表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】悪の皇女はもう誰も殺さない  作者: やきいもほくほく
一章 悪の皇女はもう誰も殺さない
8/75

08


(なんで……こんなの冗談か何かでしょう?神様はまたわたくしに罰を与えようというの!?)


どうせならば誰か別の存在に生まれ変われたのならよかったのだ。

怒りからかシーツを握る手が震えてしまう。

奇跡的に幼少期に時が戻っているが、またあの苦しみに満ちた人生をまた繰り返せというのだろうか。


キャンディスはなんでも持っていたが何も持っていない。

いつも心は空っぽだった。

何を買っても、何を手に入れても埋まらない。

これから〝悪の皇女〟として人生を二度も繰り返すのはごめんだった。


キャンディスはズキリと痛む頭を押さえていた。


(これから死ぬ恐怖に怯えながら生きるなんてごめんよ……!どうしてわたくしがあんなクソ女に怯えながら生きていかなければならないのよ!)


キャンディスの頭は苛立ちでいっぱいになっていく。

この気持ちをどうにかしたいと再び起きあがろうとした時だった。


そんな時、部屋の扉が開いた。


キャンディスが頭を押さえながら視線を送ると、二人の侍女青白い顔をしてが大きく体を震えながらキャンディスの前に踏み出した。

髪色は同じアプリコットブラウン、緑色の瞳に目元は吊り目か垂れ目だが二人とも顔がよく似ている。


隣にはキッチリと髪をまとめて眼鏡をかけた真面目そうな細身の女性が無表情で立っていた。



「皇女様、この者たちが皇女様から目を離して怪我をさせた侍女達でございます」


「も、申し訳ございません!どうか、どうか解雇だけはっ」


「私たちはもう行く場所がないんです!私たちをお助けくださいませ……!」


「黙りなさい。皇女様の前ですよ」



膝をついて深々と頭を下げる侍女たちを見て、キャンディスは固まっていた。

眼鏡をかけた細身の女性は確か侍女長だった。

一瞬、何が言いたいのかわからなかったからだ。

しかしこちらを見る瞳は冷たく目が死んでいる。

もう結果はわかっているから早くしろ、そう言いたげである。


そしてズキリと痛む頭と共に、あることを思い出す。


『役立たずは、わたくしの前から消えなさい』


それは幼い頃のキャンディスの口癖だった言葉だ。

つまりキャンディスが罰を下すのを待っているということなのだろう。

キャンディスが下す罰はひとつだけ。

目の前から姿を消すこと、つまりは解雇である。


今は追い出すだけだが成長するにつれて次第に考えは過激になっていき、ついには自身の手で処罰していた。


気に入らないというだけで人を傷つけていた。

しかしずっと牢に入れられて死を身近に感じて経験した今では、そのことがどれだけ恐ろしいかがわかってしまう。

それを当然のように繰り返していたのだ。


キャンディスはそれが簡単に許されてしまっていた。

あまりにも当然になりすぎて、いけないことだとわからなくなってしまったのだ。

キャンディスは震える手を握り込む。


(で、でもまだこの時は誰も殺していないわ……!)


今はまだ五歳のキャンディスは誰にも手をかけていない。

横暴な態度で大人たちを跪かせて優越に浸っていた。

このホワイト宮殿で一番立場が上のキャンディスが女王だったのだ。

しかし、以前と同じように過ごせばどうなるのか、キャンディスは知っている。


(このまま続ければわたくしはまた死刑に……?)


ついさっき経験したように鮮明に覚えている記憶。

今まで自分がやってきたことを思い出すだけでゾッとしてしまう。

また以前と同じように振る舞えば、誰にも愛されずに同じ道を辿ることになるのだ。


(このままじゃいけないことだけはわかるわ!わたくしはどうにかして変わらなければならない。でなければ……また死んでしまう)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
死に戻りで改めて、ルイーズの手の平で踊ってた事気付いて、じゃあどうするかで、復讐選ぶのより、あんな女に関わるの御免。 又、愛されもしないのに父に固執するだけ無駄と判断し、かっての第三王子がそうしたよう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ