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拍手をして褒められるとなんだか心がムズムズするがいい気分だ。


野菜を食べているからなのか、なんだか肌の調子がいいような気がした。

今のキャンディスは以前にも増して可愛らしいではないか。


(なんだか前よりも顔が優しくなったような気がするけど気のせいかしら)


自分で言うのもなんだが、何度鏡で見てもとてつもなく可愛い。

キャンディスの母親は肖像画しか見たことはないがとても美人だったし、父親のヴァロンタンも顔がいい。

最強の遺伝子を持った自分は容姿に恵まれていると思う。


キャンディスが足早に移動していると前から歩いてくるのは第二皇子リュカの姿。

どうやら教会からの帰りのようで、聖書を手に持ちながらこちらを見ていると思いきや、目が合うと思いきり視線を逸らされてしまう。


アッシュブルーの髪はこの時からクルクルと可愛らしい癖があり、垂れ目に泣きぼくろがあり、アクアマリンの美しい瞳が露わになって妙な色気を感じる。

成長した姿は前髪で目元が見えずに毒片手に怪しく笑みを浮かべている研究者という感じだったので、今の姿とはだいぶかけ離れている。


(ふぅん、根暗なリュカお兄様もこんなに透明感のある中性的な時代もあったのね)


キャンディスはいつもドレスをギュッと握りながらキャンディスを見上げるアルチュールのことを思い出していた。

最近になり、アルチュールが可愛く見えて仕方がない。


それに比べてリュカは中性的で綺麗といった感じだろうか。

そしてマクソンスは雄々しく男らしいといった風に三人とも兄弟とは思えないくらいバラバラだ。

風が吹いたら飛んでいってしまいそうな美少年、リュカが立ち止まり何かを言いたそうに唇がわずかに開いたが閉じてしまう。


キャンディスはリュカを脅して利用した後、もう用がないからとアッサリと殺害した。

申し訳ないことをしたと反省の気持ちがあるからか話しずらい。

気まずい沈黙が二人の間に流れる。


(……リュカお兄様の死ぬ前の顔が、今も記憶焼き付いたまま残っているもの)


キャンディスはリュカに対していつも傍若無人に振る舞っていたことを思い出す。


(身勝手で偉そうな反対って何かしら……つまり、真逆にすると丁寧で優しくってこと?これが成功したらまた死への道が遠のくはずだわ!)


キャンディスは自分のルールで決めた通りに動こうと口を開く。



「ごきげんよう。リュカお兄様、教会からの帰りでしょうか?」


「……!」



しかしキャンディスが最大限譲歩して友好的に話しかけてみても返事はないし、リュカは顔を伏せていて表情は窺えない。

なんだかとてつもなく腹が立ってくる。

このままリュカが答えるのを待っていたらアルチュールとの約束の時間に遅れてしまうと思い再びドレスの裾を取り、軽く頭を下げる。



「わたくし、アルチュールとお茶の約束をしているのでこの辺りで失礼いたしますわ」


「あっ……ま、待って!」


「なんでしょうか?」


「……っ」



キャンディスがリュカに視線を送ると、すっかり体を固くしてしまう。

舌打ちしそうになるのを押さえたキャンディスはこのままではいけないとハッとする。

唇の端がヒクリと動く。

引き攣った笑顔のまま必死にリュカに歩み寄ろうと問いかける。



「何か……わたくしに伝えたいことが?」


「ア、アルチュールには関わらない方が……いいよ」


「……!」



リュカの意外な言葉にキャンディスは驚いていた。

リュカがどんな意図でアルチュールのことを言っているのかが気になり、キャンディスは問いかけてみることにした。



「どうしてでしょうか?」


「僕には……よくわからないけどお母様がそう言っていたんだ」


「あら、そうなのですね。教えてくださってありがとうございます」


「う、うん!」



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