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たまに頬をむにむにと触られたり、ソファに寝転びながらキャンディスの髪を指で遊んだりと謎の行動が多い。


ただ子供特有のプニプニとした触り心地は気持ちいいので、ヴァロンタンがキャンディスの頬を触りたい気持ちはよくわかる。

それに女の子は男の子と違い、筋肉が柔らかいことと肌のキメが細かいのかマシュマロのようにサラサラふにふにの触り心地なのである。


アルチュールやリュカの頬と比べるとその差がよくわかる。

そしてシェフたちにより管理された食事にエヴァやローズによって手入れされているキャンディスの肌は最高のコンディションである。


(そういえば、このソファに置かれているクッションも触り心地がよくて気持ちいいものばかり……まさかお父様はこういう柔らかいものが好きなのかしら?)


またキャンディスの頬を突いているヴァロンタンに視線を送ると、とても怖い顔でこちらを見ているではないか。


(そっ、そんなわけないわよね!)


キャンディスが自分にそう言い聞かせてクッションで遊んでいると、ユーゴがキャンディスに「それ、一つで五百ゴールドですよ」と言った。

キャンディスはあまりにも高額な金額を聞いて驚いてすぐにクッションから手を離す。



「くくっ……」


「ユーゴ、脅かすのはやめて!」



ユーゴもキャンディスが何かするたびに笑っている。

キャンディスは頬を膨らましつつ長いソファに置かれているクッションを丁寧に元に戻す。

そしてそろそろホワイト宮殿に戻りたいと思い声をかける。

しかしこの時間がもっとも緊張する時間である。

キャンディスは可愛らしい笑みを浮かべながら問いかける。



「皇帝陛下、そろそろホワイト宮殿に行ってもいいでしょうか?」


「………」



ヴァロンタンはめんどくさそうにむくりと体を起こすとキャンディスをチラリと視線を送る。



「……明日も来い」


「ッ!?」



明日もこの緊張感の時間を過ごさなくてはならないかと思うと、キャンディスは涙目になってしまう。


(うぅ……どうしてわたくしがこんな目に)


しかし断ることなどできずにバイオレット宮殿に足を進めることになってしまう。

ヴァロンタンは無表情で再びキャンディスの頬を突いている。


横から「ブハッ」とユーゴの吹き出す声が聞こえて、キャンディスは頬を膨らました。

頬が膨らんだことで、つつけなくなったヴァロンタンは不満を露わにしている。

この頬をつつかれる行動もキャンディスは何かの試練だと思っていた。


そんな気持ちを知ってか知らずか、ヴァロンタンはキャンディスに背を向けて立ち上がる。



「……持ち帰るなら好きにしろ」


「…………!」



そんな言葉を残してヴァロンタンはいつものように去っていく。

ユーゴがヴァロンタンの言葉を補足するように「今度から、みんなに配る用にお菓子を持ち帰っていいそうです」と付け加えた。

最近、アルチュールはバイオレット宮殿に行った後にキャンディスが侍女に頼んでこっそりと持ち帰っていたお菓子を楽しみにしている。


しかし少量だけなためジャンヌやエヴァ、ローズの分がないことを少し不満に思っていた。

今日もヴァロンタンとユーゴが去った後に頼もうと思っていたが、どうやらバレていたようだ。


仲良くなったバイオレット宮殿の侍女たちが「よかったですね。皇女様」と言いながらお菓子を丁寧に包んでくれる。

ユーゴがアルチュールではなく『みんな』と言ったことが引っ掛かる。


(なんで知っているのかしら……バレないようにちゃんと部屋の中で食べていたのに)


しかしバイオレット宮殿の侍女たちが知らせたのだろうと特に気にすることはなかった。

扉の外で待っていたエヴァとローズに今日の収穫を報告する。


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