なのだろうと、キャンディスは思っていたがエヴァとローズは焦ったようにブンブンと首を横に振っている。

テーブルに置いてあるリュカの本が目に入る。


(それにこの本の主人公のレティーだって、色んな場所に行っていたじゃない。わたくしも街での暮らしを一度でいいから見てみたいわ!)


キャンディスは十六年間、ほとんどホワイト宮殿から出たことはなかった。

もちろん勉強や訓練など忙しかったこともあるが、ラジヴィー公爵の影響を色濃く受け継いで、地位が低いものを徹底的に見下していたからだ。

だからアルチュールだってユーゴだって、キャンディスに仕えているホワイト宮殿の人たちですら一方的に軽蔑してゴミのように扱っていた。

けれど今はそんな考えはすっかりと消えてしまい、好奇心が優っていた。



「いけませんわ! キャンディス皇女様は皇女様なのですからっ」


「あら、わたくしが皇女なことくらい知っているわ」


「そうです! それに危険ですしラジヴィー公爵がお許しになるはずが……わたしたちはもう貴族ではありません」


「お祖父様なんて放っておけばいいのよ。貴族かどうかなんて関係ないわ」



キャンディスがやる気満々ではあるが、エヴァとローズはそうではないらしい。


(レティーが住んでいる街は、どんなところなのかしら……! はやく見てみたいわ)


キャンディスはわくわくしつつ目を輝かせていた。



「キャンディス皇女様に相応しい場所ではありませんし、おもてなしもできませんっ!」


「そんなこと心配しなくても大丈夫よ! 出発はいつにするの?」


「キャンディス皇女様、考えを改めてください~!」



エヴァとローズの説得を聞き流しながらキャンディスは想像に胸を膨らませていた。


そんなやりとりをしていると、扉を小さく叩く音。

扉が開くと天使のようなアルチュールがキャンディスの元に走ってくる。



「アルチュール?」


「キャンディスお姉様、ぼくは準備できました! おっきなケーキ、食べるんですよね!」


「もうそんな時間になってしまったの!?」



プレゼントを開けて二人と話している間に、アルチュールとリュカとお茶をする時間になってしまったようだ。

お昼はいつもお茶をしている中庭で小さな誕生日パーティーを開く予定だった。

シェフたちはキャンディスのために特大誕生日ケーキを作ってくれるそうだ。

ジャンヌがまだまだプレゼントが片付いておらず部屋の散らかった様子を見て呆然としている。



「エヴァ、ローズ……これは一体」


「「聞いてください! ジャンヌさんっ」」



エヴァとローズがジャンヌに助けを求めるようにしがみつく。

それからキャンディスがエヴァとローズについていきたいということを話していくとジャンヌの顔が険しくなっていく。



「キャンディス皇女様、ラジヴィー公爵がお許しになりませんわ」



ジャンヌもエヴァとローズと同じことを言われたため、反論するために口を開く。  



「今はお祖父様のことなんて関係ないわ。今はお母様のところにいるのでしょう?」  


「……!」


「わたくしが何をしていてもどうでもいいのよ」


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