①③⑥ エピローグ
暗い部屋の中、蝋燭の炎が揺らめいていた。
「──クソッ……! どうにかならないのかっ」
「落ち着いてください」
「どうなっている!? 話が違うじゃないかっ」
シルバーグレイの髪、血走った目で男性は怒りから思いきりテーブルを叩いた。
テーブルの上にあった資料がバラバラと落ちていく。
「元中将も仕留め損なったそうだな。第一皇子も事故を装うつもりが……っ! クソッ」
「まさか皇女と第三皇子がいるとは予想外でした。彼らは関わりがなかったはずなのに……」
「計画はどうする!? 早くアイツを王位から引き摺り下ろさなければならないのにっ! 穢らわしいっ」
ぐしゃぐしゃに髪をかき乱しながら、苛立ちをぶつけるようにその場にあるものを投げ捨てた。
その前にいるのは燕尾服を着た青年が立っている。
燕尾服をきた青年は資料を見つめながら顎に手を当てた。
「ふむ……皇女が邪魔ですね」
「皇女……? ラジヴィー公爵の病弱な娘が産んだ皇女のことか? だが、皇子を潰すことが優先だ。皇女など放っておけば勝手にどこかに嫁ぐはずだろう?」
「いえ、報告によればあの皇女を中心にいい方向に変わりつつありますよ?」
「なんだと!?」
「第一皇子マクソンスはキャンディスに救われた。恩人の死によって孤立させる予定が失敗してしまいました。第二皇子リュカも彼女に関わったことで性格が真逆に変わってしまった……第三皇子はどうでもいいですが、この状況はまったくよくないですねぇ」
一通り考えを話し終わった燕尾服の青年は持っていた資料を置いた。
男性は近くにあった酒瓶を手に取り、瓶を口に含んでから一気に飲み込んでいく。
「やり方は任せるっ! だからあの男、ヴァロンタンの首を今すぐにここに持ってこいっ」
酒瓶が壁に叩きつけられて砕け散る。
ワインレッドの液体が真っ白な壁を汚していく。
すっかりと荒れた男を見ても燕尾服の男はにっこりと笑ったままだ。
「ですが、慎重に動かなければこちらがやられてしまいますよ。準備は念入りにしなければ」
「……わかっている!」
「本当は徐々に関係性や人格を崩して、十年後に仕掛けるのがベストだったんすが……」
シルバーグレイの男は目を見開きながらワナワナと震えている。
「俺に十年も待てというのか!? ふざけるなっ!」
「いえ……状況が状況ですからね。計画も崩れておりますし、皇女が皇帝に溺愛されている以上、早めに動きましょう」
男は不満そうに口周りについた酒を乱暴に拭う。
「五年後、ルイーズを投入するための準備を始めましょうか」
「ルイーズ? ああ、第三皇子の双子の妹とかいう……」
「えぇ、そうです。ルイーズには特別なものを与えてあります。そして彼女より適役は他に存在しない。ルイーズ、こちらへ」
「はい!」
そう言うとゴールドの髪、大きな目、ピンク色の瞳が見えた。
小さな唇は綺麗に弧を描いている。
「ルイーズ、これから忙しくなるね。君は五年後に皇女になるんだよ」
「わたしは本当にお姫様になれるの?」
「そう……君は素晴らしい皇女になれる」
燕尾服の男はそう言ってルイーズの頭を撫でた。
「金はいくらでも出す。今度こそ成功させろ、わかったなっ」
「もちろんです。この作戦は必ず成功させてみせます」
燕尾服の男の唇が大きく歪んだ。
「そのためにはキャンディス皇女様には〝悪の皇女〟でいてもらわなければなりませんね」
第二部 end
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ここまで読んでくださりありがとうございました!
いつか続編を書けたらと思いますので、応援をよろしくお願いいたします。
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